「困ったときのアドバイスはしますが,システムの実装など,『本体』となるものは,各自で行ってもらいます.
『柱になるもの』『中心となる成果』などとも言います.『一本,筋を通す』と言うこともあります.不完全でも,作ってみると,それを改良するのは,手間がかからなかったりします.
『0の状態から1のものを作ること』は,『1のものを100にすること』よりも,難しいのです.そしてそこに,研究の価値を見出すことができます.
さてみなさんが活動を行い,『一応動くもの』が出来上がったときに,それが『中心となる成果』として十分なのか,卒業研究の成果たり得るのかが,気になってくるかもしれません.
これについては,ミーティングで包み隠さず報告してください,というのが現時点でできるアドバイスです.
成果物が,『柱』『卒業研究の中心となる成果』になるかどうかは,教員が見て判断します.これまでの研究室内の先輩方の実施や,卒業論文発表会の他の研究室の状況を思い浮かべながら,ミーティングで報告してもらう内容が,十分よいものか,足りない場合にはどこを埋めていけばよいかは,その都度,こちらよりお知らせするようにしたいと,考えています」
補足
学生向けに見せたスライドには,「「0から1」は,「1から100」より難しい.」と書いていました.
これについて,「自分の研究」と,「あらゆる研究」の2通りの見方ができます.「自分の研究」というのは,上で書いた言葉を使うと,「一本,筋を通す」までにコストがかかるけれども,ひとたび「筋の通ったもの」が作れたら,それをより良くするためのコストは決して高くない,ということです.
「あらゆる研究」では,「0の状態から1のものを作ること」は「無から有をつくる」と言い換えます.何もない状況から,その後の多くの研究に派生するような成果を挙げることです.ただし,1つの文献だけを見て,「無から有をつくった研究だ」と判断するのは難しく,前後の時期や関連する分野の研究動向に基づき,その分野で解決されてきたことが明確になってから,「無から有をつくった研究」とみなされます.
「無から有をつくった研究」は,研究室内の修士論文・卒業論文においても,発生することがあります.後輩たちが引用します.