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きりぬき トリアージ編

当ブログでは,「トリアージ」は技術(問題解決手法)の一つであること,自分がトリアージをなされる側の者であることを認識しながら,いくつか文章を書いています.エッセンスは,余談で話すトリアージをご覧ください.過去のエントリは,トリアージカジュアルトリアージのカテゴリーをどうぞ.*1

「医療・福祉の職につくわけでない人であっても,“将来「悪とも正当とも割り切れない行為についての判断」をすぐ近くで”なされている可能性に思いをいたし,災害現場で,どうして身内を助けてくれないのかと悲鳴を上げる人がいたときに,医師らに代わって,そしてその方の心の中の苛立ち,苦しみに共感しながら,見えるところ見えないところでどのようなことが起こっているかを代弁できる」ようになってほしいと考えます.

大学のうちに学んでほしいのは,トリアージか?

トリアージ作業は,医師ひとりに託されたのですが,事前事後の不安を取り除く目黒所長と,トリアージ判定に納得のいかず暴力行為を振るう“連れ”を制して諭す(pp.174-175),十津川警部の存在には,好感が持てます.

西村京太郎と十津川警部とトリアージ

災害時にトリアージをするしないの決定権は自分にはありません.なので,トリアージが実施されればそれに従い,足を引っ張らないようにしたいという思いもあります.

本から学ぶトリアージ

集団災害発生時の管理を行う上で重要なことは,全体的な流れを理解し,災害時の多数の負傷者をスムーズに管理し,最大限の効果をあげることです.従って,集団災害時の管理の目的は,あらゆる種類,大きさの災害にも役立つ管理方法を理解し,実際の災害現場で,個人や組織が誤ったステップで管理しようとした時に,修正・改善できる能力を養うことです.

とっさの時に人を救えるか

「でもそうは言ったって」「実際のところは」から始まる批判も,十分に考えられます.
ただ,これを著者(医師)の傲慢ととるのではなく,災害医療の専門家集団における経験・実績をもとに,上記の説明がなされているのだと考えたいものです.
もし批判したければ,専門家の書いた複数の書籍を読んで輪郭と外れ値を把握し,専門家集団の門を叩いて教えを乞うた上ででも,遅くないように思えます.

トリアージは「切り捨て」か 〜 専門家の考え

また,特に,緊急時に人の調整を図ることはさらに困難です.お互い顔を知っていて,冗談が言えるくらいの関係になっていなければ,無理な頼みを,全く面識のない人に言っても,誰も聞き入れてくれません.必ず,「上司と相談してからお返事します」というお役所的な返事が日本での決まり文句です.
日本の社会は,個人では,誰も責任をとれない仕組みになっています.日常の生活の中で,一人でも多くの方と,日頃から顔見知りになっておくことは,まさかの時に役に立つことが多いのです.訓練もこのような意味で,日頃は全く関係のない人と知り合いになることができ,顔見知りになる絶好のチャンスなのです.

自己中に陥らない災害対策・トリアージ

トリアージの判断に絶対的なものはなく,同じ災害であってもその判断にはトリアージを行う人員の素養や災害の状況あるいは時間的な変化によって,種々の異なった結果が導き出される可能性がある.どのトリアージの判断が正しいのか?について明確なものがあるわけではないが,このような場合,「トリアージの判断の妥当性」を判断する一つの根拠として,以下のような考え方がある.つまり,民事と刑事の法的責任(すなわち損害賠償と刑罰)は,あくまでも行為の時点の合理的な判断により結果の発生が回避できたかどうかで決まる.事後的に(すなわち結果論として)どちらの選択がベストであったかが問題にされるのではないのである.当該の状況の下で収集可能な情報に基づいて合理的な行動が行われるのならば,たとえ事後的には別の選択がよりベターであったとされても直ちに法的責任が生じるわけではない.この考え方によれば,トリアージを行うにあたってはその災害に関する正確な認識と医療や配送などその時点の状況を十分に把握したうえで,合理的な判定(その時点では最良と考えられるトリアージ)を行った場合には,結果的にII型の傷病者の機能予後・生命予後に重大な問題が生じても,そのトリアージの判断が直ちに問題となる可能性は少ないと考えられる.

トリアージの法的解釈

危惧をもう少し具体的に書くと,「事後に」トリアージ判定の成功率を常に数値化することが求めるような社会になるとまずい,ということです.
それと,「80%ということは,5人に1人,50人いれば10人も,判断が間違っているのか!」という指摘の出る怖さもあります.仮に99%であっても,分母すなわち対象者数を増やせば,分子すなわち判断ミスの数を大きくできてしまいそうです.

トリアージ行為の評価について

トリアージを直接取り入れた短歌は見当たらなかったものの,なぜトリアージという書名にしたのかが,あとがきで触れられています.

歌集名は,『トリアージ』とした.「トリアージ」とは,災害時に,多数の傷病者をその重症度と緊急性によって分別し,治療の優先順位をつけることである.短歌を作る場合にも,日々接する様々な事柄の中から,何を選び,どう歌ってゆくかが作品の生死を分けるのだと考えてきた.その意味でも,本歌集に収めた作品たちが,<死に体>でなく,その時々の空気を存分に吸収した,生き生きとした作品として読者の皆様の目に映ることを願っている.
(pp.180-181)

歌集にトリアージ

ただ,災害医療のトリアージでは,現場トリアージ,搬送トリアージ,病院トリアージに分かれますが,要件定義のトリアージにはそういう段階分けがなく,そのため,トリアージオフィサーの裁量がうんと大きくなることが予想されます.

