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研究の目的をどこでどう書くか

研究の目的をどこでどう書くか.久しぶりに考え直す機会がありました.今週の某ゼミで,学生の発表に対し,「研究の目的がタイトルの直後にある上に,情報量が少なくて分かりにくい」といった趣旨のコメントを耳にしたときのことです.「学生の」と,突き放して書いていますが,実のところ指導教員は私でして,発表前にスライドを見たときに,引っかかりを覚えた箇所でした.他のスライドの修正を優先させ,研究の目的をどこでどう書くかについては,次回のプレゼン,具体的に卒業研究発表会の際に検討することとしましょうと,発表する学生には言ったのでした.
研究の目的をどこでどう書くか---私が思う,ベストな書き方は,次のとおりです.発表全体を序論(30%)・本論(60%)・結論(10%)に分け,序論のゴールを,「今回の発表での,研究の目的を明確にする(聞き手がじゅうぶんに理解できる形で伝える)こと」とします.そこで,背景や課題,使用する手法やツールを適切に並べた上で,序論に関する最後のスライドのタイトルを,「研究の目的」とします.目的は,1〜2項目で書きます.体言止めを基本としますが,その行為の主体は,発表者すなわちその研究に取り組んだ者とします.例えば「…のデータベース」「…の活用」と書かれていれば,それぞれ「…のデータベースの構築」「…の支援」と赤入れすることになるでしょう.目的の記述は,発表タイトルと同一であってはいけません.記述量が,前後のスライドと比べて小さくなりがちですが,空白が大きければ,その目標を達成するために「実施したこと」を,2〜3項目で書くのがよいときもあります.
研究の目的をどこでどう書くか,について,ある年度の,学科の卒業研究発表会のスライドがバラエティに富んでいて,検討の参考になると思い,記録を残していました.以下のとおりです.位置は「目的が書かれているスライド番号/発表スライド総枚数」で表記しています.

位置 スライドタイトル 書き方
3/28 目的 3項目
3/27 研究の目的 上3行課題 + 下3行目標
5/20 研究目的 3項目 + 応用
9/20 研究目的 目的2行,特徴2項目
7/20 研究の目的 目的3行,実施内容1項目
11/16 研究目的 目的と実施内容3行
4/20 研究目的 目的と実施内容3行
2/23 背景と目的 背景 + 問題点 + 実施内容
2/30 背景と目的 背景2項目 + 実施内容
2/22 研究背景と目的 背景3項目 + 実施内容
4/21 既存システムと研究目的 先行事例 + 問題点2項目 + 目的1行
7/20 提案システムの目的 上に特徴2項目 + 下に囲みで用途3行
5/31 問題点と研究目的 上に問題点2項目 + 下に囲みで目的2行
6/27 研究目的 上に目的1行と特徴3行 + 下に囲みで実施内容
8/21 研究目的 目的3行 + 下に概要図
5/16 研究の目的 目的2行 + 実施したこと4項目
7/22 本研究の目的 目的2行(表題とほぼ同じ) + 実施内容3項目

研究の目的をどこでどう書くかを,学生ばかりに尋ねていいのか? そうですね,去年・今年の,自分の学会発表も,調べてみました.

位置 スライドタイトル 書き方
?/18 (なし?) 課題(5/18)の最後に目標を疑問形で表記
6/18 Objectives And Methods 上に目的1行と入出力 + 下に特徴2項目
2/21 Purpose of My Talk 図の中に吹き出しで「Here」

研究の目的をどこでどう書くか,という課題に対する答えが,これだけの情報から出せるというわけではありませんが,2枚目すなわち表紙の次*1にいきなり「研究の目的」を書くのは乱暴であって,背景を添えることは必要だと思ったほうがよさそうですね.

昔書いたこと

目的の中に,主語は書きません.プログラミングをはじめとする技能については,その習得の主体があなたに決まっているからです.また研究においては,課題を共有するという観点と,誰が実行しても同じ結果にならないといけないという観点から,やはり主語を書かないほうが適切であり,自然なのです.
とはいっても,研究目的を指導教員にチェックしてもらう際や,学習上の/に限らずあなたの悩みを周囲に伝える際には,意見や承認をもらったあとに行動するのはあなたなのですから,じゅうぶんに実行可能なことが分かるようにしておかないといけません.

目的は設定するもの,手段は選択するもの - わさっき

研究グループで実施している小ゼミは,最近になって実施されるようになりました.自分の研究の目的も詳細も知らない,教員や学生(大学院生の小ゼミ発表では,後輩も)にも理解してもらえる内容に練り上げることは,研究成果という「柱」を強固にする大切な作業です.半期に1回ずつの発表も,妥当な頻度だと思います.PowerPointファイルを年度の途中に作っておけば,卒研発表であわててゼロから作る必要がない,というメリットも指摘してよいでしょう.

質問対策3 - わさっき

自分が携わっている研究で,明確な目的・目標を持って進めるということは必ずしもありません.「明確な目的・目標を持って進める」のところを言い換えると,論文に書く順序で,背景・目的・実施内容・評価・考察と進行することは,必ずしも,いやほぼありません.

研究の目的 - わさっき
  • 研究の目的は,本文から抽出しましょう.タイトルそのものにするのは,文献を読み込めていないように受け取られます.
文献紹介心得 - わさっき

はいなになに,目的をこのように設定した,「そこで」,このようなことを実施した,だからいいんじゃないかと?
ダメです.そこは「そこで」ではなく,「その目的を達成するために」です.
実施内容に書いたことをすれば,目的を達成できる,というわけで,意味的には,下から上への矢印になります.

プレゼン コメント 2009-8 - わさっき

人文分野の研究者が何らかのデータベースなりシステムなりの構築の報告をするときは,タイトルや本文や,もちろんプレゼンの中でも,始まったばかりであることを明記しているような.
一方,情報分野では,大風呂敷を広げたようなタイトルや研究目的を掲げ,中身は,その中の一部だけを対象とするデータベースなりシステムなりを作って評価実験をして,結論を導いているような.

じんもんこん2008 + 関東見聞録 - わさっき

修士論文発表会で,スライドを見ていく中で,スライドタイトルが「研究背景」や「研究目的」になっているものをいくつか見かけました.
私の受け持ち学生がこう書いていたら,間違いなく私は,「研究の背景」と「本研究の目的」と赤入れします.
ただ,何人も「の」抜きで書いていたら,これはそういうものかと思うようになってきます.

「の」抜き・「的」抜き - わさっき
  • 「あなたの研究の目的は,何になりますか?」「設計思想を教えてください」「コンセプトを明確に!」…言っていることは同じです.やったことを手短に,かつ他の研究やモノづくりやデザインと区別するように表現することが課されているのです.その結果として表した語句は,言ったら終わりではなく,文字列(ラベル)となり,手がけたことの妥当性を確認するため,そしてリリース後も「何するものなのか」を簡潔に表したものとして流布されます.
大学生活で学んでほしいこと - わさっき

*1:発表題目が分かっているだけの状態.