わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

わり算の順序を問う問題

出題例

D. The cost of the 6.44 gallons of petrol was £4.86. What would the price of one gallon be?
〔6.44ガロンのガソリンの価格が4.86ポンドであった.1ガロンの価格は?〕

  • Fischbein, E., Deri, M., Nello, M. S. and Marino, M. S.: "The Role of Implicit Models in Solving Verbal Problems in Multiplication and Division", Journal for Research in Mathematics Education, Vol.16, No.1, pp.3-17 (1985). http://www.jstor.org/stable/748969

17. (B) 12 friends together bought 5 kg of cookies. How much did each one get?
〔12人の友達が共同で,5kgのクッキーを買った。1人につきどれだけもらえるか.〕

ある会場に小学生が集まりました。
集まった小学生200人のうち80人が女子でした。
女子の人数の割合は,集まった小学生の人数の何%ですか。

8mの重さが4kgの棒があります。
この棒の1mの重さは何kgですか。求める式と答えを書きましょう。

0.8mの重さが1.2kgの鉄のぼうがあります。この鉄のぼう1mの重さは何kgでしょう

amの重さがbgの針金があります。この針金1mの重さは何gですか。abを用いた式で表しなさい。

  • 市川 伸一: 教えて考えさせる算数・数学, 図書文化社 (2015). [isbn:9784810056563]

問題1 あるペットボトル\frac34本分に,ジュースが\frac25Lはいっています。このペットボトルは1本あたり何Lはいるでしょうか。

問題3 1本あたり\frac34Lはいるペットボトルに,ジュース\frac25Lを入れると,何本分になるでしょうか。

あるシートの1㎡あたりの人数を調べます。
このシートの面積は8㎡で,シートの上には14人すわっています。
(略)
シート1㎡あたりの人数を求める式を書きましょう。

ある会場に子どもたちが集まりました。
集まった子どもたち200人のうち80人が小学生でした。
小学生の人数は,集まった子どもたちの人数の何%ですか。

1.4mの重さが3.5kgの鉄のぼうがあります。この後の問題をつくって解決しよう。

8人に,4Lのジュースを等しく分けます。
1人分は何Lですか。求める式と答えを書きましょう。

  • 根本和昭: "組立単位と概念形成: 数の計算と量の計算", 理科教室, 本の泉社, Vol.64, No.9, pp.48-53 (2021). [isbn:9784780715651]

 以下の問題を高校2年物理基礎の考査に出題してみました。
 「5 s 間で2 m の距離を移動する物体の速さはいくらか。」

きりぬき

いずれにおいても,演算の順序(かけ算の順序,わり算の順序)や式の順序としてかくあるべしというのではなく,間違いとされる式の分析として,「問題文に登場する数量の順」「出てくる順」「文章題に出て来た数の順」と表記しているのは,興味深い共通点のように思います.
(略)文章題では「指示された場面からその数量や関係を適切に把握すること」と「その数量や関係を適切な式で表すこと」が期待されます.基準量・全体量が後に示された問題が,かけ算・わり算の意味を確認するのに適切なものとして,算数教育の実践(授業や学力調査)を通じて培われてきた,ということです.

針金問題,わり算の順序

ここまで見てきた通り,かける数が先に,かけられる数を後に置いた文章題で「かけられる数×かける数」の式のみを正答とする出題は,少なくとも半世紀以上の歴史があり,現在まで継承されている.もちろん,正解不正解を得るに留まらず,その結果は指導にフィードバックされてきた.ところで,その種の出題は低学年までであり,高学年では,わり算が用いられる.2010年度の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)で小学6年生は「8mの重さが4kgの棒があります。この棒の1mの重さは何kgですか」という問題を解いた.正解となる式は,8÷4ではなく4÷8である.

かけ算の順序論争について(日本語版)

問題1と問題3には,2つの共通点があります.一つは,わる数が文章題の先,わられる数が後に出現すること,もう一つは,わる数が1未満なので,わり算の答えは,わられる数よりも大きくなることです.

