わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

階段状の面積比較

 いきなりですが問題です.次の2つの図形で,塗りつぶされた領域の面積が大きいのは,どちらでしょうか.

 元ネタです.

  • 青山尚司: 提案する姿, 算数授業研究, 東洋館出版社, No.143, pp.30-31 (2022).
  • 青山尚司: 授業報告 5年面積「比べる学び」の系統性を軸として,面積の指導を見つめ直す, 算数授業研究, 東洋館出版社, No.143, p.46 (2022).

 階段状の図形です.底辺と高さは等しく,段数が異なっています.ところでこれらの図形は線対称であり,また小学校算数で正方形や長方形の面積を考える際には「1辺」「縦(たて)」「横」といった用語を使うのが一般的です.しかしながらあとで述べるように水平方向と垂直方向の区別があると分かりやすいので,「底辺」「高さ」を活用していきます.
 また左の図形を「4段」,右の図形を「5段」と呼ぶことにします.なお原文はモノクロで,「5段」の塗りつぶしが濃くなっています.授業では,はじめに「多くの子が5段の方が大きいと判断した」(p.30)けれど,「自己解決後の話し合いで,多くの子は面積が同じと考えている」(同)に移行し,p.31には,納得の方法で,4段の方が大きいことを示しています.
 ところでこの種の図形の「周りの長さ」に関しては,過去に記事を作っています.今回は「面積」です.

 「納得の方法」を見る前に,自分なりに頭の中で検討してみました.階段状の図形について,段数を変えて,極端な場合を考えてみます.「1段」は,底辺・高さによって決まる正方形そのものです.段数を十分に大きくすると,直角二等辺三角形に近似でき,そうすると面積は,「1段」の半分です.
 ということで,段数が増えると面積は小さくなり,4段のほうが,5段よりも面積が大きいと推測できます.
 小学5年までの学習内容で,大小を比較するには…「塗りつぶされた割合」が,思いつきました.以下のように,補助線を引きます.

 ここから,「1段」の面積を1としたとき,4段の塗りつぶされた割合が求められます.(1段の4分の1のサイズの)正方形16個のうち,10個が塗りつぶされているので,割合は\frac{10}{16}と表すことができ,小数にすると0.625です.
 5段も同様に,塗りつぶされた割合を求めますと,(1段の5分の1の)正方形25個のうち,15個が塗りつぶされているので,\frac{15}{25}と表され,0.6です.
 もとの大きさ(「1段」の面積)が等しいなら,塗りつぶされた割合が大きいほど,面積も大きくなります.ということで,4段の面積>5段の面積が言えました.
 算数授業研究No.143に目をやりまして,なるほどこれが,「5年面積」への導入になっているのかと,驚きました.以下のようにします(p.31をもとに作成).

 4段の図形を複製して2つにし,ギザギザの部分を噛み合わせて,長方形にします.5段の図形も同様です.
 そうすると,底辺は等しいのですが,高さが異なります.計算しやすいよう,「1段」の正方形の1辺の長さを20cmとすると,「4段」の内部の小さな正方形1個の1辺の長さは20÷4=5cmで,上の長方形の高さは,5×(4+1)=25cmです.「5段」も,求めますと,小さな正方形1個の1辺の長さは20÷5=4cmで,2つを合わせて長方形を作ったときの高さは4×(5+1)=24cmです.
 面積を求めておくと,「4段」は,20×25÷2=250㎠,「5段」は,20×24÷2=240㎠です.
 この考え方が,三角形の面積の公式の「底辺×高さ÷2」を導く際に,使えるというわけです.