参加者
学会発表の場には,「発表者」「聴衆」「座長」「補助員」「実行委員」がいます.
発表者は,スケジュールに従って自分の発表をします.聴衆は,発表者の話を聞き,質疑に加わります.座長は,セッションの進行を司ります.
実行委員は,学会運営の企画に携わり,責任を持つ人を指します.責任といっても「すみませんでした」と言うことではなく,当該セッションを含め時間や物品などの管理を行い,変更が必要なときには,判断や対処(補助員などへの指示)をすることが求められます.「幹事」「世話人」「世話役」などと呼ばれることもあります.
補助員は,学会の日だけ仕事をします.大学(の協力)で学会を開催する場合,補助員はたいてい,学生です.なので「アルバイト*1」「学生さん」と呼ばれることもあります.実行委員・座長やほかの人の指示に従い,セッションを円滑に進行することが期待されています.
一人の人が,実行委員であると同時に,あるセッションの座長を兼ね,しかも他のセッションで発表者になるという場合もありますが,本記事では一つのセッションを対象にするという前提のもと,参加者は上に書いた5つのいずれかに分かれるものとします.
学会開催前
ここは実行委員が行う作業です.
プログラムを組みながら座長を決め,了承を得ます.また座長には事前に,プログラムとともに,セッション発表者の原稿を送付します.
部屋割に応じて,補助員を割り当てます.小さな学会であっても,機器トラブル時の対応のため,最低1人は必要です.
「マイク係」と「タイムキーパー」について,有無を検討します.マイク係は,部屋が小さければ不要です.タイマー(後述)を用意し,座長が操作することにあらかじめ同意が得られれば,タイムキーパーも不要となります.必要と判断したら,補助員の人数を増やします.学会の直前には,人物の割り振りを決めておき,補助員のオーバーブッキング(同じ時間帯に,同一学生が複数の部屋を担当すること)が起こらないようにします.
タイムと言えば,この段階で,発表の時間配分を決めておかないといけません.質疑込みの「1件の時間」を決め,発表者数をかければ,セッションの時間が算出できます.そして1件の時間を「発表時間」と「質疑時間」に分け,各発表者にあらかじめ通知することも必要です.
発表時間・質疑時間と鈴(ベル)の例
1件の時間 | 発表時間 | 質疑時間 | 1鈴 | 2鈴 | 3鈴 | |
---|---|---|---|---|---|---|
15分 | 10分 | 5分 | 7分 | 10分 | 15分 | ● |
17分 | 12分 | 5分 | 10分 | 12分 | 17分 | ● |
20分 | 15分 | 5分 | 10分 | 15分 | 20分 | ● |
30分 | 25分 | 5分 | 20分 | 25分 | 30分 | ● |
30分 | 20分 | 10分 | 15分 | 20分 | 30分 | ● |
いくつか補足です.関係式として,「1件の時間=発表時間+質疑時間」「1鈴<2鈴=発表時間<3鈴=1件の時間」が成立します.
1鈴,2鈴,3鈴は発表開始からの経過時間です.それらは足せませんが,引くことは可能です.1鈴15分,2鈴20分の場合,15分+20分=35分としないのに対し,1鈴が鳴れば,20分−15分により残り5分と認識できます.
質疑を重視するなら,発表時間=質疑時間を基本として設定します.上の表にない時間設定をしたい場合,1鈴は,発表時間の3分の2から5分の4までのあたりで,切りの良いところにしましょう.
「1件の時間」のことを「発表時間」としてアナウンスなどする場合は,「発表時間」のほうを「トーク時間」「プレゼンの時間」「おはなしいただく時間」などと読み替える必要があります.「20分発表+10分質疑=30分でお願いします」という書き方もあります.
タイマー
学会の事務局が,ストップウォッチベルを手配するのなら,それを使うことにしましょう.
そうでない場合は,「タイマーソフトウェア」を選んで使うことになります.
最もよく使われているのは,iPadとプレゼンタイマーの組み合わせです.
ノートPCを使って時間管理したいという人向けにも,いろいろソフトウェアは出回っていますが,どうかzjsもご検討ください.Webからのほか,ファイルをダウンロードしておき使用することも可能です.URLから1鈴・2鈴・3鈴の時間を指定できるほか,英語版もあります.
セッション開始前
さて当日です.ここからは主に,補助員が行うことになります.
座長がスムーズにセッションを進行させ,各発表者が問題なく発表できるよう,環境をつくりましょう.
座長席,タイマー,マイクの準備を,最初に行います*2.タイマーの音量の確認も忘れずに.
黒板などに「1鈴 ○分」「2鈴 ○分」「3鈴 ○分」を書き,他の人が見て,正しいことをチェックしましょう.この件に限らず,ダブルチェック(複数の人による作業と点検)は何をするにも必要です.
座長の方がいらしたら,席に案内し,質問に誠実に答えましょう.分からないことは,実行委員の判断を仰ぎましょう.
発表者の機器チェックに立ち会い,不安を解消するようにしましょう.
セッション中
発表中は,基本的には動きません.ただし,異常があれば即対処です.異常には,表示(スクリーン)のほか,PCのフリーズや,スピーカーからの異音*3などがあります.
室内とスクリーンの明るさにもよりますが,発表後にスクリーンを見やすくするため,室内の(スクリーン周辺の)照明を落とし,質疑応答時には明るくすることも,必要となるかもしれません.
質疑応答の時間になったら,マイク係は座長の指示に従い,マイクを運びます.誰の手元にマイクがあるべきかを意識して,動くようにしましょう.
タイムキーパーは,座長から残り時間(発表・質疑)を聞かれたら,小声で答えるか,タイマーを見せましょう.
セッション終了後
拍手とともにセッションが終了し,聴衆が立って部屋を出て行くのを見て,後片付けを行いましょう.
引き続き使用するのでなければ,タイマーやマイクなどを,元の場所または学会の受付に戻します.室内で落とし物があれば,それも受付へ持って行きましょう.
Q: なぜ俺流・座長心得は「である体」なのに,この記事は「です体」なのですか?
俺流・座長心得は自分用のメモなのに対して,この記事は,学会運営に携わることになる,自分以外の人にも活用してほしいと考えているからです.
箇条書きの有無も,同じ理由です.
(最終更新:2013-06-04 朝)