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ななめの長方形と正方形

いきなりですが問題です.

小学校の運動場に太郎さんがいます.テント用のペグ(杭)を4本と,ハンマーを持っています.
スタート地点で,ペグを打ち付けました.そして東に6メートル,北に2メートルを歩いて,またペグを打ち付けました.そこから北に3メートル,西に1メートルを歩いて,3本目のペグを打ち付けました.さらに西に6メートル,南に2メートルを歩いて,最後のペグを打ち付けました.南に3メートル,西に1メートルを歩いて,スタート地点に戻りました.
ペグを打ち付けた4つの地点を結ぶと,どんな図形ができるでしょうか.またその面積を求めましょう.

解答の前に問題です.

小学校の運動場に次郎さんがいます.テント用のペグ(杭)を4本と,ハンマーを持っています.
スタート地点で,ペグを打ち付けました.そして東に3メートル,北に1メートルを歩いて,またペグを打ち付けました.そこから北に3メートル,西に1メートルを歩いて,3本目のペグを打ち付けました.さらに西に3メートル,南に1メートルを歩いて,最後のペグを打ち付けました.南に3メートル,西に1メートルを歩いて,スタート地点に戻りました.
ペグを打ち付けた4つの地点を結ぶと,どんな図形ができるでしょうか.またその面積を求めましょう.

次郎さんのほうから,解答です.できる図形は正方形です.面積は10平方メートルです.ただし,この図形の1辺の長さを知ることなく,計算ができます.というのも,次郎さんの歩いた軌跡は,1辺の長さが4メートルの正方形を描いています.求めたい正方形は,軌跡となる正方形から,3メートルと1メートルが直角を挟む直角三角形を4つ,取り除いた形となります.ということで面積は,4×4−3×1÷2×4=16−6=10により,求められるのです.
図は以下のとおりです.正方形であることについては,正方形・正三角形をつくるをご覧ください.

太郎さんが打ち付けた4本のペグでできる図形は,次郎さんの(4本のペグでできる)正方形を2つ,隣り合わせた形となります.図は以下のとおりです.

図形は長方形です.いずれの角も直角です.長辺の長さは,短辺の長さの倍です.
面積は,次郎さんの正方形の2倍ということで,10×2=20,答えは20平方メートルです.正方形が2つであることを使わないのなら,歩いた軌跡の長方形から,4つの直角三角形を取り除いた形と考えると,5×7−6×2÷2−3×1÷2−6×2÷2−3×1÷2=35−6−1.5−6−1.5=35−15=20によって求められます.三平方の定理からだと,短辺の長さが\sqrt{10}メートル,長辺の長さが2\sqrt{10}メートルですので,そのかけ算によって,面積は20平方メートルとなります.
画像生成のコマンドを書いておきます.画像の作成には,ImageMagickのconvertコマンドを使用し,格子点の座標計算には,Rubyワンライナーを入れています.引用符の中に引用符が入って,少々見にくいですが,bashおよびzshで動作確認済です.

convert -size 370x270 'xc:#f0fff0' -fill gray50 -stroke none -d
raw "$(ruby -e 'puts (0..5).to_a.map{|i|(0..7).to_a.map{|j|x=50*j+10;y=50*i+10;[:circle,x,y,x+4,y]}}.flatten.join(" ")')" -fill none -stroke darkgreen -linewidth 1 -draw "rectangle 10 10 360 260" -fill orange -stroke blue -linewidth 3 -draw "path 'M 60 260 l 300 -100 l -50 -150 l -300 100 Z'" -quality 93 taro.png

convert -size 220x220 'xc:#f0fff0' -fill gray50 -stroke none -draw "$(ruby -e 'puts (0..4).to_a.map{|i|(0..4).to_a.map{|j|x=50*j+10;y=50*i+10;[:circle,x,y,x+4,y]}}.flatten.join(" ")')" -fill none -stroke darkgreen -linewidth 1 -draw "rectangle 10 10 210 210" -fill orange -stroke blue -linewidth 3 -draw "path 'M 60 210 l 150 -50 l -50 -150 l -150 50 Z'" -quality 93 jiro.png


「正方形は長方形である」と「正方形は長方形ではない」について,集合を用いた書き分け(正方形全体および長方形全体からなる集合をそれぞれ,SおよびRと表したとき,「正方形は長方形ではない」はS≠R,「正方形は長方形である」はt∈S⇒t∈R)が個人的には好きなのですが,少し思案しまして,新たにPowerPointで図を作ってみました.

「背反的」と「包摂的」という言葉は,正方形でない長方形を持ってきてくださいで紹介してきました.2年における図形の弁別として,与えられた図形が正方形か,長方形か,四角形か,いずれでもないかを判断する際には,縦方向を見ます.4つの角がどれも直角*1の四角形というだけでは,長方形と結論づけることはできず,隣り合う辺の長さが異なること---上述の太郎さんの事例のように---,そして正方形でないことを,確認する必要もあります.
論証においては,横方向に見ます.着目する図形が正方形であれば,2本の対角線の長さが等しいといった長方形の性質や,4つの角の和が360度になるといった四角形の性質を用いても,差し支えないのです.
高学年で学習する四角形の関係は,次のように表せます.

ともあれ,この可視化が万能であるとは思っていません.「背反的な見方」と「包摂的な見方」を,1枚の図で表現できるというだけです.wikipedia:四角形の分類で描かれている図を,この三角形モデルで表現するのは,難しそうです.

*1:太郎・次郎の打ち付けたペグによる,「ななめ」の長方形・正方形について,三角形の内角の和を活用して,どれも直角と推論できるのは,5年の知識です.2年では,三角定規または何らかの「直角」を持つ物体を,「ななめ」の図形の角に当てはめ,直角であると判断することになります.