わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

採点Q&A

担当科目で学生に問題を与え,採点する者として,質問にお答えします.

Q: 答案って,たくさん書く方がいいのですか?

論述問題と仮定します.私が試験やレポートで論述を課す場合,基本的に字数指定はしません.また長ければ長いほど正解(に近い点数を与える)ということも,しません.正答とするためのキーワードを取り込み,論理的に表現していれば,こちらで想定する最小の字数になります.それは,解答例に書く内容(いわゆる模範解答)です.ただし,「?個挙げよ」という指示があるものに対しては,解答例ではその個数よりも多く挙げるようにしているので,そこだけは分量が多くなります.
じゃあ正解で最小字数を目指せばいいのかというと,なかなか難しいと思います.
正解になるのかどうか分からないけど,長ければ長いほど,努力を認めてもらえるんじゃないかと思って,長く書くことについては…認める方向です.大学の科目の試験やレポートでは,仕方のないことかなと思っています.ただし依然として,答案の中で,キーワードがいくつ・どれくらい適切に書かれているかには依存します.結果として,例えば配点30点の論述で,長く書いたけれど10点という答案もあれば,その半分の長さだけれど15点とすることもあります.
(夜明け前に追記1:「たくさん」を「n個挙げよ」という設問に対してそれより多く答えに書いていいか,と解釈するなら,「私の担当科目に限り」を強調した上で,個別に見て最も良いn個で点数を付けるよう心がけています.したがって,内容上おかしいのが含まれていても,その設問についてはマルとなることがあります.)

Q: テストって,一つの正解を見つけるためにするのですか?

あとですね,タイプAの学習において,正解はあらかじめ必ず一つ定められ,隠されていて,それを,それまでの知識や技能を活用して,効率よくその「正解」を見つけていこう,という側面があります.

タイプA学習,タイプB学習

の件ですね.違います?
この質問については,語句を解答する設問に関するものだと仮定します.採点者の思惑としては,「一つの正解を見つける」というのは当たっています.ただし,

  • 答案と正解が一致しているときだけマル,そうでなければバツ

ではなく

  • 答案が,正解語句の集合に属しているときだけマル,そうでなければバツ

とするような「正解語句の集合」を同定したいという意識です.
先週締め切ったレポート課題について,最初の問題の正解として用意していたのは「そろばん」です.まだ採点を終えていませんが,「算盤」「ソロバン」といった解答も目にしました.もちろんこれらもマルです.なお,このような書き方の違いは「表記の揺れ」と呼ばれ,記述式の採点作業で「答案と正解が一致しているときだけマル」を困難にさせる要因となっています.
(夜明け前に追記2:そこで対策として「択一式にする」「途中経過は要求せず,結論(正誤など)や最終的な答えだけを書かせる」「結論・最終的な答えのほか,経過において必要となる重要な語句や式も書かせる」などが考えられますが,それぞれに課題があるのはよく知られています.)
未採点のレポートはさておき,これまでの採点作業では,設問ごとに「正解語句の集合」と「不正解語句の集合」を考えます.答案を読みながら,興味深い別解を見つけたら,正解語句の集合に書き足し,間違いだけど印象に残るものを見つけたら,不正解語句の集合に要素として加えます.
…というのは数学的・理念的なもので,実際には集合形式ではなく,「設問番号:解答:点数」で一つの解答の情報を表すことにして,リストを作ります.点数が(その設問の)配点と同じときに限り,正解すなわち別解を意味します.点数が0点ではないけれど配点に届かない場合は,部分点ですね.この部分点をきちんと決めていかないと,同じ解答なのにある学生には3点,別の学生には2点ということが起こってしまいます.
すべての素点付けが終わったら,解答・解説の文書に,別解や誤答例と,誤答についてはどこがまずいのかを追加します.