なのですが,どうにも気になる記述があります.
鷲田 最後に少し,市長にエールを送らせてもらいます.平松市長は苦悩の道を選ばれたと思うんです.財政の問題も頭痛の種でしょうけど,そうではなくて,ものすごい逆説的な役を演じてらっしゃる.私は今日,江戸時代の天領としての大坂の市民の力についてお話ししましたけれども,大阪人の意気地というのは「自分たちの町や生活で,本当に大事なことはお上に任さない」という気概だったんです.だから橋は自分らで作ったし,学校だって作った.で,「大事なことはお上に任さん市民になれ」と,当のお上のトップがおっしゃるというこの矛盾を自ら引き受けようとしておられる.だからこの学校を支援してくださるわけでしょう?
(pp.81-82)
1箇所「大坂」とあるのは原文の通りです.かつてある本の感想で『過去の(本やテレビでよく知られているが,現在それに立ち会ったことがある人がいないような)出来事を持ち出し,それに自分の姿を合わせること』と書いたことを,思い出しました.それはさておき…
「橋」と大阪を結びつけて,連想するのは,八百八橋です.http://www.kkr.mlit.go.jp/osaka/commu/road_dat/bridge.htmlとかhttp://www.kankou.kotomeguri.com/bridge/river/river_index.htmlとか.
もう一つありますね.橋下徹大阪府知事です.上記引用を見直してみると,「橋」の字はありますが,「下」の字はありません.反対の「上」の字は,あります.さらに,「お上のトップ」というのは平松邦夫大阪市長を指します.大阪人にとって知事は不要ですかそうですか.
橋下知事と平松市長のどちらを応援するか,なんて,この本1冊を読んだくらいで答えの出せるものではありません.しかし,知事が,鷲田清一総長・内田樹教授・釈徹宗教授に匹敵する人選でもってトークをし,トピックに応じて適切な過去の偉人や偉業を取り上げながら,目下の課題に対してビジョンを示しているような対談本が出版されれば,是非とも取り寄せて読みたいものです.
全国学力テストに関心があってアクセスされた方へ:橋下知事の政策に対する平松市長のスタンスは,pp.46-47,pp.114-115,pp.117-118から知ることができます.
研究に関心があって当エントリをご覧の方へ:pp.166-168に,フランス文学を専門とする内田氏が,日本の学会でフランス語でしか発表しない人の研究レベルが低いという指摘をしています.英語でも,そうなんですかね.