いきなりですが問題です.以下の(15)から(20)に当てはまる語句を答えてください.同じ番号には同じ語句が入ります.
暗号(15)とは,暗号技術が使われている(15)の総称であり,ビットコインやイーサリアムがその代表的なものである.分散型暗号(15)の基盤となる技術がブロック(16)である.順序付けられたブロックのリストで構成されており,一度記録すると,ブロック内のデータを遡及的に変更することはできない.ビットコインの管理対象は(15)すなわち金銭のみであり,Bitcoin Scriptは(17)完全でないよう設計されている.それに対しイーサリアムは,(17)完全なプログラミング言語が使えるほか,任意の帳簿を載せることが可能となり,利用の幅が広がったと言える.ビットコインおよびイーサリアムではブロック追加の方法として,Proof of Work (PoW)が採用されており,(15)を得るため世界中で多数の計算機が(18)を行っている.ブロック(16)の運用形態は,「パブリック」「(19)」「プライベート」の3種類に大きく分けられ,ビットコインもイーサリアムもパブリックなブロック(16)である.他の2つの運用形態について,参加する計算機は限定されるが,合意形成が短時間でなされるという点でパブリックよりも優位に立つ.この特性を生かして,金融のほか,医療や(20)での活用が期待されている.
昨日実施の試験問題の一部です.さっそくですが解答例です.
- (15)通貨
- (16)チェーン
- (17)チューリング
- (18)採掘
- (19)コンソーシアム
- (20)農業
この中で最も気を配ったのは,(19)です.実のところ,「コンソーシアムブロックチェーン」という単語を知っているのは,重要ではないのです.パブリックでない,ブロックチェーンの運用形態があることを,授業で解説しましたので,試験を通じて確認したかったのです.
ところで,パブリックの反対の言葉として,容易に思い浮かぶのは,プライベートです.もし,問題文を“…ブロック(16)の運用形態は,「パブリック」「コンソーシアム」「(19)」の3種類に大きく分けられ…”としたのなら,3つの運用形態の違いをきちんと把握していなくても,「プライベート」と書く答案が,多くなると考えられます.といったことを考えまして,「コンソーシアム」を解答してもらいました.
(20)について,授業では以下の件を紹介しました.
そして暗号通貨の授業資料は,「金融,農業,医療での活用が期待されている.」で締めくくっていました.ということで授業をきちんと聞いていれば,(20)に書くのは「農業」となるのですが,この問題には別解を想定していました.採点すると,「教育」「福祉」「行政」を,何人かが書いていました.いずれも○にしました.「地域」や「産業」は,「金融」「医療」のあとに書くのに違和感があり,△にしました.
(18)は「マイニング」も正解です.採点していくと,まったく異なる語句を正解とせざるを得ないことに気づきました.具体的には「攻撃」です.「通貨を得るため世界中で多数の計算機が攻撃を行っている」を,間違いとするわけにはいきません.
今年も試験の大問1は,3つの段落で穴埋め20問です.最初の段落は一方向ハッシュ関数,2番目の段落はDiffie-Hellman鍵交換とその周辺,そして最後の段落は上記のとおり暗号通貨について,いずれも文章を新たに作成しました.
2番目の段落の内容まで正解続きだったのに,(15)以降が壊滅的な答案を,よく見かけました.そのほか,(15)に「プロトコル」や「スイート」,(17)に「NP」を書く誤答もかなりありました.過去問対策の弊害,でしょうか.