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『学力低下は錯覚である』の本筋でないところにツッコミ(1)

学力低下は錯覚である

学力低下は錯覚である

統計や,モデル(イメージ図)を示し,「学力が低下して見えるのは,少子化に連動して大学の定員が減っていないからだ」(p.39)という主張には説得力があります.
「理工系離れ」の実情や,文系・理系の出身による収入の違いの原因なども,興味深い内容でした.
ただ,本筋ではないところで,どうも気になったところがあります.何回かに分けて書きます.
最初に取り上げたいのは

筆者は,数学のほかに,C言語による簡単なプログラミングや,情報セキュリティの基礎的な部分を教えたりしている.
(略)
しかし,半年間講義をして,試験をしてみると唖然とする.たとえば,「nを入力して,1からnまでを足すプログラムを書きなさい」という問題に解答できる学生は,せいぜい2割である.残りはめちゃくちゃな答であるか,全く手をつけていない.アルゴリズム云々以前の問題である.
(p.13)

で,ここの「nを入力して」という表現から,著者はプログラミング教育を軽視しているのではないかと思わざるを得ません.
入力する主語は何かについては,この日記で何度か取り上げています*1が,そこよりもむしろ,上の設問から,scanfの使用を暗黙のうちに仮定しているなと読めたのです.scanfは安易に用いてはならない関数の一つです.少し前なら入力の取り方と言えばこれを覚えればよく,Cの入門書では比較的早い段階で登場していましたが,最近は取り上げないほうが主流といっていいでしょう.
そういった動向を押さえずに,「古典的な問題で,できて当たり前」という意図が透けて見えまして,これについては,同業者として「それは教授者の怠慢ではないですか?」と指摘するとともに,自戒もしたいと思います.