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俺流・「かけ算の順序」ツアー

最新状況(2013年11月13日追加)

「かけ算の順序」

当雑記で「かけ算の順序」という言葉を使うとき,「かけ算の式の順序にこだわってバツを付ける教え方は止めるべきである」という主張に賛成する人々を念頭に置いています.その主張の攻撃対象,すなわち「a×b」の式のみ正解とし「b×a」だと間違いという採点や指導をする人々に対して,私はその言葉を使わないようにしています.
「かけ算の順序」が,(広義の)論文や学術研究に見られないことは,7月29日に調査しています.それに替わる,ふさわしい表現は「被乗数と乗数の区別」であり,5月20日(金田論文),10月3日(乗数効果),13日(Greer)で実態調査や出題例を取り上げています.

「かけ算の順序」のダブスタ考

もう一つ,気になることがあります.「かけ算の順序」という表記だけで,専門家からは無視されておしまいになるのでは,ということへの危惧です.数学教育のことが分かっていない,と言ってもいいでしょう.これはコミュニケーションの断絶をもたらします.
(略)
先ほど,「コミュニケーションの断絶」と書きました.そのような断絶が生じたとき,解消するため行動すべきなのは誰なのか,というのにも注意したいものです.

Shampoo Boy

倍の乗法・積の乗法,倍指向・積指向

  • 被乗数と乗数が区別され,反対にして書くと,式の意味が異なるようなかけ算を,「倍の乗法」と呼びます.
  • 被乗数と乗数の区別は本質的ではなく,反対にして書いても,その対象あるいは場面を表していると解釈できるようなかけ算を,「積の乗法」と呼びます.
  • 「倍の乗法」に基づいて,乗法を意味づけるべきだという考え方を,「倍指向」と呼びます.
  • 「積の乗法」に基づいて,乗法を意味づけるべきだという考え方を,「積指向」と呼びます.
  • 倍指向で,倍の乗法の問題を解くとき,かけ算の式は1通りです.
  • 倍指向で,積の乗法の問題を解くとき,かけ算の式は2通りです.
  • 積指向で,積の乗法の問題を解くとき,かけ算の式は2通りです.
  • 積指向で,倍の乗法の問題を解くとき,かけ算の式は2通りです.
倍指向,積指向

トランプ配り再考

ボートを3そう用意しておき,1人ずつ2回乗せていくという,トランプ配りに基づくと,「3×2=6」とする余地はあります.しかし現実のボートで,そういう乗り方は,考えにくいですね.1人がボートに乗った状態で2人目を待つ,そんなボートが何そうもあるというのは,運営上,ずいぶん危険です.

俺教材研究

結合法則:もう一つの「かけ算の順序」

ここまでの式のすべて,またはそこから選抜したものが,学習指導案に「予想される児童の反応」などとして書かれることになるのでしょう.そして10×3×5=150に一本化して検討を深め,乗法の結合法則,すなわち「かけ算は,かける順番が違っても,同じ答えになる」を学習するのが,自然な流れであるように思います.

10円玉の長方形的配列を,授業で出すとしたら

学習指導要領

学習指導要領に目を通せば,10年程度のスパンで,学校現場で何を教えているのかを知ることができます.最新のものは,文部科学省のWebページから無償入手できます.
当雑記では,かけ算(乗法)をめぐる議論の中で,たびたび参照しており,とくに「小学校学習指導要領解説 算数編」には《算数解説》という名称をつけています.

学習指導要領を読む

研究者は

かけ算の話は,「第3章 教材論 §2 演算の意味・手続き」(pp.73-82)にまとめられています.
引用文献・参考文献は84個.本全体ではなく,上記セクションでこの数です.銀林浩氏も,『日本数学教育学会誌』に寄稿しています.

日本数学教育学会による,乗法の意味づけ

いくつかのグループがあって,各グループで同じ個数のモノがあるときというのが,子どもが最初にかけ算を用いる場面になる.例えば

3人の子どもが4つずつクッキーを持っている.全部合わせるとクッキーは何個か?

これをかけ算の式で表そうとするとき,2つの数は明らかに異なる役割を担っている.子どもの数は「乗数」であり,クッキーの数すなわち「被乗数」に作用して,答えとなる総数が得られる.

Greerによる,乗法・除法が用いられる場合

手がけたこと

九九の問題を列挙して,何に使うのかというと,まあ,頭の体操です.現状はRuby処理系を必要とし,シェル上でしか動きませんが,今後,HTMLファイルを生成するようにします.それをブラウザで開くことで---シェルもRubyも不要になり---,数秒おきに問題・解答を表示させたり,ボタンを押して読み手のペースで読み進めたり,できるようにしたいと考えています.

九九文章題ジェネレータ“99qg”をリリース

副産物

列挙されているものを抽出し,古いものから新しく書かれた順に配置しています.「列挙の列挙」といったところですかね.
それ以外にも共通点があります.というのも,それぞれの作者が主張したい,読者に届いてほしい“論”があって,その反論として列挙されています.いわば,作者の想定する反論です.反論のための,反論の列挙です.その列挙によって,“論”の方向づけ,すなわちどこを目指して書いているのかが,見えてきます.その一方で,客観性や信頼性は保証されにくくなります.
もう一つ,気になる共通点があって,いずれも「依拠するもの」がまったく見えないのです.各エントリを通読したところでは,「根拠は書いた人の頭の中?」となります.経験はなるほど大事ですが,根拠にするには弱いのです.

反論のための反論の列挙の列挙

考え方の多様性

「いわゆるかけ算の順序論争に対して,肯定否定,様々な意見が出されている」のと「一つの課題に,児童・生徒・学生はいろいろな意見を出す」のを踏まえ,「そんな中,自分は思索を広げていく」ことを目指しています.未開拓の領域があることは,分かっています.

(最終更新:2013-11-13 朝)