教えて考えさせる,算数・数学の授業26事例

「あるシートの1㎡あたりの人数を調べます。このシートの面積は8㎡で,シートの上には14人すわっています。」から始まり,2次元的な散らばりを,2重数直線に変換してから,「シート1㎡あたりの人数を求める式を書きましょう。」となっています.14÷8が正解,8÷14は間違いです.
…ですよねと思いながら,解説資料をチェックしておくと,14÷8は◎,8÷14は誤答の筆頭でしたが,その間に,「シートにすわっている人数÷シートの面積」や「□×8=14」が,○の正答として,例示されていました.

今年の全国学力テストに見る,たし算・かけ算・わり算の順序

以上をもとに,誤答の典型的な状況を整理してみます.
高学年になったら,割合にあたるPが1よりも小さいとき,A÷Pの式が正解となる文章題で,A×Pとやってしまいがちです.また上記の,棒の重さの問題は,A÷Pが正解,P÷Aは誤答という事例です.いずれも,等分除の拡張に当たります.
包含除の拡張で,間違えるのは,A÷Bと書くべきところで,A×B,B×A,B÷Aとしてしまうケースが考えられます.ですが,面積を求めるのではない状況で,同種の2つの量を,かけるのには抵抗が出ますし,割合を求める場面では,Bに当たる数量(基準量)を見つけやすいのではないかと考えられます.
結局のところ,等分除の拡張のほうが,子どもたちは間違えやすく,外在的評価のテスト問題でもよく用いられてきたわけです.

わり算,包含除・等分除,トランプ配り (2016.05)

「4を8で割る」ことは,表に「割る」操作を書き加えることで,より明瞭になります.

式について,8÷4とするのは,間違いです.問題文の場面で「8÷4」は,何をするのでしょうか.表を作り直してみましょう.

1あたり

 その高さにおごることなく,誤答の状況を,次のように分析しています(pp.113-114,強調は引用者)。

 この問題で式と答えの両方を正答していたのは、配属学級は75.8%(全国国立76.9%)であった。しかし、18.2%が式を「8÷4」と解答した、解答類型5の誤答をしている。これは、「整数÷整数」の除法では、被除数の方が除数より大きくなると考えている、つまり、除法は「大きい数÷小さい数」であると考えて8÷4と立式したと推測される。また、問題文に出てきた順に、数を式に当てはめて立式しているかもしれないとも考えられる3)。このような誤答は、授業実践の中でもみられた。実践授業Iでは、「2Lのジュースを3等分したうちの1つ分」を求める際の立式において、「3÷2」という誤答があった。学力調査だけでなく、普段の授業の中でも、このような誤答は現れており、子どもたちの中で除法は「大きい数÷小さい数」、あるいは「先に出てきた数÷後から出てきた数」という誤った理解がされている可能性は高い。この2つの誤った理解を区別するには、問題文を「8mの重さが4kgの棒」という表現から「重さ4kgの長さが8mの棒」というように数値を入れ替えて提示し、立式させてみる必要がある。そして、普段の授業では、立式を考えるとき、何が被除数で何が除数になるのかを明確に捉えたうえで立式するという指導が必要であると考える。

 段落の文章は続くのですが,いったんここでストップします。数量を入れ換えても意味が変わらないというのは,「かけ算の順序」とも関連してきます。
 例えば,「さらが 5まい あります。1さらに りんごが 3こずつ のって います。りんごは ぜんぶで 何こ あるでしょう。」という文章題に対し,「1さらに りんごが 3こずつ のって います。そのような さらが 5まい あります。りんごは ぜんぶで 何こ あるでしょう。」と,提示の順番を変えてみます。どちらも同じ数量の関係を表しており,後者は1つ分の数×いくつ分に基づき3×5の式を立てられるのだから,前者も3×5と書けばいい,ということです。この種の問題では,何が被乗数で何が乗数になるかを明確に捉えたうえで立式するという指導がなされているわけです。

8÷4ではなく4÷8~文献読み直し - かけ算の順序の昔話

Q&A

Q: 「わり算の順序を問う問題」って,何ですか?
A: 算数の文章題のうち,出現する2つの数を反対にして,わり算の式にする(先にa,あとにbが出現する場合には,「b÷a」と書く)ことで,正解が得られるものをいいます.
 わり算以外の出題例は,以下の記事でまとめていますので,ご覧ください.

