ある朝.
「ママよ,ほな行ってくるが…」
「気をつけてね」
「たしか今日は,迎えに行かなあかんかってんな,保育所まで」
「そうやねん.行けるかもしれへんけど,何かあったら電話するわ」
「まあ,たまには保育所へ迎えに行って,さきの子・あとの子・すえの子と歩いて家まで帰るんも,ええかな」
「パパ,ダイエットやで」
「へいへい.ほな行ってくるぞ」
その日の夕方.いつもと違う駅を降りて,保育所まで歩き,角を曲がり,正門まであとわずかというところで,車から降りる妻の姿が,目に飛び込んできました.
「お〜い!!」
「あ,パパぁ!」
「間に合うたんやな」
「せやねん.一緒に保育所に入って,お迎えしょっか」
「へいへい」
そして車内へ.
「パパ,ガム」
「パパはガムではないんやが」
「パパ,ガムください!」
「ガムください!」
「うるさいなあ.えっと,ボトルガムは…こっちか.手ぇ出しな」
「やったあ!」
「さきの子やな.ありがとうやで」
「パパ,あ・り・が・と・お♪」
「パパ,あ・た・し・も♪」
「あとの子よ,はいはい」
「あ・り・が・と♪」
「それでええか.ほな出発するぞ…」
「パパぁ」
「ん?」
「パパぁ,あたしも!!」
「すえの子,なあ…(1粒取り出し,半分に噛みきって),これ噛み」
「ん? 取ったんは,あとの子やな.すえの子にちゃあんと,渡したってや」
「ほな車を走らしてええか…」
「パパぁ」
「ん? すえの子よ,もろてないんか?」
「ない!」
「あとの子よ,どないした?」
「ないで!」
「(あとの子のほっぺたの膨らみが大きい…口に入れおったな)あとの子よ,お前,すえの子の分,噛んどんのか?」
「ちがう!」
「どないなっとんねん」
「誰かがウソをついとんのか? すえの子か?」
「ちがう,あとのこちゃん!」
「(相変わらずお姉ちゃんと認めてないっぽいなあ…それはさておき)ほなウソついたんは,あとの子か?」
「ちがう,すえのこ!」
「おっかしいなあ.質問を変えてみよか.すえの子は,食てへんねんな?」
「ちがう,あとのこ! あとのこぉ!!」
「(呼び捨てになっとるぞ…)あとの子よ,どうや?」
「ちがう,すえのこ!」
「違う質問に,2人ともおんなじ答えかよ…まあ,すえの子がガムをもろてないんは事実やねんから,しゃあない,1粒やる.よお味わえよ」
結局あげました.
去年の春は,うえの子:ガムほしい