「パパぁ,なにこれ?」
「すえの子よ,どした…これ,往復はがきやな」
「おうふくはがき?」
「あっちのおばあちゃんからやな…まあこんなん送ってくるの,実家の母以外考えられへんのやが」
「パパ,なにブツブツいってるの?」
「ああすまんすまん.これな,『往信』っちゅうのと『返信』っちゅうのが,くっついて,我が家にやって来たんや.我々は『返信』のほうに書いて,切り離してポストに入れなあかんのやな」
「へぇ」
「返信は,こっちな.あっちのおばあちゃんの住所と名前があるやろ」
「うん」
「でもってその裏は…すでにけっこう,書き込まれとるがな」
「なんてかいてあるの?」
「うえの子は,マル.さきの子は,マル.あとの子は,マル.すえの子は,マル…?」
「…」
「上には『ばんごうをかいてね』か.マルの中に,番号を書くらしいんやが…往信を見とくか.ふむふむなるほど」
「パパ,どうしたの?」
「あのな,近々,あっちのおばあちゃんが,こっちに来るやろ」
「そうやで! あたしの,せいかつはっぴょうかいに,きてくれるんやで!!」
「せやな.んでその際に,食べ物を持って来てくれるねんて」
「やったぁ!」
「その食べ物をな,ここ(往信)に書いてある4つから選べっちゅうことやねん」
「ふぅん」
「番号,言うていくで…1番.高島屋のエビフライカレー」
「それ! しってる!!」
「あっちのおばあちゃんとお前ら4人で,食べに行ったことあるんかな」
「そうやで」
「ふむ.次は…2番.ぺっちゃんこになったおにぎり.こらこら母さんよぉ…」
「なにそれ?」
「あれやろ.おでかけしたときに,お前らのうちの誰かが,おにぎりをズボンの後ろのポケットに入れてて,帰る前にそれが気づいてぺっちゃんこやったっちゅうやつ」
「そんなんあったなあ.さきのこやで」
「そっか.4択に,えげつないもん入れてきたなあ….気を取り直して,3番.特製お好み焼き.んでカッコ書きして,お好み焼き屋さんの名前も書いてら」
「おこのみやきなん?」
「これがええんか?」
「どうかなあ.おうちでも,おこのみやき,たべてるし」
「ホットプレートで作るんな.それはさておき,4番は…モダン焼き.おいおい.店の名前は書いてないけど,3番と同じよなこれ」
「パパ,もだんやきって,なになん?」
「焼きそば入りのお好み焼きや」
「そんなん,おうちでつくったことあるの?」
「ん〜,最近のホットプレートのお好み焼きには,焼きそば入れてないなあ」
「へぇ」
「ともあれ,1から4まで出揃ったんやが,すえの子よ,お前どれにする?」
「いちばん!!」
「はいはい.ほな,返信欄の『すえの子は』のここのマルに,『1』って書いときや」
うえの子,さきの子,あとの子に聞いて回ったところ,みな「1番」と答えました.すえの子が,すべてのマルに「1」を書き込みました.