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文章作成のwhy/what/how―今年の本から

文章ベタな人のための論文・レポートの授業 (光文社新書)

文章ベタな人のための論文・レポートの授業 (光文社新書)

今年出た本です.『日本語の作文技術 (朝日文庫)』や『理科系の作文技術 (中公新書 (624))』はちょっと古いなあ,と思う人にお勧めの本です.この種の「物の書き方」本を手にしたことのない学生が,読んでも,損はしません.
本日はwhy/what/howの観点で,主に2点を取り上げます.
論文にせよレポートにせよ,「なぜ(why)」「何(what)について」書くのかの検討が重要になってきます.この点について,p.136では,5項目からなる箇条書きで,手短にまとめられていて,なるほどと思いました.書き出します.

テーマの選択には留意すべき次のような要点があります。

  • 目的 ― 文章は目的に適っていなければ無意味です。
  • 興味 ― 興味のない文章を書くのは苦痛以外の何ものでもありません。
  • 有意義性 ― 書くに値するテーマでなければ書いても無駄になります。
  • スコープ(範囲) ― テーマは一般的(広)すぎても特殊(狭)すぎても困ります。
  • 時間 ― 文章は締め切*1までに仕上げる必要があります。

特に気をつけたいのは最後の項目で,自分なりに言葉を増やすと,「文章作成の時間は有限であること」への留意です*2.期限までに,自分で書き上げることができ,かつ,読み手に「陳腐」「コピペ」と思われないようにするには,デッドラインを含む上記の5項目を,テーマ選定の際から考慮せよとなるわけです.
ただしこの本において,whyやwhatについて書かれたのは,それほど多くありません.大部分はhowが占めます.
いったん文字にしてみた内容について,どこがまずく,どのように(how)修正・削除すれば,より良い文章になるかのアドバイスが多数,収録されています.
「地位の高いポストにつくことはない」を「高い地位につくことはない」(pp.119-120),「このばかげた社会保障制度」を「この時代に即さない社会保障制度」(p.227)にそれぞれ,書き換える事例には納得です.

*1:原文ママ.なお,p.138では「締切り」と書かれています.

*2:有限性については,学生時代,研究テーマが決まっていないときに,学会誌か何かで読んだ「計算論的学習理論」の話を思い出します.正確な答えを出力したいからと時間をかけすぎるのでは実用にならないことを,たしか,夕食に何を買うかを決めるのに3年もかけるわけにいかない,といった例で解説していたのでした.