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算数教育から開く,日本の教育

算数・数学教育の本の中から,「日本の教育の特徴」と言えるものを取り出してみました.

小学校指導法算数

小学校指導法 算数 (教科指導法シリーズ)

小学校指導法 算数 (教科指導法シリーズ)

第1節の4.「高い得点の背景」で述べたように、日本の得点がなぜ高いのか、各国が調べようと試みた。その一つが、TIMMS 1995年調査のオプションとして実施された日本・ドイツ・アメリカの中学校2年の数学授業の比較である。これは各国の数学授業をそれぞれ100本ビデオ撮影し、特徴を分析した研究である。分析の結果、日本は問題解決型の授業を行っており、これが高い得点に結び付いていると絶賛された。ただし、数学の中での問題解決で日常には結び付かないとの指摘も受けた。
さらに、TIMMS 1999年調査のオプションとして実施されたオーストラリア・チエコ・香港・日本・オランダ・スイス・アメリカの中学校2年の数学授業の比較から、高い得点を導く指導法は一つとは限らないことも分かってきた。
日本は授業の初めに本時の目標を指示し、授業の最後にはきちんとまとめを行い、授業においては出題する問題のレベルを数学的に発展させ、生徒の数学的思考が高まるよう工夫されていた。(図4-13)
(図省略)
また、香港と日本は同じくらい得点が高いが、指導法は異なり、香港は新しい内容を学んだらその練習が中心であり、日本は新しい内容の導入にじっくり時間をかけていた。(図4-13)
(p.67.執筆者は瀬沼花子)

諸外国の算数・数学教科書の良い点を挙げていくと、日本の教科書は、確実な知識を効率よく見*1に付け、算数・数学の考えを着実に発展させる構成以外にあまり良い点がないように思われてくる。しかしよく調べてみると、日本の算数の教科書によく見られるような、複数の子どもが同一頁に登場し、それぞれ異なる考え方を示す、あるいは児童生徒に多様な考えを促す場面は、他の国の教科書には見られなかった。
つまり、考え方をクラス全員で話し合わせようとする日本の教室文化が算数の教科書に反映しており、これが日本の算数の授業と算数教科書の特徴といえる。
(pp.71-72.執筆者は同上)

数学教育学研究ハンドブック

数学教育学研究ハンドブック

数学教育学研究ハンドブック

(略)教科書の面から考えたい。教科書に関する初の大規模調査研究「理数教科書に関する国際比較調査」が2008(平成20)年度に国立教育政策研究所と教科書研究センターで実施され,先進主要国とPISA成績上位国の一部,アジアの近隣諸国を含め10か国で調査が行われた。米国,カナダ,イギリス,フランス,ドイツ,フィンランド,中国,韓国,台湾,日本である。
(URL:省略)
その結果,日本の教科書は実生活に即した問題よりも理論を重視しており,学年や学校段階が上がるにつれこの傾向が顕著になる。そのため,なぜ役に立たないことを勉強するのかという疑問が生じがちである。対して諸外国は算数・数学と実生活の関係を重視し,学ぶ意義も明示している。しかし,複数の子どもが教科書に登場し,それぞれ異なる考え方を示す,あるいは児童生徒に多様な考え方を促す場面は他の国の教科書にはなかった。つまり,考え方をクラス全員で話し合わせようとする教室文化が教科書に反映しているのである。
(p.386.執筆者は瀬沼花子)

算数科教育の基礎・基本

算数科教育の基礎・基本

算数科教育の基礎・基本

■外国からみた日本の問題解決■
問題解決の意味は国によっても違っているが,これを端的に表す興味深い事例がある。中学校の事例であるが,算数でも特徴はほぼ同じと思われるのでここに紹介したい。平成7年にIEA国際数学・理科教育調査の付帯調査としてアメリカ・ドイツ・日本の数学授業のビデオ分析が行われた。日本は,数学の概念を理解させるために問題を解かせる過程を問題解決と呼んでおり,そのためにじっくり生徒に考えさせ,時には自分の解答の説明だけでなく他の生徒の解答も説明させている。一方,アメリカは問題を解くことが問題解決の最終目標であった。この点,日本は素晴らしい授業展開と絶賛された。一方で,日本の問題解決は数学の問題で始まり数学に戻るだけ,つまり生活や応用と結びついていないことが批判された。
(p.106,執筆者は明記されていないが,瀬沼花子と思われる)

