某年月日,夕食の皿には,チキンステーキが乗っていました.
味も,ついているようです.ナイフとフォークでカットするか,かぶりつけばいいのですが,テーブル内にナイフとフォークは1セットだけです.
めいめい席につくと,皿はあるけれど,一人分,ぽっかり空いています.
「あれ,すえの子は?」
「今日,塾やん」
「そっか,ほなら帰ってから食べるんか?」
「あのね,ランチパックとか,食べるもの持たせてんよ」
「ママか,そうなってるんか.ほならチキンステーキの乗ったその1皿は…?」
「おばあちゃんがね,人数分,作ってしもてんて.食べたい人,食べてええよ」
「(パパは遠慮しとこか)」
「はーい!」
「うちも!」
「(威勢がいいなあ)」
「自分のお皿の,全部食べてからやで,野菜もな!」
そうこうして,先に自分の皿の鳥や野菜を食べ終えたのは,あとの子となりました.
すえの子の分の皿を,手元に運び,ナイフを左手,ではなく右手に持ち,フォークは左手で…
「さきの子も食べたいっちゅうから,半々にするねんな」
「そ」
「こういうとき『わけわけ』って言うてたもんやが,これは幼児言葉やな.もおお前ら,中学生やからな」
「…」
「ところでさきの子よ,あとの子が切るの,見とかんでええんか?」
「え!? …あ,見とく」
「….パパ,余計なこと言わんといてよ」
「余計なことやったか.すまんの」
「じーっ」
「そんなこと言わないの」
無事に2等分して,それぞれ箸で取って食べていきました.