「なんや,パパが帰って来たっちゅうのに,お前もうえの子も,活気ないな」
「ちょっとな,どたばたしてたもんで」
「そか.んでどうやった? 抽選」
「うん,通ったよ.これでこの子も来年からは幼稚園やで!」
「そらよかった.競争率1.1倍のところを無事に通過か」
「あ,ちゃうねん.30人(が定員)のところ,抽選に来たんは31人やってん」
「ありゃ…1人だけ落とすんかいな」
「まあ園長先生も,全員入園ってできるか,念のため,上にかけ合ったらしいけど,あかんかったね」
「へえ.抽選ってあれか,うえの子に引かせたんか」
「いや,あたし一人で行ったよ.『お子さまはお連れにならないように』って指示もあったし」
「ふむ」
「せやけどあんだけ手続きを踏まな,あかんねんなあ…」
「厄介やったんかいな」
「あたしらは,まあそうでもなかってんけどね.まずは入れる時間になるまでは,園の外で,すでに待ってる人と,話ししたりして」
「あれか,一番乗りのほうがええとか…そんなことはないか」
「まあ聞いてな.入れるようになって,ちゃんと願書の控えを見せてやね,それで早い者順で席につくんやけど…」
「…」
「全員が座ったところで,最初に,『本抽選の順番を決める抽選』をすんねん」
「仮抽選みたいやな」
「せやね.で,あたしは21番.さっき話してた人は26番やったかな」
「しかし…みな,31人なんは分かってんのよな?」
「せやねん」
「んでよお…誰かが引いて『ハズレ』って出たらその瞬間に,まだ引いてない人は大喜びできる,ってこっちゃろ?」
「ちゃうねん.その辺もうまいことできててやね…」
「うん? ほなもうちょっと聞こか…」
「大きめの封筒がな,あんねん.人数分」
「31枚か」
「そう.まだ何も入ってへんのんでな」
「アタリとかハズレとか,入れてくんか?」
「次に紙が出てきて,『○』と書かれたのが30枚,あと1枚は『補欠』な」
「あ,なるほどなあ」
「それを,みんなが見ている前で,1枚1枚封筒に入れて,糊付けで封をしてくねん」
「緊張のひとときやなあ」
「せやったね.で,全部できたら,透明な箱にみんな入れて,かき混ぜんのよ」
「ガラス張りってか」
「まあアクリルやと思うけどね」
「封筒やら透明の箱やら,準備は大変やなあ.…そいで,順番に1枚ずつ,取ってくんか」
「うん」
「取ったらすぐに開封…て訳にはいかんか」
「その辺もうまいことできててな.まず封は開けんと,みんな席に戻んねん」
「ふむ…」
「それから,ハサミを持った人が2人おって,両方の端の席から順に切ってくんよ!」
「うわ,それ目に浮かぶなあ…」
「まだ,中身は見やんねんで.『ではご覧ください』って,掛け声がかかってから,見るんよ」
「んでお前はマル,と」
「そう.で,喜んでるのもつかの間で,『マルの紙をお持ちの方は,こちらへ』って言うて,隣の部屋へ案内すんねん」
「うーん,そいで,『補欠』の人だけ残るんか」
「まあその人には,職員さんが丁寧に説明してはってんけどね.他の幼稚園の紹介だとか,4歳からの入園なら最優先で入れるとか,ね」
今年上半期に経験したマル:子ども手当