車内で.
「後ろが静かになったんやが」
「すえの子ちゃんね,寝たんとちゃうかな」
「そっか.しかし空港までの電車でも,飛行機でも,眠れると思うんやが…」
「早すぎるよぉ」
「まあなあ」
「あ,思い出した! 私が起きて,廊下を歩いてたら,出てきたんよ」
「…」
「茶色い,あれが!」
「名前を言ってはいけないあのゴキブリやな」
「言わないの! まあそうやってんけどね」
「んで退治したん?」
「スリッパ,手に持って,叩いたら,飛んでった」
「ああ,廊下で妙な音がしたのは,それやったんか」
「家の中にいるはずやから,見つけたら退治しといてや」
「ほいわかった…思い出し話といえば,すえの子かな」
「なんかあったん?」
「ママが寝間から出て,10分ほどして,パパが寝間に行って,起きなあよ,旅行やろっつったら,まあ反応はしたんよな」
「すぐに起きれやんやろ」
「せやねんなあ.パパは自分の部屋に戻って,PCのほう見てたら,ドアが開いて,すえの子がやってきてやな…」
「おはようって?」
「ちゃうねん.『ママ,パパは?』って言い出すねん」
「え? …え,ちゃうよね.『パパ,ママは?』ってこと!?」
「パパも戸惑ってやな,3秒ほどしてから,そのツッコミをしたらな,すえの子も,『あっそうや』って言うて,んで部屋を出て,1階へ降りてったんやな」
「かいらしなあ」
「ところで,この信号を左に曲がって,まっすぐ進んだら,和歌山駅の東口に着くんやが…そろそろすえの子,起こさなあかんのとちゃうかな」
「そうやね.ママが起こすよ.すえの子ちゃ~ん」
某年月日,貴志川線の始発も走っていない,早朝のことです.ママとすえの子の2人で,泊まりがけの旅行に出かけました.
パパ(自分)は,和歌山駅まで送っていきました.