1. 長方形の面積
いきなりですが問題です.
ポイントは,長方形の面積を縦×横の公式に適用して求める場合,「縦はどれであるか」ではなく「縦をどこにするか」を問うことです.発見ではなく選択,と言ってもいいでしょう.そして,縦になる辺を選択すれば,横の長さは確定します.
そのことを踏まえて,解答,いや,対話例です.
T:これはどんな図形かな?
C:長方形です.
T:どうしてそう分かる?
C:問題文に,そう書いてあります.
T:あ,そうだね.それで,何をすればいいのかな?
C:面積を求めます.
T:どうやって求める?
C:長方形の面積の公式です.
T:どんな公式だっけ?
C:縦×横です.
T:ほお,じゃあ,この図形で,縦はどこにする?
C:3cmのところにします.
T:なるほど.それで,どうする?
C:そうすると,横は,5cmです.
T:そうだね.
C:面積は,3×5=15で,15平方cmです.
T:よろしい.よくできました.
もちろん,児童が縦として(長い)5cmのほうを選択すれば,「3」と「5」が入れ替わるだけです.思考のプロセスを,図にしました.
発問という言葉を使っていいのなら,主発問は「長方形の面積の求め方(公式)は?」ではなく「縦はどこにするの?」だと考えています.そして上の対話では,直接的に「縦はどこにする?」と問いましたが,「縦はどれ?」と尋ねて,3cmと答えたら「5cmのほうじゃないの?」と揺さぶりをかけるのも,子どもによっては有効かもしれませんね.
2. 平行四辺形の面積
またまたですが問題です.
問題の出典は,平成23年度全国学力・学習状況調査として実施を予定していた調査問題の小学校算数A大問4です.
さっそくですが対話例です.
T:これはどんな図形かな?
C:平行四辺形です.
T:どうしてそう分かる?
C:問題文に,そう書いてあります.
T:ああ,そうだね.それで,何をすればいいのかな?
C:面積を求めます.
T:どうやって求める?
C:平行四辺形の面積の公式です.
T:どんな公式だっけ?
C:底辺×高さです.
T:ほお,じゃあ,この図形で,底辺はどこにする?
C:7cmのところです.
T:4cmのところじゃないの?
C:だってそうすると,高さが分からないじゃない.
T:そうか.じゃあ,7cmのところを底辺にしよう.それで,どうする?
C:そうすると,高さは,3cmです.
T:そうなるね.
C:面積は,7×3=21で,21平方cmです.
T:よろしい.よくできました.
「解く」ならそれでおしまいですが,ちょっと対話を続けてみます.
T:でもさあ,面積が出たのなら,底辺が4cmのほうの高さも,出せるんじゃないかな?
C:21÷4,ですか?
T:そうだね.計算したら,どうなる?
C:21÷4=5.25です.
T:高さは?
C:5.25cmです.
T:底辺×高さの公式に,当てはめてみて.
C:はい.この平行四辺形の底辺を4cmのところにすると,高さは5.25cmとなって,公式を使って4×5.25=21と表せます.面積は,21平方cmです.
T:うん.で,この式じゃ,ダメなの?
C:この問題の,式にですか?
T:そう.
C:ダメだと思います.
T:どうして?
C:図の中に,「5.25」がないからです.
T:でも今,高さ5.25cmって出したじゃない.
C:それは,面積は21平方cmと求めていたからです.それと,4×5.25=21という書き方だと,先に答えが21平方cmだと分かっていて,つじつまを合わせるために,5.25を持ってきたように見えるんです.
T:「見える」って,だれが?
C:マルとかバツとかを判定する人です.
T:そこまで考えてるんだね.
ところでこの問題は,全国学力テストでぽっと出てきたというわけではなく,《算数解説》p.174に説明が入っています.そこでは「底辺をどこにとるかで高さが決まること」「必要な情報を自ら選び出し面積を求めること」と書かれています.
3. ダイヤモンド的配置
ここでやっぱり問題です.
これも出典がありまして,『算数科教育の基礎・基本』pp.108-109です.「平成元年に日米の数学的問題解決能力を比較するために,両国の小学校4年生に出題された問題」とのこと.なお,「かけ算」から始まる文は,独自に追加しました.
ななめになった長方形的配列のように見えますので,45度,回転させてみましょう.
残念ながら,長方形的な配列でない…と思いきや,4×4の配置と,3×3の配置が,重なっているように見えます.ということで,4×4+3×3=16+9=25によって,総数を求めることができました.
念のため1個ずつ順に数えても,あるいは2飛びでも,もしくは1+3+5+7+5+3+1=(3+7)+(5×2)+(1+3+1)=10+10+5=25としても,25個となることが確認できます.
「25=5×5」*1に気づけば,もとのダイヤモンド的配列のおはじきを4つだけ,移動することで,正方形的配置になることが分かります.
ここまでの解法は,すべて,取り上げた書籍に書かれています*2.もう少し,考えてみます.
十字型に,切り分けてみましょう*3.上下左右の端を含む十字型を,4つ作ることができます.紙と鉛筆でなら,囲い込みをするところですが,PowerPointによる作図では,美しさに欠けるので,塗り分けることにします.
5つのおはじきからなる十字型が,4つ.残りは…塗りつぶしていない,白のおはじきも,ななめに見ると,十字型です*4.ということで,5つが5つで,5×5=25を得ることができます.
塗り分けパターンがもう一つ,浮かびました.一つ分の大きさを「3」とします.L字型で,グルーピングをしていくわけです.
を経て,
とすると,3つが8つ,それと中心は,どのグループにも入っていないので足すことにして,3×8+1=24+1=25となりました.
*1:http://www.kasanken.com/03shidouan/2nen/2-20071006-kakezan.pdfに「アレイ図カルタ」というのがあります.「2×3と3×2は,カードの向きがちがうだけで,おなじなのにお手つきはおかしい」という児童の文句のほか,「余談になるが『5×5』のカードを探すときに,『まだもう一枚ある。』といって探していた子に,ほかの子が『1枚だけだよ。』と冷静に教えていたのがおもしろかった」が,目を引きます.アレイ図について,そのうちrepriseエントリを書きます.
*2:書籍に書かれていて,私が思いつかなかった考え方には,タマネギの皮を剥くように,ダイヤモンド型で外側から囲んでいくものがありました.それぞれの周の個数を数えて足し合わせれば,3×4+2×4+1×4+1=12+8+4+1=25を得ます.
*3:某日追記:この方法は,『算数好きにする教科書プラス 坪田算数2年生 (TEXT BOOK PLUS)』p.67に書かれていました.
*4:細かいことを言うと,おはじき間の距離は,他の十字型より倍長いのですが.