わさっきhb

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机のかけ算

いつものように問題です.

「□」を,1台の机としたとき,次のように並べると,机はいくつありますか.式と答えを書きなさい.

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式に単位を書かせるべきか(3)に,類題があります.zatsugakuinfo.comも見ましたが,小学校低学年でもOKな「台」を使わせてもらいます.
求め方はいくつも考えられて,まず式に単位を付けないのは

  • 縦に3台,横に5台だから,式は3×5=15,答えは15台
  • 横に5台,縦に3台だから,式は5×3=15,答えは15台
  • 縦方向に(1列ずつ)分割すると,式は3+3+3+3+3=15,答えは15台
  • 横方向に(1行ずつ)分割すると,式は5+5+5=15,答えは15台

で,式に単位を付けるほうは(「式は」と「答えは」以降を省略します)

  • 1列あたり3台,それが5列あるから,3台/列×5列=15台
  • 1行あたり5台,それが3行あるから,5台/行×3行=15台
  • 縦方向に(1列ずつ)分割すると,3台+3台+3台+3台+3台=15台
  • 横方向に(1行ずつ)分割すると,5台+5台+5台=15台
  • 縦方向に3台あって,5回繰り返しだから,3台×5=15台
  • 横方向に5台あって,3回繰り返しだから,5台×3=15台

といったところです.まだまだ挙げられそうです*1

次の問題です.

「□」を,1辺の長さが1cmの正方形としたとき,次のように並べると,面積はどうなりますか.式と答えを書きなさい.

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なお,「□」を並べる際に隙間はないようにします.リクエストがあれば,図を作ります.
机の問題と同形なのですが,こんな問題文にすると,答えとしてよさそうなものが減ってきます.

  • 長方形の面積の公式(縦×横=長方形の面積)を使って,式は3×5=15,答えは15cm^2
  • 長方形の面積の公式(横×縦=長方形の面積)を使って,式は5×3=15,答えは15cm^2
  • 長方形の面積の公式(縦×横=長方形の面積)を使って,式は3cm×5cm=15cm^2
  • 長方形の面積の公式(横×縦=長方形の面積)を使って,式は5cm×3cm=15cm^2

長方形の面積に関して,縦と横のどちらを先に書いてもよいらしいことは,式に単位を書かせるべきか(1)で調査済です.とはいえ,学校で例えば「たて×よこ=面積」のみを教わったのなら,それに統一したほうが,処世術としてよさそうだ(5×3=15をバツとされる可能性がある)というのは,指摘しておいたほうがいいですね.
机の問題との同形性を利用すると,

  • 横1cmあたりの面積は3cm^2,それが(横方向に)5cmあるから,3cm^2/cm×5cm=15cm^2

という式も考えられますが,問いの答えには,ちょっと,いやとてもとても,したくありません.「3平方センチメートル毎センチメートル」ってのが異様です.
ちなみに布地は,個人的には購入経験がないものの,よくmなどの長さの単位で単価が出ているけれど,実際には2次元平面に相当するものであり,幅については定数扱いになっていることは承知していますが,関連づけて検討できそうにも思えます*2

もう1問,考えてみましょう.

「□」を,1ピクセルとしたとき,次のように並べると,全部で何ピクセルありますか.式と答えを書きなさい.ピクセルとは,画素のことです.

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これは机の解答が転用できそうです.

転用どころか,ずいぶんと変更しました.とくに5番目と6番目の求め方は,式に至るまでの考えを書き直してみると,結局ここだけ,面積を求めるのになってしまいました! ピクセルって,机と正方形の折衷型なの!?
…おかしなのには理由があって,まずは,「ピクセル」は画素という,机で言うと1台に相当する単位なのが本来なのですが,検討や立式において,正方形に見立てた画素の1辺の長さとしても使っている点です.なお,ピクセルの長さの単位としての使用は,TeX*3CSS (Cascading Style Sheet)にも見られ,計算機を扱う者としては,万人が同意するかは別にして,まあ妥当な考え方です*4.あるいは,ppi (pixel per inch)という単位を思い浮かべるのもいいかもしれません.72ppiとあったら,「これが1インチ」というのが分かる線分を用意して,それに沿うように,1辺の長さが72分の1インチの正方形が,72個並んでいるような状態です*5
もう一つは,画像や画面というのは,「幅」と「高さ」によってその領域を規定するのが自然であり,比較的交換の可能な「縦」と「横」ではないということです.幅と高さが交換可能に見えて,交換可能ではないと言える,問題じゃなくて例文を作ってみましょう*6

オンキヨー株式会社の製品であるスレートPC,TW317は,最大の解像度が1366×768であるが,本体を90度(どちらの向きでもよい)回転させると,特に設定をすることなく,768×1366の画面に切り替わる.

ちなみにTW317の実物は,仕事場にあります.回転可能な台は別途,購入しました.解像度の数値は製品サイトのものですが,「1366」は2で割り切れるものの4では割り切れず,中途半端な数字やなあと思って検索していくと,wikipedia:画面解像度に記載がありました.
例文ですが,2回出現しているかけ算の形の式について,左右を交換するわけにはいきません.しかし実体は一つのスレートPCであり,総画素数は回転させても変わることなく1049088ピクセル(またはドット),となります.
計算機を扱う者にとって,画像や画面の寸法を書く際,「3×5」あるいは「3x5」と書けば,幅が3ピクセル(またはドット),高さが5ピクセル(同)を意味します.
そういうことで,ピクセルの問題に対する答えはこうなります*7

ところで,数学においてどちらでもよさそうに見えて順序があるものとして,「行列」が指摘できます.寸法でいうと,「n×m行列とm×p行列の積を求めることができ,結果はn×p行列になる*8*9と書いたときの,行数,列数です.これ,どっちを行数どっちを列数に解釈してもいいなんてことにしたら,積が求められなくなります*10.また行列の中の特定の要素を指定する場合も,行を特定する情報が先,列はその後となります.TeX表記のa_{ij}について,iとjは何になるかを思い浮かべるなり,線形代数の教科書を見直すなり,上記Wikipediaのページを確認するすれば,明白でしょう.

*1:例えば,「1+1+…+1=15」.

*2:同月23日変更.当初は「今回のケースとも少し違います」.

*3:2月1日抹消.なんでこんな勘違いしたんだ!?

*4:ただし「平方ピクセル」という表現は,見聞きしません.

*5:wikipedia:ppi

*6:もう一つ例文を作れと言われたら,convertコマンドの引数を見直して,画像を90度,回転させたら,幅と高さは反対になりますよね,ですかね.

*7:同月23日追記:たった一つです.単位付きの式は,被除数も除数も積も,単位が「ピクセル」になってしまうので,採用しません.

*8:同月23日追記:これは今後使いにくいので,書き直す…「n×m行列Aとm×p行列Bに対して積ABが定義でき,n×p行列となる」.

*9:個人的にプログラミング授業などで行列を取り扱う際,「n×m行列」ではなく「n行m列(の行列)」と書くよう心がけています.「n×m行列」という表記は,wikipedia:行列に例の一つとしてあります.教養の線形代数で学んだときは,「(n,m)行列」,n=mのときは「n次の正方行列」,だったかな確か….

*10:もちろんここには「n×m行列なら,積はnmになるじゃないか」という見え見えのボケが潜んでいます.真面目に解説すると,『どっちを行数どっちを列数に解釈してもいいなんてことにしたら,』行列の『積が』必ずしも『求められなくなります』.