広告案件の場合は,チェックポイントは,つぎの4つである.
「ターゲットカスタマーとインサイトがきちんと押さえられているか」
「メッセージおよび提案価値がインサイトにミートしているか」
「メッセージおよび提案価値と商品の価値につながりがあるか」
「メッセージおよび提案価値が他社商品にもあてはまるものではないか」
そして,案がこのすべてをクリアしていれば,今度は不確定要素の部分について,つぎの2つの点でチェックする.
「嫌悪感のあるものではないか」
「社会的に問題があるものではないか」
もし,この両方についてクリアできていれば,その案は「選んでチャレンジしてもかまわないもの」といえるだろう.
(もうひとつのプレゼン―選ぶ側の論理, pp.169-170)
上の話は,小ゼミの学生発表に対して指導教員でない教員が,どんな観点で質問すればいいかを示しているように思えます.変換してみると:
- その研究を進めることで関係しそうな人が誰*1で,その研究で何をアピールしたいかが,きちんと押さえられているか
- 発表内容(資料とプレゼン)が,その研究で何をアピールしたいかということと,合致しているか
- 発表内容(資料とプレゼン)は,研究対象をより魅力的にするものか
- 発表内容(資料とプレゼン)を見聞きしたところ,課題は,既存の技術で解決できるものではないのか
- 研究内容は,嫌悪感のあるものではないか.例えばトンデモを扱っていないか
- 研究内容は,社会的に問題があるものではないか.例えば実用化を想定してみると,明らかな問題があったりはしないか
よし,今日の小ゼミで意識してみるか…と思ったら2人ともうちの研究室でした.
ところで「インサイト」は,分かるような分からないような単語です.「インサイトとは」を,探してみました.
このインサイトとは,ターゲットカスタマーの深層心理にひそむ,情緒的なニーズのことだ.
あくまで潜在的であり,日常的に意識されれているような顕在化したニーズではない.その商品と向き合ったときに指摘されてみて,カスタマーが「いわれてみればそうだ」「なるほど」と思える欲求や気持ち,あるいは発見のことである.
(p.112)
直後に,コーヒーの例があります.「コーヒーは仕事の合間に飲むものだ」は潜在化したニーズであり,「コーヒーは他人との距離を近づけてくれるものだ」とすればインサイトとなる,と.
「インサイト」ではなく,insightfulなら,覚えがあります.博士論文の執筆時に,Acknowledgment(謝辞)の文例を,博士論文の書棚*2で探して読んで,見かけた表現でした.
英語表現としては,insightful commentだったと思います.主査・副査への言及のあとで出てくる人への表現です.それに対し,主査に対する記述で,よく覚えているのはpatientです.「粘り強い(ご指導)」ですね.
こうして並べてみると,patientは女性的で,insightfulは男性的な形容詞のように見えてきます.
過去に書いたこと: