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研究を向上させる,3つの人間関係

プレゼン コメント 2009-5の「親モード,おじさんモード」を,リライトしてみました.
あなたの研究を向上させる,3つの人間関係として,「母」「おじさん」「きょうだい」を挙げてみたいと思います.

まずは,母です.「おかあさん」といった柔らかいものではなく,「母」の一字,声にするなら「はは」という同音2音節が,しっくりきます.
学生の研究で言うと,指導教員です.
テーマを与えるのは,母です*1.そのテーマが,何らかの理由で良くないと分かると,軌道修正を図るか,テーマを丸ごと変えるか,そのまま突き進めさせて対外的に何かあったときには擁護に回るか,まあいろいろです.
学生=我が子の「成長」と「成果(が出ること)」に,誰よりも関心を持ちます.学生=我が子と同一視している教員も,いるかもしれません.
細かいところに目がよく行き届きます.ゼミ発表を,多くの先生や学生の前でするにあたり,事前指導しようものなら,誤字・脱字に誤変換から始まって,専門用語の選択,未定義の語句,図表のレイアウト,スライドの構成,アピールの仕方などなど,事細かく口出しします.
身なりを見て,服にへんなシミとかシワとかついていないか,着こなしは問題ないか,タンスにしまっているあのアクセサリをつけたらぐっと見栄えがよくなるかも,ってな親心です.
ときにはその指示の間で矛盾することもあります.そして子供=学生がそれに気づき,困惑することもあります.「これと,さっき言ってたこれやけど…」と弱気に言おうものなら,何倍もの勢いで跳ね返されます.仕方がないので学生は,心の中で折り合いをつけて,研究を進め,発表をすることになります*2

おじさん

次は,「おじさん」です.親戚でも,血縁のない近所のおじさんというのでもかまいません.
学生の研究で言うと,副指導教員だったり,研究室・研究グループ内の,指導教員以外の先生だったりします.
なお,教務上の指導教員は教授で,副指導教員だけど実質的な指導教員がいるという場合には,実質的なほうが「母」になります.教授はというと,おじさんではないのですが*3,説明するのが難しい位置付けになります.
ともあれ「おじさん」に話を戻しますと,その行動は,信念に基づくタイムリーで的確なアドバイスです.(逆に,教授がそういう発言をされていたら,おじさんという位置付けでいいと思います.)
母親は子供と向き合いながらあら探しをしたり,本番では失敗のないように大恥をかかないようにとハラハラドキドキしたりしているのに対して,おじさんはときにはその子供の目や表情を見て,ときにはその子供と同じ方向を見て,褒め,叱ります.
着こなしやアピールポイントを押さえつつ,あれこれ,やきもきする親よりは少し距離を置いて,立ち振る舞いを見せてもらおか,ちょっと肩を押したり,裾を引っ張ったりしても,崩れることはないよな,といったところです.最初の発声が「どや?」だったりするのも,おじさんの特徴ですね.
しかしどうも自分の言うことを聞いてくれそうにないときには,子供のいないところで,その子の母に苦言を呈することもあります.たいてい母は「ごめんなさいね,行き届かなくて」と,社交辞令的に謝ります.
おじさんはおじさんで,子供の成長と成果を期待していますが,そこに責任がないという点で,母と大きく違います.

父やおばさんは?

3番目の人間関係に行く前に,補足を.
「母」と「おじさん」は,上のとおりとして,では「父」や「おばさん」に象徴される人間関係が,研究においてあるのかですが…
母・おじさんほどの「立ったキャラ」として登場させるのは難しい,と考えます.
というのは,父はあるときには母に似た振る舞いをし,あるときはおじさんに近くなるからです.
おばさんも同じです.

きょうだい

最後に「きょうだい」です.兄弟姉妹だけでなく,いとこや,歳の近い親類を含めてしまいましょう.
研究では…研究室の他の学生です.先輩・後輩,同学年,これまたいろいろです.
基本的には遊び仲間です.研究で成果を挙げろという先生のハッパをときには無視する形で,おしゃべりをしたり,飲み食いしながら騒いだり,カラオケで騒いだり,帰り道で騒いだり…あれれ騒いでばっかりだ,ともあれわいわい楽しく過ごしています.
面白いモノを持ってきたら,そこに群がります.世の中あるいは研究室内の流行には,敏感です.モノというのは,研究と全く関係のない玩具や漫画やテレビゲームということもありますが,研究費で購入した高性能PCかもしれませんし,各自がインストールして使うようなフリーソフトウェアかもしれません.
きょうだいは,ライバルです.ゼミ発表を聞くときは,研究の進め方よりも,結果に関心を向けがちです.ただ,インパクトのある成果を示すべきだという点で,そういう読み取り方は一概に否定できません*4.結果以外には,(PowerPointの)テンプレートの美しさや,挿絵の配置・配色に関心を持ったりします*5
研究について,アドバイスをすることが,ないわけではありません.年上から年下へ,研究室で言うと先輩から後輩への助言は見られます.その中には,母やおじさんにはできないものも,あったりします.
きょうだいの重要な点は,おにいさん・おねえさんの行動を参考にできることでしょう.研究室で言うと,学年進行,そして卒業や就職に対応します.就活大変やなあと聞いていて,1年後には自分がその大変なことをしているわけです.そして後輩がそれを見ています.「生き方」を知るということに関しては,母やおじさんの経験談よりも,はるかに参考になります.

まとめ

三者を比較できるよう,表にしてみました.

責任 期待 楽しさ
最大 最大 あなた次第
おじさん 皆無 けっこう大 あなた次第
きょうだい 皆無 あなた次第 あなた次第

この表は,あなたから見た,研究室における母・おじさん・きょうだいに相当する人の評価ではなく,逆すなわち,研究室における母・おじさん・きょうだいに相当する人から見た,あなたの評価です.
そこに注意すると,「あなた次第」の意味は,分かりますよね?
「あなた次第」のところが「満点大笑い」になるかどうかは,あなたの努力・行動によるのです.では研究がんばってください.
[翌日あれこれ書き換えました.]

*1:学生が自主的にテーマを設定した場合でも,それをチェックする役目があります.

*2:やや否定的なニュアンスの文ですが,しかし「あなたのする研究」は「指導教員のお仕着せ」であってはいけないので,自分なりの態度を持つというのは,大切なことです.

*3:かといって,おじいさん・おばあさんというわけでもありませんね.

*4:それに対して,母は目的にもプロセス(過程)にも結論にも,等しく口出しをします.おじさんは,自分の持っている価値観や時代の趨勢に基づいてアドバイスをするので,子供=学生が1回聞いただけでは真意の分からないことがあります.

*5:んで…あ,書くのやめよ.