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整然と配列された物の個数をどう求めるとよいか

 いきなりですが問題です.次の直角三角形の面積を答えましょう.式は不要です.答えに「約」をつけるべきでしょうか?

 さっそくですが解答です.底辺も高さも4cmなので,面積は4×4÷2=8で求めることができ,答えは「8㎠」です.斜辺の「約5.7cm」は,使用しません.
 さて,「約8㎠」と書くべきか否かですが,底辺と高さが概数でないのならば,面積も概数ではないので,「約」はつけるべきでないと言えます.
 元ネタは,平成3年度全国学力テスト小学校算数大問2の(1)です.辺の長さが3cm,4cm,5cmで構成される直角三角形の面積を求めるという出題で,式と答えの両方を正解したのは55.9%とのことです.解答類型を見ると,式に,斜辺の長さの「5」を含むのは30%近くありました.なお,「約」をつけて長さを提示し,その値を使って面積を求めるという問題は,全国学力テストには見かけません.
 続いてですが問題です.次のように並んだ○の個数を,かけ算を使って求めることにします.

 底辺と高さが5個の三角形と考えて,5×5÷2=12.5と計算し,「答え12.5個」でよいでしょうか?
 さっそくもなにも,よいわけありませんね.“小数”個が答えになるのは,おかしいです.
 「5×5÷2」を生かしながら,正しい答えが得られるよう,囲みを設けることにします.

 青で囲った部分の面積は,5×5÷2=12.5で求められます.ここで斜辺に着目すると,○の5つを,真っ二つに割っているように見えます.
 真っ二つの残りを囲ったのが,赤の囲みになります.面積が1×1÷2=0.5で求められる直角二等辺三角形が,5つあります.
 ということで○の個数は,5×5÷2と,0.5×5を合わせればいいんだよねと考えて,5×5÷2+(1×1÷2)×5=12.5+2.5=15と計算すると,「答え15個」になります.1個1個数えれば,合っているのが確認できますし,この求め方は,直角二等辺三角形の○の並びを維持したまま,底辺・高さの数を変更しても,適用できます.
 ここまでの元ネタの一つは,階段状の面積比較です.
 3番目の問題です.次のように並んだ○の個数を,かけ算を使って求めることにします.

 ここで颯太(そうた*1)さんは,三角形の並びと考えて,底辺は7個,高さは4個で,7×4÷2=14と計算し,「答え14個」としました.これでよいでしょうか,というと,もちろん間違いです.○がいくつあるか数えると,16個です.
 日和(ひより)さんは,台形の並びと考えました.「(上底+下底)×高さ÷2=台形の面積」に当てはめます.上底は,最上段の1個,下底は,最下段の7個,高さは4個で,(1+7)×4÷2=32÷2=16と計算し,「答え16個」としました.なぜこれで,正解になったのでしょうか.
 とっとと,求め方です.台形がわかるように囲むと,次のようになります.

 ○を網羅していますが,○全体がこの青の囲みに入っていない箇所もありますし,○のない単位正方形もいくらか,入ってしまっています.
 とはいえ,1個,3個,5個,…という並びにおいては,「(最上段+最下段)×高さ÷2」で求めることができます.次の図で,確認することができます.

 青の囲みと赤の囲みは,合同な台形です.これを結合すると,平行四辺形の形状になります.どの段も1+7=8個の○があり,高さは変わらず4です.ということでこのときの中の○の数は,1つ分の数×いくつ分=8×4=32個で,青の囲みに限るとその半分なので32÷2=16個というわけです.
 高さが偶数のときは,また別の囲み方でも,同じ式で求められます.

 青の囲みの台形と,赤の囲みの長方形は,面積が等しくなります.赤の面積は,縦が2,横が7+1=8で,横×縦に当てはめると(7+1)×2という式で表せます.かける数の2は,高さ4の半分と見なすことができ,(7+1)×4÷2=以下同様となります.
 3番目の問題は,以下の本のpp.50-51の内容に着想を得ました.

 図2-1 (p.50)の見出しは「整然と配列された物の個数をどう求めたか」で,○の並びを,長方形・直角二等辺三角形と対比しています.図より上の本文では,三角形の求積公式ではうまく行かないことを説明しており,次のページでは,台形の求積公式のほか,等差数列の和の式\displaystyle S=\frac{n(a+l)}{2}が書かれています.

*1:平成3年度全国学力テスト小学校算数の大問3の問題文に,「そうた」「ひより」という名前の人物が出現します.領域はB図形ではなくDデータの活用です.