新編算数科教育研究改訂版

新編算数科教育研究

新編算数科教育研究

(2) 子どもの思考を中心におく
研究授業があることは,特に,授業中の子どもの思考に焦点をあてるのに有利である。一人の教師では授業中に多くの子どもをきめ細かく見ていくことは難しいが,研究授業では他の観察者の助けにより,子どもの思考をより詳しくより多面的に理解することが可能となる。
研究授業の前に作成される指導案には,通常,指導過程において「予想される児童の反応」が詳細に記載されている。他国の教師はこの部分を書くのが難しいといわれる。授業研究の中で子どもの思考への理解を大切にしているわが国の特長がここに現れている。
(p.170,執筆者は関口靖広)

日本の算数・数学教育に学べ

日本の算数・数学教育に学べ―米国が注目するjugyou kenkyuu

日本の算数・数学教育に学べ―米国が注目するjugyou kenkyuu

  • 作者: ジェームズ・W.スティグラー,ジェームズヒーバート,James W. Stigler,James Hiebert,湊三郎
  • 出版社/メーカー: 教育出版
  • 発売日: 2002/11
  • メディア: 単行本
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日本において,授業は学校の全活動の中で特権的な地位を持っています。授業は神聖にして犯すべからざるものと言っても言いすぎではないでしょう。授業は,私たちが大学の講義や教会における礼拝に処するのとおおよそ同様に扱われています。授業展開にきわめて大きな関心が注がれます。授業は,起承転結のある物語のように一まとまりの完全な体験として計画されます。その意味は部分間の結びつきに見いだされます。授業の導入部分だけを見たり,あるいは終末に至る前に教室を離れたりすると要点を見落とすことになります。このような授業が成功に至るには,各部分は相互に関連し統一性を持っていなければなりません。すべての部分は相互に,かつ明瞭に関連していなければなりません。そして,授業は,中途の妨害や無関連な活動がなく,筋に沿って流れなければなりません。私たちがビデオテープで視聴した日本の授業には校内放送や昼食人数調査はもちろん,いかなる部外者による中断も決してなかったのはこのためです。
(p.95)

上記引用を含むpp.90-96では,「指導と学習に関する文化的信念:日本と米国の場合」という見出しで,数学の性格・学習の性格・教師の役割・個人差・授業の神聖さに分かれて,日米の違いが記されています.

長年にわたる改革にもかかわらず,米国において授業はほとんど何も変わっていないことを研究は示唆しています。日本の場合,これとは対照的に学習指導の実践は過去50年の間にめざましく変化してきました。この差違はどのように説明できるのでしょうか。日本もまた,教育実践を変えることにねらいを定めてきました。しかし,変化を生じさせる方法に関する前提,およびこれを実現するために設けられている仕組みは米国におけるものとまったく違います。米国の教科教育学者は大きな変化を比較的短期のうちに求めてきました。実際,正にこの「改革」という言葉は突然の大規模変化という意味を内包しています。これに対して,日本の教科教育学者は,学習指導に関する長期にわたる漸進的,微小増加的改善が生じる方式を制度化してきました。この方式は明確な学習目標,全国的に共通なカリキュラム,および授業実践における漸進的改善に立ち向かう教師の勤勉,努力をも含むものです。
(p.106)

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(私訳)

  • かずや:ぼく,4×6の答えを思い出せないよ。忘れちゃった。
  • 先生:4×6の答えの求め方を,かずやくんといっしょにみんなで考えましょう。
  • 案内役:2年のときに学習した,かけ算の決まりが使えないかなあ。
  • なおこ:4×6の答えは4×5より□だけ大きくなるから...
  • みのる:かける数が1減れば,答えは□減る。
  • まみ:かけられる数とかける数を交換しても,答えは同じになるから...

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