わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

20歳の自分に

20歳の自分に受けさせたい文章講義 (星海社新書)

20歳の自分に受けさせたい文章講義 (星海社新書)

書く技術の小ネタ集です.どこを開いても,「なるほど」「あ,そうだった」と思わずにはいられません.
考え方やテクニックもさることながら,豊富な事例・文例にも注目です.まずは:

大相撲の人気回復策として、ナイター制の導入を提案したい。なぜなら、プロ野球もナイター制をとっている。
(p.138)

なんだか落ち着きません.これを,主張・理由・事実の3点セットが分かるように書くと,こうなります*1

大相撲の人気回復策として、ナイター制の導入を提案したい。なぜなら、平日の昼間に取組を行っても、会場に足を運べるファンはかぎられるからだ。事実、プロ野球も平日開催のゲームはナイター制をとっている。
(同.一部省略)

もう一つ.ゴジラの例は,笑いました.

フィクションの世界でよく語られる、「大きなウソは許されるが、小さなウソは許されない」という言葉をご存じだろうか?
たとえばゴジラが街にやってくる。
これはとてつもなく“大きなウソ”だが、物語上なんら問題にならない。むしろ大歓迎な大ボラである。
(略)
続いて、ゴジラの攻撃から逃げる主人公が、倒壊したコンビニ前にある公衆電話を使い、妻や子どもたちの安否を確認する。
面白いことに、観客はこうした“小さなウソ”を許さない。
「いまどきコンビニの前に公衆電話なんか置いてねえよ」
「コンビニは壊れてるのに電話線は生きてんのかよ」
「携帯電話を使うだろ、普通」
「この時代にテレフォンカード持ち歩いてるやつなんか見たことねーよ」
「いいから早く逃げろ」
などなど、容赦ないツッコミが入るし、物語のリアリティは一気にしぼんでしまう。映画は、間違いなく駄作の烙印を押されるはずだ。
(略)
物語の描写は、細部になればなるほど手を抜けないのである。
(pp.207-208)

去年読んだどの本だったか,教授会で,数千万円もする機器の購入や使用の件は審議なしだけど,その次の,外から見るとどうでもいい,数万円程度の議題には,喧々囂々になるという話があったっけ….
親馬鹿にせよかけ算にせよ,どっちかというと細かいことを足し込むタイプなので,小さなウソには気をつけたいところです.
他に,ページ番号をメモしていたところを,リストにしておきます.

  • p.75: あからまさな“不正解”は存在する(関連:いける学生・あかん学生2012
  • pp.92-93: 圧迫感の解消には「句読点」「改行」「漢字とひらがなのバランス」
  • p.184: ラブレターを書く目的は「自分の気持ちを伝えること」ではなく「自分の告白を受け入れてくれること」
  • p.192: 起“転”承結(p.195: ポイントは転ではなく起)
  • pp.213-214: 自分で解くことをサボった文章には,ほころびが出る.「わかったことだけを書く」ことで読者の“納得”を引き出せる


本日取り上げた本のタイトル,「20歳の自分に受けさせたい」について,自分も考えてみます.もしいま,20歳の向学心あふれる「自分」がいたら,何を伝えたいだろうかです.
与える情報源とツールが一つずつ,思い浮かびます.情報源というのは,次の本です.

思考・表現・コンピュータ―あなたがあなたを救うには

思考・表現・コンピュータ―あなたがあなたを救うには

ただし,後半は,現在の情報技術からするといくぶん,古びているように見えます.読んで理解し,日常生活に役立ててほしいのは,最初から「5 方法論の方法論」までのところです.
大学生の「自分」が,まっさきに知るべき基盤技術は,バージョン管理です.Windows + TortoiseSVNでかまいません.コマンドラインなら,svnでもgitでも.
そして「前の状態に戻れるようにすること」「変化(差分)を意識すること」「コミットの日時を,記録に残すこと」を習慣づけてほしいのです.
より多くの書籍・刊行物から知識を得ること,プログラミング言語やライブラリなどの学習・活用は,上に書いた本とツールで“地固め”をしてからで十分です.

*1:97字で,Twitterのつぶやきにも十分収まります.