Q: 「わり算の順序を問う問題」って,学校でいつ習うの?
A: そういった名称での学習はありません.5年の「小数のわり算」「割合」,6年の「分数のわり算」で,よく見かける問題です.(ただし,4年で「整数を整数で割って商が小数になる場合」を学習します.令和3年度全国学力・学習状況調査の出題も,第4学年の領域・内容を踏まえたものとなっています.)
 4年までは,わり算の式は多くが「大きな数÷小さな数」なのですが,5年になると,そうもいかなくなるのです.図を併用して,何を何でわればよいのか,わった結果(商)は何を意味するのかなどを確認していきながら,授業が行われています.
 問題解決(演算決定)のための図として,二重数直線を調査しています.以下からどうぞ.

Q: 割合が算数嫌いの原因?
A: どうでしょうか.割合の難しさを克服するための問題集や教師向け書籍が出版されている一方で,「割合を勉強して,算数の面白さに目覚めた!」という子どもや先生は,書籍やネットを通じて見たことがなく,算数において「割合=難しい」という認識も,一応は納得できるところです.
 本記事も,実際のところ,割合が分かる(すらすら解ける)ようになるための内容を目指しているわけではありません.「どういった問題がよく出題されるか」という問題意識のもと,一つの観点(わり算の順序を問う問題)の収集・整理なのです.
 ところで個人的には,児童・生徒それぞれのテスト答案(マルバツ)よりも,解答者群を想定して共通の問題を解かせ,正解率・不正解率などを算出して比較したり,どのような典型的な不正解があったかを知ったりすることに,関心があります.その種の評価を外在的評価といい,教育評価論から見たかけ算の順序―若柳小学校事例の別考察で紹介しています.また研究室で準備した問題セットを,授業の履修生に解いてもらって集計し,「項目反応理論に基づく大学初年度向け情報リテラシー科目の理解度テスト分析」と題して学会発表をしたこともあります(20問の項目特性曲線).

Q:「小学2年生の段階で,かけ算の順番を気にするのは,わり算を見据えているから」を支持しますか?
A:なぜ数学的には決着している掛け算の順序問題が算数教育に限っては毎年のように蒸し返されるのですか?に対するKojima Tadashiさんの回答 - Quoraですね.大枠で,賛成します.
 日本の小学校の算数の指導について,個人的な理解は次のとおりです.導入の学年だけでなく,上の学年においてもです.

  • かけ算では,何がかけられる数で,何がかける数になるかを,明確に捉えたうえで立式するという指導がなされている.
  • わり算では,何がわられる数で,何がわる数になるかを,明確に捉えたうえで立式するという指導がなされている.

 それぞれの数に「かけられる数」「かける数」「わられる数」「わる数」と書くという指導ではありません.図にするなどして,それらに該当する数を見つけたり,先生やほかの子どもたちや自分が間違っているときには,なぜ間違っているかを言ったりすることが,授業に含まれているものと認識しています.
 かけ算とわり算との関連について,学術的には,国内外で引用されているVerguand (1983, 1988)を見ておきたいところです.ただし本記事では文献紹介は差し控えます.数学教育学関連の英和小辞典のconceptual fieldには,「概念領域」という訳語のあと,「Vergnaud の用語。例えば乗法なら、除法や乗法的な関係を含む場面など、関連した一連の数学的知識を一つの領域のように大きく捉えて、教育を考えていくアイデア。」という補足説明がついています.
 子どもに分かってもらえそうな,かけ算とわり算の関連性を,例示することにします.かけ算は,順序の強制か,意味の理解か - かけ算の順序の昔話の後ろに書いた例を使用します.

  • 「自動車が5台あります.どの自動車にもタイヤが4つついています.タイヤの数は全部でいくつでしょうか」という出題に対し,
    • 正解となる式は「4×5」です.
    • 「5×4」だったら,次の2種類の解釈(式の読み)ができます.
      • 5つのタイヤがついて「五輪車が4台」
      • 家に車が入った「5台ずつが4つ」
  • 「8mの重さが4kgの棒があります.この棒の1mの重さは何kgですか」という出題に対し,
    • 正解となる式は「4÷8」です.
    • 「8÷4」だったら,次の2種類の解釈(式の読み)ができます.
      • 4mの重さが8kgの棒の,1mの重さ
      • (「8mの重さが4kgの棒」はそのままで)「この棒の1kgの長さは何mですか」の答え