わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

国際比較に追加

ノートでは,「日本のかけ算は「いくつ分×1つぶんの数」の順序だが,海外では逆である」という方向に進んでいるように見えますが,日本の算数教育に関わっている人々は,そういった違いを考慮した上で,授業を計画し実施しているという実情には,たどり着いていないようです.

3. かけ算の順序の国際比較 - Wikipedia:かけ算の順序問題のリード変更案について

そういった式の表示の違いに配慮しながら,国際交流や教材開発を行っている事例として,次のものがあります.

各国向けの教材開発のほか,「日本の教科書の英訳」があるのを,書き忘れていました.一つ,新しい情報を知ったので,別記事にしました.
前々から知っていたのは,東京書籍の「新しい算数」の英訳です.

そして,啓林館でも今年,英訳本がリリースされています.平成23年度用教科書に基づいているとのこと.

後者のPDFファイルは,理数啓林という,啓林館の広報誌の一部(No.1, pp.25-26, 2013年4月)です.著者は馬場卓也…先日の記事で「タイ」としてリンクをした報告書の著者と一致します.
ということで「掛け算」についても,記載がありました.

  • 英語と日本語では掛け算の掛ける数と掛けられる数の順が逆である。これはまとまりの数を先に見るのか、それらの中身を先に見るのかの差である。日本語の語順で統一した。

(p.26)


教科書や,具体的な指導方法・指導例から離れて,以前から,日本の算数教育の水準の高さ,そして指導上の特色が,次の論文や書籍で記されています.

なお,『Teaching Gap』を起点として,授業研究や教育文化,また国際協力などについて,今年発刊された『子どもの学力を高める新しい算数科教育法』で解説されています(世界に注目される算数科授業研究,pp.131-132).
かけ算の指導に関連した,比較的最近の話としては,「まとめて数える」が,米国のCommon Core State Standardsに入っている点を挙げたいと思います.

1年からのかけ算,とは,「掛け算の素地」のことです.“2ずつ”などの「まとめて数える」活動は,1年から入っていますし,米国のCommon Core State Standards for Mathematicsにも,"Work with equal groups of objects to gain foundations for multiplication."が2年に書かれています(乗除算は3年です)."foundation"が,「素地」の英語表現としてぴったりです.

優しい本

foundationを含む項目は,Webだとhttp://www.corestandards.org/Math/Content/2/OAhttp://www.corestandards.org/assets/CCSSI_Math%20Standards.pdf#page=19で確認することができます.学習指導要領の「具体物をまとめて数えたり等分したりし,それを整理して表す活動」(第1学年),「まとめて数えたり,分類して数えたりすること」「一つの数をほかの数の積としてみること」(第2学年)と関連し*2小学校学習指導要領解説 算数編 日英対訳ではpp.52*3, 61, 62で記されています.
「まとめて数える」を,かけ算の素地とするとらえ方について,海外の書籍で,目にしたことがありません.戦後すぐの学習指導要領にも記載されていることと合わせて,これは米国の算数教育を主導する人々も採用した,日本の算数(かけ算)指導の特色の一つと見ていいように思っています.

*1:現時点でも,wikipedia:en:MultiplicationのNotesの1番目でリンクされています.

*2:平成10年告示の学習指導要領にも,ほぼ同じ記載があります.

*3:何のfoundationなのかは,異なっていますが.