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ゼミ発表のプロトコル案2

前提

研究グループの小ゼミを想定しています.

  • 学生が自分の研究を発表
  • 聴講者は学生20名程度,教員数名
  • 発表内容に対する各聴講者の前提知識にばらつきあり
  • スライドを6up両面で印刷してあらかじめ聴講者に配布
  • 司会者は学生持ち回り

手順

  1. 聴講者はできるだけ固まって座ります.司会者は少し離れて座ります.
  2. 発表者は,通常のゼミと同じように発表をします.司会者と聴講者は,静かに聞きます.
  3. 発表を終えると,聴講者だけで,ディスカッションします.分からなかった点を教え合うのもいいでしょう.聴講者から発表者への質問は,しません.発表者はその声の中から,答えて全体に周知しておきたいことを見つけておきます.司会者は,誰の声が大きいかを把握します.
  4. ある程度時間が経ったところで,また静かになります.発表者が質問を整理し,それに答えます.司会者や聴講者による意見交換もあっていいでしょう.
  5. それで時間が余れば,司会者が質問者を指名します.上述のディスカッションで,口を開かなかった人や,声の小さかった人を優先して選びます.質疑は通常のゼミと同じです.もし本当に質問が出てこないとしても,司会者は30秒間待ち,励まし,促します.

効果(発表者)

上の手順により,発表者は,単独かつ限られた数の人による質問ではなく,発表の場で発生するさまざまな疑問を収集することになります.
心理的にも,聴講者間のディスカッションを見ることは,発表の緊張をほぐすことができるでしょう.
逆に考えてみます.伝統的な発表のスタイル,すなわち発表してすぐ質疑というのは,聴講者の視線が…配布資料を見直す人もいるでしょうから部屋の全員ではないにしても…発表者に突き刺さります.
短時間とはいえ,これはかなりのストレスです.「しゃべるのは何とでもなるけど,質問で何が来るのか不安で」と学生が言うのもうなずけます*1
ここで提案するプロトコルは,聴講者の視線を分散させる効果があると考えたのです.
なお,もし発表者が,様々な方向からの声を聞き分けられないというのなら,ディスカッションをしている人の中に入り込むというのも,いいかもしれません.そのときは,発表者・聴講者間の対話をするのもいいでしょう.ただし,発表者は1箇所に長時間いないようにします.

効果(聴講者)

聴講者にとって,発表者から意見を聞くことが,内容理解の最短経路であるとは,必ずしも限りません.
研究の対象・内容を知り尽くし,発表という形で整理した発表者に聞くのが,一見当たり前のように思えますが,実は学生が本当に知り尽くしているわけではないし,発表でクタクタのところに,不用意な質問・議論によって,本質でないところの論争に至ってしまい,理解が遠のくことさえあります.
また聴講者は多数,その中で質問したい人は複数いる状況で,発問し,回答してもらうという時間を取るのが効果的なのかと考え,尻込みしてしまう人がいるでしょう.
それなら,本人に尋ねる前に,同じように発表を聞いた人にぶつけてみればいいのです.
隣の人がすらすら答えてくれればそれでいいわけですし,それでも疑問が残れば,声を大にして議論し,発表者に拾い上げてもらうことを期待するのです.
なお,上の手順は,あらかじめ全員が知っておく必要があります.そのもとで,聴講者間のディスカッションで大きな声を挙げるか,聞き上手に徹して司会者からの指名に備えるかは,学生にせよ教員にせよ,各自の自己判断となります.

*1:とはいっても,卒業研究・修士論文の発表にせよ,学会発表にせよ,発表と質疑の流れは,伝統的なゼミ発表に沿ったものですので,今回のプロトコルをもとに,質問の声から「知りたいこと」「その場で答えられるような質問」を探し出して,短時間で自分なりに表現するという能力を培うことは,欠かせません.