わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

自分の意に沿う学生を育てたい

スピーチ案

私は,3年のゼミや卒業研究の指導を通じて,自分の意に沿う学生を育てたい,と考えています.
といっても,指示通りに行動する人,という意味ではありません.
たとえばこちらからは,コレコレについて検討してくださいと,大まかな指示をします.そこで期待する「検討」は,一本道ではありません.さまざまな分かれ道があります.
ある道は,進み甲斐があるかもしれませんが,期間内にゴールまでたどり着けない可能性が高いかもしれません.別の道は,手強い難所が控えているものの,道具を一つ持っていれば,簡単に通過できることに気づけたりします.
その都度立ち止まり,目標・目的と照らし合わせて,複数ある道すなわち解決策の中で,どれが最善かを自分なりに考えてから,一つに決定する,そういうことを繰り返して,ミーティングの際に取りまとめて報告する……そんな自律した活動を行える学生が,私が育て上げたい学生像です.
もしその報告の結果が,私のもともとの意図に反していても,プロセスと結論が妥当なら,よしそれを具体化していこうとなります.うまくいかないときは,なぜ俺の言うとおりにしなかった,ではありません.中身をよく見て,共同で,可能ならば他の学生にも手伝ってもらって,思考過程のデバッグをします.
このように,分かれ道に注意して一本の流れをつくり上げるという能力は,卒業研究や,大学院に進学してからより高度な研究を進めるときだけでなく,就職活動で希望する企業から内定をもらうためにはどんな行動をすればいいのか? また,実際に職に就いて,上司や同僚,あるいは社外の人と協調しながら働くときにも,強みとなることでしょう.

上のスピーチ案を書いた事情

来週月曜日に,いよいよ,学科の研究室3年配属行事が行われます.この日は午前中に配属対象者を一室に集めて,配属ルール説明と,各研究室の紹介が行われます.午後はオープンラボです.
現在,自分の研究室紹介のプレゼンテーションを準備しています.持ち時間は例年通り5分.発表順はまだ学生に周知されていないので,具体的なところは避けますが,今年はけっこう後ろです.
エキセントリックな主張を入れて,うちの研究室を心に留めてくれればいいのですが,同じ内容のことを,それより前の研究室の先生がおっしゃっていたら,大失敗です.それから,順番がどこであっても,紹介内容はいわばマニフェストですので,あからさまなウソを言うわけにはいきません.
上の内容に関しては,今の3年生への新たなメッセージというほどでもなく,研究室を運営していく中で,「目標・目的の常時チェック」と「分かれ道(他の解決策)の認識」は意識的に行っています.幸いにもこれらの観点は,JABEEにおけるエンジニアリング・デザイン教育への対応 基本方針と合致しています.
とはいうものの,上の文案は「没原稿」でして,当日,言うことはありません.
理由は,短時間に一度しゃべって聞いてもらう状況では,上手く伝わらないことが予想できるからです.あとであれこれ力説しても,「自分の意に沿う学生 = 指示通りに行動する学生」と勘違いしてしまう学生がそれなりの割合,出そうです.
もう一つの欠点は,重要なキーワードである「自律」に,「自立」という同音異義語が存在し,ここでもやはり勘違いされる可能性が高いことです.「自立」と「自律」の違いは,以下の記述が分かりやすいでしょう.

しかしながら,研究室紹介時に聞くみなさんが,これらを区別していることは想定できないし,スライドに「自立する学生ではなく,自律する学生を育てます!」と書いて説明するんだったら,具体的にどんな研究をしているかの説明に,時間もスライドも使いたいものです.