「かけ算」のつまずきの法則
算数のつまずきには法則がある クラス全員クリアできる,驚異のスモールステップ指導法
- 作者: 赤塚邦彦
- 出版社/メーカー: 明治図書出版
- 発売日: 2012/10/09
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (3件) を見る
「向山型算数」で購入した2冊目です.今年6月に取り上げた本と,タイトルは似ていますが,著者は違います*1.
どの項目も,2ページ見開きで,「① つまずきの法則」「② つまずきをクリアするスモールステップ指導法」で構成されています.つまずきの法則のところでは,各教科書の該当ページを挙げています.なので,どの教科書にも見られる課題,そして対応できる指導法を,提示・提案しているわけです.
かけ算はpp.50-51です.
① つまずきの法則
「かけ算」という言葉を学習した後,絵を見て,かけ算の式をつくるという学習場面である。
(東京書籍2下p.7/啓林館2下p.20/学校図書2下p.10/教育出版2下p.6/大日本図書2下p.20/日本文教出版2下p.8)
上記のような絵をかけ算の式にするところで,つまずく子がいる。
2×5と式を書けなければならないのだが,5×2などとしてしまうのだ。
これは,「1つ分」「いくつ分」などの言葉が定着していないことが原因である。
かけ算の式であらわそうとする,わりと初期の「指導上の注意点」のようです.1980年代はじめの本にも,同種の指摘があります.
1単位の持つ数量「2」が「5つぶん」あることを「2の5倍」としてとらえ,さらに,2×5の式に表せるようにする.このとき,5×2と表す子どもが意外に多い.1単位のもつ数量や,何倍のとらえ方が,見方によっては反対になることもあるから,そのうちの1部は正しい考え方をしているのではあるが,一般にはとらえ方があいまいで,2と5の数字のみにとらわれた結果であるとみられる.
(『算数子どもの考え方・教師の導き方 2年』pp.98-99)
数字まで一緒でした.とはいえこれは偶然の一致ではなく,九九は2の段や5の段から指導していくことが多く,それに先だって(またはそれに関連づけながら),場面に現れる「2」と「5」の意味の違いや,「2×5」「5×2」であらわされるもの(式の意味)の違いを,確認しようという意図なのでしょう.
初期どころか,未習事項の調査(レディネステストの一部)でも,かけられる数・かける数を逆にした式を誤答としている事例があるのを,思い出しました.
第2学年1組 算数科学習指導案
問題 正答数 誤答の傾向 ⑦ 2の4つぶんの式を書きましょう。 18 無答がほとんど。4×2(2名)
話がふくらみすぎました.もとの本に戻りますか.
指導法として,「先生と同じように,1皿以外のりんごを隠してごらん。」(p.51)として図の一部を隠す*2よう指示します.1つ分の数といくつ分を数えさせた上で,
2個ずつが5皿分。
かけ算の式を教科書に書き込みなさい。作業させた後に,教師が大事なことをもう一度繰り返す。これによって,子どもたちは式が書きやすくなる。この繰り返しをしていくしかない。
としています.なるほどです.
小二教育技術のかけ算
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2012/10/15
- メディア: 雑誌
- この商品を含むブログ (3件) を見る
2年生が11〜12月に学ぶことを想定し,各科目そして科目にとらわれない情報が入っています.算数はというとこの時期,「かけ算」です.そしてかけ算の指導法が,pp.54-59とpp.95-92((全体では縦書き・右開きですが,ここだけ後ろのページから読まないといけないので,あえてこのページ表記にしてみました.))と2件あります.それぞれ,執筆者も,絵も違っています((子どもたちの顔を見比べても,髪の毛の塗り方や,眉毛の形状が異なっています.)).
先にp.95から始まるほうを見ておきます.「6の段の九九を、工夫してつくりましょう。」で,アレイ図を使って,6×4と4×6が等しいこと(交換法則)や,6×6=36を,5×6=30と1×6=6の和で求められること(分配法則)を示しています.
累加に基づく積の性質は,「3の段は、かける数が1増えると、答えは3増えているよ。表に表すとかんたんに分かるよ」(p.92)となっています.
(a+1)×b=a×b+bにて検討した「かけられる数が1増えると答えは,かける数だけ増える」は,見当たりませんでした.
それでp.54から始まるほうに移ります.特別企画で,タイトルは「子どもの実態別 かけ算九九習熟プリント」です.なのですが,九九に限定されない話が目立ちます.「かけ算九九入門以前」とでも言いましょうか.
乗法意味指導あるいは「かけ算の順序」の件も,ばっちり出ています.
この本もまた,「学習者」と「批判者」を区別できる,試金石になっているように感じました.
資料集その後
リリース後も,本や論文を読んだら,追加するようにしています.そこに新発見がなくても,未来に向けて発刊された一つの情報なわけで,集約を試みている次第です.本日のように,むかし読んだことと見比べやすくするという意図もあります.
思うことあって,リリース時(2011年12月2日)と,本エントリ公開前(2012年10月22日)とで,項目数を比較してみました.
エントリ | 2011-12-02 | 2012-10-22 |
---|---|---|
資料集1 | 20 | 42 |
資料集2 | 20 | 39 |
資料集3 | 11 | 11 |
本日の件,そして先日の麻柄論文も,足していくとします.
なお,Webで見かけた情報に対しては,基本的に「はてブ」です.
はてなブックマークの関連タグで,表にしてみました.
タグ | 2011-12-02 | 2012-10-22 |
---|---|---|
5×3 | 112 | 154 |
かけ算の順序*3 | 29 | 134 |
算数 | 0 | 33 |
教育 | 141 | 233 |
(最終更新日時:Wed Oct 24 05:51:30 2012ごろ)