わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

マルバツを判断するのは誰?

6×4=24と書いた子どもがいて,教師がそれを誤りであると認めたら(私は誤りであると思わないが),その子が納得するまで教えてやるべきであろう.しかし,新聞記事で読んだかぎりでは,そういうことはなされなかったようである.新聞でみるかぎりでは,6×4と書いた子どもにバツをつけて,それでおしまいになったようだ.これはどこの学校でもやられていることだが,じつはそこに今日の重大な問題がひそんでいるのである.

『(私は誤りであると思わないが)』については,別の機会に取り上げます.

テストは教育の目的か手段か

『私』すなわち遠山啓氏の基準で正誤が判定されるのではなく,採点基準に基づき採点者が判定します.
1972年の件では,2種類の採点基準が考えられます.それ以外の答えとその対応は,そのつど別途ということで.

  • 6×4=24はバツ,4×6=24はマル
  • 6×4=24はマル,4×6=24もマル

その上で…6×4=24はマルになるかもしれないしバツになるかもしれない,でも4×6=24はマルになる.だから,必ずマルになるという,4×6=24を書きましょう.
かつて示した,abcdeのaの求め方を言い換えると,そうなります.
そして,このような筋道を言うだけでなく,それぞれの根拠,すなわち,なぜ「6×4=24はマルになるかもしれない(=マルとする解釈がある)」「6×4=24はバツになるかもしれない(=バツとする解釈がある)」「4×6=24はバツになる余地がない*1」か,にも答えられる子は,かけ算はもちろん,それ以上のことを理解し表現しているわけで,今回の問題に関しては,この上ない思考の持ち主と言えます.マルかバツかを判断する,仮想的な採点者が,その子の発言のみならず頭の中に,存在しています.バツとされたあとに,トランプ配りまたは交換法則を理由として,「6×4=24もマルなんだよ」と言う子と比べてみて,どっちの子が将来,有望でしょうか.
ところで,「6×4=24」という答えを先日のエントリで変換して,《BA型》に対してA×B=Pと書いたとき,今の日本の算数教育では,どれくらいの確率でマルになるのでしょうか.
もちろん私自身がそういう調査をしたわけでも,しようと計画しているわけでもありません.書籍も見当たりません.幸いにもブログにはあります.

■ 某国立大学教育学部数学教育専門の先生   電話での問い合わせ
 私の母校とはいえ、私は理学部だったので教育学部には全く縁がなかった。突然、教育学部に電話して数学教育の専門の先生を紹介してもらえるのか不安だったが、割とすんなり話を聞くことが出来た。
◆「4人に蜜柑を3個ずつ」で、4×3にした場合、 ○にする、△(減点?)にする、×にする、それぞれの教師の比率はほぼ1/3ぐらいだと思う。昔からこういう教え方はなされていたし、それほど拘らない教師もいた。特に、最近増えたとか減ったとかいうのはないと思う。

算数・数学教育の専門家に話を聞いた 算数「かけ算の順序」を中心に数学教育を考える/ウェブリブログ

100%ではないんだなと,うかがい知ることができます.
有益な情報をいただいた直後のツッコミで恐縮ですが,上の記述のようなとりまとめでは,いつのどこでの状況なのかが分からないので,「今の日本の小学校の算数において」と言えないという弱さがあります.まあ,本格的に聞き取り調査をしようとすると,バイアスがかかりそうで,意味のある値を出すのは難しそうですけどね.
もう少し,毒を吐いておきます:上記ブログ主さんの持つ,電話で問い合わせるフットワークの軽さ,多彩な類題を引き出せること,自分なりの信念・意図を裏付ける情報を指向している点などに,畏敬の念を抱いております.こちらは,電話の曖昧性や誘導性に留意し,そういうことが起こりにくくい,文書・書籍をベースに検討するよう心がけています.類題は必要に応じて探してきます.かけ算の順序をめぐる論争に関してはこちらも信念・意図はありますが,その裏取りなんてことよりも,知ることのできた情報から,過去と現在,人は(自分も)どのように考えたのか,そしてそれはこれからどう変わっていくだろうかという点に関心を持ち,あれこれ書いてきています.

*1:これまで知り得た情報の中で,バツにしている事例は見かけませんでした.ただまあ,「これはかけ算で答えが出せるんだから,問題文から6と4を取り出して,6×4=24とすればいいんだよ.4×6=24なんて苦労して逆に書いても,将来役に立たないよ」と指導する先生がいても不思議ではありません.その可能性を考えるのなら,「6×4=24と書いてバツになる可能性」と「4×6=24と書いてバツになる可能性」を比較して,より小さいほうを選ぶことになります.