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GPAとシラバスと成績評価

(おことわり: この記事は,8月11日に登録しています.11〜12日は1泊2日の旅行に出ておりまして,12日のうちに帰宅できる保証がないので,先に出しています.内容も,落ちがついていません.)

消える大学 残る大学 全入時代の生き残り戦略

消える大学 残る大学 全入時代の生き残り戦略

著者は米国の大学で研究者,教育者,そして大学運営に関わり,日本では桜美林大学で教学担当副学長として大学改革に携わった方です.本の題名は煽りで,著者経験に基づき,また日本の教員・職員・学生事情を見据えながら,地に足をつけた経験と提言を綴っています.
GPA導入による学生への影響も,分かりやすく書かれています.そのポイントが2を下回ったときに,次の半期で習得可能な単位数の上限が「下がる」理由として,単に科目を絞って頑張れというだけでなく,バイトその他の学業以外に時間を割くことを認めるという考え方があることには,驚きを覚えました.
私の大学ではGPAは採用していませんが,単独または複数人で授業を計画し,実施し,評価している者として,以下の文章は,痛いところを突かれた気分でした.

最近私は,日本を代表する巨大大学の教員・職員二百五十人ほどを対象とした講演会に招かれました.テーマは「GPAとは何か」.この巨大大学が,GPA導入に向けて一歩を踏み出したわけです.
(略)実は自分の判断が最優先になる絶対評価のほうでやりたいのだが,という気持ちがこめられた「GPAは相対評価なのか?」という質問になるわけです.
この質問に対して,私は次のように答えました.
「とんでもない.大学生の評価に相対評価はありません.評価は先生方,皆さんの教育権の範囲,権利です.成績の出し方まで大学はとやかく言いません」
(略)
「ただし,ここからが大事なのですが,必ず学生から,自分の成績はなぜこの評価なのか,その評価基準は何か,というクレームや問い合わせがきます.それにしっかり答えるだけの,評価の根拠と基準を決めておき,それを学生たちに周知しておくことが必要です.そのために,シラバスがあるのです」
(略)
シラバスというのは,学期初めに授業を始める前に,教員と学生の間で交わす契約書です.その内容は,まず授業の展開の仕方,こういう授業をすることを教員としてあなた方学生に約束します.
そして,私は教員としてあなた方学生にこれだけのことを要求しますから,これだけのことを理解してくれたら,こういう成績になります.
成績の付け方はこういう根拠と基準でやります.以上のことをシラバスとして公表するのです.
もしかすると,手術する前に医師が患者に行う『インフォームド・コンセント(説明と了解)』に似ているかもしれません」
(略) どうやら,GPAが導入されると教員の絶対評価は生き残るけれど,自分の好き勝手ではない,誰もが納得する評価基準を持ち,その評価基準でこそ評価ができるような授業を展開しなければならないということがリアルに分かってきたようです.
(pp.161-167)