「(階段を降りながら)しくしく...」
「あ,テーブルに,妻と子どもがおるな」
「(妻子に聞こえるように)なあなあ…」
「パンダのカップに入れてなかったんやけど…」
「プリンタの横に置いてあったキャンディ,大きな袋だけになってたんやが,心当たりのある人は?」
数秒間の沈黙ののち
「4つぶ,うち食べた!」
「さきの子か,正直に言うてくれたな」
「あたし,0つぶ!」
「(あとの子の反応は,本当かウソか,判断しにくいなあ...)」
「あたし,1つぶ! ...と」
「と!?」
「ママにも1つぶ!」
「すえの子よ,なるほど,ママにあげたんか」
「ママそんなんもらってないで」
「え,どないなっとんねん」
ところで悲しいときに「しくしく...」と言うのはいつものことです.コップに3分の1ほど水を入れて飲んでしまい,「しゃあないなあ,しくしく...」と言いながら,階段を上って自分の部屋に行き,大きな袋の中身を見ると,1粒だけ,キャンディが残っていました.無言で,口の中に入れました.