「パパぁ,餅つき機,1階に運んでよ~」
「…へいへい,行くよ」
「あとこれも」
「…お重かいな.餅つき機と同時に運ぶのは,ちょっと危ないかな」
「お,あとの子がおった.すまんが,重箱だけ,持って降ろしてくれるか」
「いいよ」
「おはよう」
「うえの子よ,おはようさん」
「何それ?」
「朝ごはん食べたら,機械で餅つきするんやからな」
「やなくって,あとの子が持って来た,ちっさい箱のほう」
「ん? この中は,重箱なんやが.おせち料理を入れる」
「あそっか!」
「お正月は,『おせち』やもんね!」
「ま,重箱の使い道といえば,まず思い浮かぶんは,おせち料理やが…」
「…」
「そのほか運動会なんかに,重箱に料理を入れたのを持ってって,昼食のときに食べたりしたなあ」
「へえ」
「あっちのおばあちゃんは,よお,重箱に,『おはぎ』を入れてたぞ」
「あとの子よ,お前,あっちのおばあちゃんのおはぎ,食たことあるか?」
「う~ん,ないなあ」
「そっか.お重のな,1段分に,3×3で9個のおはぎを入れるのが,基本やったな」
「えっ…1個分,おっきくない?」
「せやで,でかかったよ.あと,あっちのおばあちゃんの作るおはぎは2種類あって…」
「一つは,外が餡,中がご飯のおはぎ」
「もう一つは,外がきな粉で,中はご飯やけど,その中に餡が入っとんねんな.これ食たら,喉が渇いてしゃあなかったな!」
「パパそんなん食べてたの?」
「2個も食べたら,腹一杯になってたけどな」
実家の母が作っていた,おせち料理に欠かせないのが,棒鱈です.3段の重箱の最下段は,棒鱈の煮物オンリーでした.