要件定義にトリアージ

「やらねばならぬ(must-do)」が赤に相当し,「やったほうがいい(should-do)」が黄,「やれればやる(could-do)」が緑っぽい.
ただ,医療におけるトリアージでは,緑もいつかは治療を受ける必要があるのですけどね.
黒は見当たりません.自分なりに何を黒と判定するか,考えてみたものの,いい表現(というか例)がなかったので,これはシステム開発におけるトリアージ利用の注意点としておきましょう.

デスマーチにおけるトリアージ
トリアージの用語 事業仕分けの用語
赤タッグ ???
黄タッグ ???
緑タッグ 予算認める
黒タッグ 不要・廃止
??? 地方自治体で実施
??? 来年度予算見送り
??? 予算縮減
??? 自治体や民間などに移管
??? 国庫返納
??? 見直し
事業仕分けにトリアージ

とはいえこの件,連想するものはいろいろあります.「Xの事業を減らす/廃止にするくらいだったら,Yを廃止しろ」という言説には辟易です.この言い回しで,説得力のあるものに出合ったことがありません.その表現からは「Xは何か」「Yは何か」「予算はどのようにして決められているか」を踏まえているように見えないのです.

Re: 事業仕分けにトリアージ

その後は,広報に関する記事が並ぶのですが,「優先順位」はたびたび出現するものの,トリアージという言葉も,トリアージで連想できる諸概念も,一切出てきません.そして特集の最後,p.70で『トリアージの考え方を取り入れることで,「いま誰に何をするべきなのか」「次に何をするべきなのか」といった手法や手順もおのずと見えてくることだろう』と結んでいます.

「広報会議」の特集にトリアージ

院内トリアージ制のもとでは、緊急度に応じて診療の順番が決まり、重症であれば速やかに治療を受けられますが、軽症と判定されると長く待たされることがあります。患者側もトリアージの意義をよく理解し、診療に協力することが必要です。なお、救急車で搬送された場合も院内トリアージの対象となり、例外ではありません。
このように診療報酬の改定は医療費をはじめ、さまざまな医療場面において変化をもたらします。できるだけ不利益を被らないよう、また、賢く医療を受けるためにも、改定の内容とその対策をよく知ることが大切です。

気になる医療・トクする情報(1)|Health & Money|先進医療.net
さくさくトリアージ 〜 院内トリアージ
背景色 文字色 出席回数 学生への指示
薄い青 濃い青 11回以上 集計ミスや不正な登録がない限り,期末試験の受験資格を獲得しています.残り授業も気を抜かずに頑張りましょう.
薄い黄 濃い黄 10〜9回 残り2回,欠席が続くと,期末試験の受験資格を失います.残り授業にはきちんと出席しましょう.
薄い赤 濃い赤 7〜8回 合格のために,残り2回は出席が必須です.それでも足りないので,いつ出席・欠席したか,見直してみますか.
濃い灰 6回以下 これは…今から努力しても,単位をあげられません.
出席回数
  • Q:「さくさくトリアージ」って,誰が命名したんですか? 出版社? A:出版社ではなさそうです.はじめにp.10で,用紙を撮影した中に「さくさくトリアージ」の記載があります.運用ルールの中にも記述があるので,これは,2008年からの試行において広尾病院でこの名称が用いられていた可能性が高いです.命名者や経緯については,書かれていません.
さくさくトリアージを手に

平成18年には救急センターを受診した患者さんほぼ全員の38,500名がトリアージを受け、そのうち最も緊急度が高く直ちに蘇生処置が必要な患者さん(蘇生トリアージ)が約320人、緊急度が高く15分以内を目途に診察・治療が必要な患者さん(緊急トリアージ)が約3,600人でした。それ以外の約9割の患者さんはいったん待合室でご待機いただきました。救急車で来院された患者さんのうち、上記の蘇生トリアージ・緊急トリアージに該当された方は約3割で、それ以外の方法で来院された患者さん同様いったん待合室でご待機いただきました。

http://www.ncchd.go.jp/hospital/emergency/kyuukyuu.html
院内トリアージ,もう少し調査

八雲「…….確かに 救急医療では 赤と判断する かもしれません」
八雲「でも 災害現場は 一刻も早い治療が 必要な人たちが 溢れているはずです」
八雲「現場での スタートトリアージでは すぐ死に直結する 意識・呼吸・脈拍を 最優先で評価すべきで その点 この患者は 現況 歩行することもできます」
八雲「もちろん 症状が急変する 可能性があることを 申し送りした上で 注意深い 経時的観測が 必須となるかと」

緑です

トリアージは数年来,いやもっと長い期間かな,是非をめぐって議論の対象となっていますが,現在では,医師や看護師の国家試験で当たり前のように出題され,その実施は当然のものとなっています.院内トリアージについては,ある条件で実施することで診療報酬がアップされるのに加えて,先着優先よりもその運営の方が,医療側にも,患者全体の側にもメリットがあると,病院や診療所が判断している,そういった実用面からも,受け入れられているのかなと思います.

余談で話すトリアージ

JTAS検討委員会では、CTASを検討するにさいして、まず「トリアージ」という言葉について議論しました。「トリアージ」はわが国ではもっぱら災害時に使用されるもので、混乱・誤解を招くことを懸念するとともに、おもに院内(救急外来)における尺度であることを重視し、「緊急度判定」と呼称することとなり、CTASシステムを「緊急度判定支援システム」と名付けました。

http://jsem.umin.ac.jp/ctas/index.html
救急外来トリアージにおける黒タグ

待ち時間に,迷惑がられない程度にいろいろ見回りました.受付を済ませたあとに,問診票を書くことになっており,その書面(A4で1枚)を見ると,上部が箱で囲まれていて,中に大きな文字で,「トリアージ区分 緑 黄 赤」と入っていました.

問診票にトリアージ

*1:この段落は,さくさくトリアージ 〜 院内トリアージの冒頭に書いた内容を一部改変したものです.