「ただいま〜.….誰も来んのか」
「パパから,そっちの部屋へ行くぞ.….うえの子は,勉強中か.学校から帰って,宿題せんと眠ってもて,今やってるんかな」
「パパなにもいわんといて!」
「ああ,すまんな.それよりも気になるんが,部屋の入口の,ブロックの並びやな…」
「ぱぱ,ぱぱ〜」
「すえの子登場か,ただいま」
「ただいま〜」
「いやそこは,おかえり,やで」
「ぱぱおかえり〜」
「ああはいはい」
「いまといれいっててん!」
「そんなん大声で言わんでええからな.で? このブロックを並べたんは,すえの子よ,お前か?」
「これなぁ,えきやねん!」
「(電車の駅,か?)」
「でんしゃが,こお〜んなにのびて…」
「(長くしたのは,線路のつもりか?)」
「ここがもうひとつ,えきでぇ」
「へえ」
「これ,おみせやねん」
「(えっと,ここは…お店で何を売ってるの,と尋ねるのが自然な会話の流れやが,すえの子が何か言いたがってるから,話に耳を傾けるか)」
「ぱぱ,おみせでなにうってるの,ってきいてや!」
「尋ねてほしかったんかい!! …じゃなくて,えっと,はい,お店で何を売ってるの?」
「たまごやねん」
「たまご…やさん??」
「たまごやきやで」
「ああ,これ,おままごとのフライパンやな」
「これを,こうして,こう!」
「おお…立派な卵焼きやな」
「ぱぱ,たべてええで」
「そっか,ほな,いただきま〜,じゃないんや.思い出した.ママは? 晩ごはんは?」
「さあ,しらんで」
「お前,ママに尋ねたときとおんなじ答え方するなあ」
「(がらがら)ただいま〜.パパ,帰ってたん?」
「あいよ,帰ってるよ」
「ごめんやで.ご近所さんとこ行っててん.さきの子ちゃん・あとの子ちゃんを連れて」
「そっか,ごくろさん」
「すぐ晩ごはん,温めるからね」
「はいはい頼むよ」
「あたしのたまごやきも,ぜ〜んぶ,たべてね!」
「このタイミングで,自分の世界に引き込むんか,すえの子は…」