わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

From 科学好き To 科学好き

いきなりですが問題です.私は正解に至りませんでした.恥ずかしい.

「塩酸も酸性の気体が溶けています.鼻をさすような臭いがします.この塩酸や硫酸は手についたり,目に入ると大変危険.実験に使うときは十分な注意が必要です.このように正体のわからない水溶液の性質をなめて調べてはいけない理由を二つ,ノートに書いてください」
(p.107)

中学受験 SAPIXの授業 (学研新書)

中学受験 SAPIXの授業 (学研新書)

教育ジャーナリスト,言ってみれば塾の「外」の人である著者が,SAPIXの授業を参観し,出題内容と,それに対する講師・生徒*1のやりとりを新書にまとめています.生徒たちは学ぶ素地があって,良い設問を通じて知識や問題を解く技能を確認し,また伸ばそうとしていること,そして各講師もしっかりした教室運用のノウハウと,指導内容に対する入念な準備でもって臨んでいる*2ことが,読み取れました.
塾の効用として,同じ学年・近い学力の子どもたちが競うことで,学力を向上させられる,と言う点が挙げられるでしょう.生徒に自由に発言させ,良い答えを講師が拾い上げて周知する,というのが,本書のあちこちに出てきます.
本文中の算数の問題は,ひととおり暗算で解けましたが,該当学年の(小学校の)児童たちに解かせると,紙の上でやらせてみても正解率は1〜2割くらいで,先生の説明を聞いても理解できない子どもたちがけっこうありそうな気がします.
冒頭に引用した問題の答えですが…

  1. 安全かどうかわからない
  2. 人間の味覚はあいまいだから

(略)
「科学の基本は比較です!」
「指示薬の色が変わるのはだれがやっても同じだし,だれでも結果がわかりますよね? こっちのほうが塩からいとか,なめる順番で味が違うとかじゃダメ.人によって変わっちゃ意味がないんです」
「比較可能,再現可能が科学なんだ!」
(略)
ここで気がついた.
この授業は,講師も生徒も科学好きが科学好きに向かってしゃべっていたのだ.内容こそ中学受験理科の範囲内ではあるが,雰囲気も集中力もまるで理系大学生のようだ.
(pp.108-109)

敗者(不正解者)のひがみを少しだけ:自分が研究をしている中で,構築したシステムの評価として,主観評価を取り入れざるを得ないものもあります.その場合,厳密な意味での再現可能性は保証できません.しかし,人数を揃えてばらつきを少なくさせるほかに,評価観点は既存のシステムや将来の改良版などと,比較可能になるよう,心がけています.

*1:小学生なので「児童」,と書きたいところですが,小学校での話ではないし,本文でも「生徒」か「子ども」と表記しているので,本日のエントリでも1か所を除き,「生徒」に合わせました.

*2:加えて「作問力」(pp.186-187).