- なぜ多くの日本人がnull/NULLをヌルというか
- C言語の規格で,NULLはどのように読まれるべきか
- 大学の情報教育において,null/NULLはナルと呼ぶべきか,それともヌルか
本日は3番目の項目を取り上げます.
教育的な観点で,「ナル」か「ヌル」かについて,検討すると,こんな感じですかね.
- 研究室や会社でのコミュニケーションでは「ヌル」になるであろうことに,異論は唱えません.ただ,規格や語源として,英語のnullがあるのですから,齟齬があったときに,お互いに確認し,同意すればいいのです.また,外国人との英会話ならおそらくは「ナル」の発音になるでしょう.しかしそこで,皆がnullを「ヌル」と発音するのなら「ヌル」でいいわけです.
- 本で調べたいときには,教科書『入門以前』を引きますか? 根源的な話になればなるほど,“原典”に当たる必要性が出てきます.JIS X 3010の索引(知る限り,本文にも)に「ヌル」がないことは,知っておくべきでしょう.
- 世の中は「ヌル」なのに,なぜ先生は「ナル」と言うのだろう…という問題意識がもしあれば,大学の先生が,一般的でない表現を自身の信念により(つまり一般的な表現を承知していて,その上で)とることがあるのを,理解しておきましょう.個人的には,Carmichael numberのことを必ず「カーミカエルナンバー」とおっしゃる先生がいました.セキュリティの書籍(当然,和書)ではいずれも「カーマイケル数」です.そういう独自に妙なことを言うものについては,後で気づいて…その日に復習したときか,社会人になってからになるかは,分かりませんが…自分の心の中で修正すればいいのです*1.
余談
- 初回に『学生さんも,ヌルと言ったり,答案に書いたりしていいことにしますか…』と書きましたが,自分の科目では,ヌルと書いて×や減点にしたことはありませんし,今後もしないと思います.
- それどころか,かつて,授業でも,よく用いられているという理由で「ヌル」を使っていたことがありました.教科書を導入した2007年度から,教科書の語句を優先し,「ナル」と言っているのです.
- 研究室では,Java,PHP,SQLの中でよく見かけます*2.学生とのコミュニケーションでは,特に区別することなく,「ヌル」と「ナル」を同じくらい使っています.
- これも初回に,『「nullはドイツ語(もしくは,ラテン語)に由来する.だから,ヌルと呼ぶのである」と,大学で教わった人がもしいれば,お知らせください』と書きましたが,自分が大学生のとき,データベースの授業の中で,「英語だとナルですが,ドイツ語ではヌルというんですよ」とおっしゃっていたのを覚えています.しかしこれも,SQL文で使用するNULLをヌルと呼ぶべきかナルなのかという問題の答えを与えていません.ちょっと調べたところ,SQLに関する日本語の規格はJIS X 3005のようで,3005-1 02の中に頻繁に「ナル値」という語句が出てきます.