わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

「小数のかけ算・割り算」の意味理解について

個人的には,まあそれくらいの正答率になるだろうなあ,というのが,読んで最初に思ったことです.はてブをざっと見て,指摘されていないところでは,

  • 正答率の不均一性出題の恣意性:学力調査では,正答率が高くなる問題も,低くなる問題も見られる.
  • 報道の恣意性:低い正答率を用いて,理解不足・学力不足を報じる(高い正答率の問題は,ニュース性に乏しく,あまり報じられない).

あたりを,挙げておいたほうがいいかなとも思います.


上の記事を見て,調べたり,連想したりした情報に,リンクします.

数直線を用いることによって乗数Pが1より小さい場合,積は被乗数Bより小さくなることも説明できる。
小学校学習指導要領解説 算数編 pp.166-167

なお,除数と商の大きさの関係については,除数が1より小さいとき,理解が困難になる児童が多くみられる。数直線を用いるなどして,除数が1より小さいとき,商が被除数よりも大きくなる理由について説明できるようにする。
(前掲書 p.167)

なお,乗数と積の大きさの関係や,除数と商の大きさの関係については,乗数や除数が1より小さいとき,理解が困難になる児童が多くみられるので,数直線を用いるなどして,それらの関係についてよく分かるようにする必要がある。
(『小学校学習指導要領解説 算数編*1 p.133)

  • 乗法の意味づけ

これらの研究成果から,乗法・除法の意味づけにおいては,数学的な考え方の育成を目指す立場からは,割合による意味づけに教育的な価値がある。これは,整数は同数累加で導入し,乗数が小数になった段階で同数累加では意味づけられなくなる。そこで,被乗数,乗数の意味を(基準量)×(割合)と拡張し,これまでの整数の場合と同様に用いることができるようにすることである。数学的な考え方を育成するためには,意味の拡張は重要な指導の場となってくる。
この意味づけにおける課題は,児童の実態として,割合を捉えることの難しさが挙げられる。整数の乗法・除法を扱う中で割合の見方をどの学習でどのような方法で導入するかを明確にする必要がある。また,整数÷整数の包含除の場面で整数倍,小数倍を扱う指導と割合との関連を,より一層カリキュラムの上で明らかにする必要がある。
一方,意味の拡張を意図しない立場では,乗法の意味づけは,(内包量)×(外延量)になる。乗数を外延量とすることで,整数でも小数でも意味づけは変わらないことになる。
この意味づけの課題は,乗法の導入段階で内包量の見方を児童ができるかということである。例えば,みかんが3こある場面で,これを3こ/皿という内包量として見るのは児童にとって難しいことである。また,数学的な考え方と関わった意味の拡張などの見方をどのように扱うかを明らかにする必要がある。
(『数学教育学研究ハンドブック』pp.74-75; 日本数学教育学会による,乗法の意味づけ

また,4×6は,
   4×6=4+4+4+4+4+4
という意味だとすることにも私は反対である。
これは,つまり,“かけ算はたし算のくりかえしだ”という定義なのだが,これは適当ではない。この定義で教えると,4×1とか4×0とかいうかけ算がでてくると,とまどってしまう。
4×1は,たし算など使わないで,4という答えがでてくるので,かけ算をやるときはかならずたし算をやるものと教えられた子どもは,「4×1は4を1回たすことだから,4+4=8」などとやってしまう。また,4×0になると,さらに困る。もっと困るのは5,6年生になって,
   4×\frac{2}{3},4×0.3
などのような×分数,×小数がでてくるときである。×\frac{2}{3}も×0.3もたし算ではないし,そのうえ,かけると,ふえるはずだと思っていたのが,かけて,減ることになって,子どもは頭をかかえてしまう。2年生のとき,かけ算をたし算のくりかえしだと教えこまれた子どもは,5,6年生になって完全にいきづまってしまうのである。
(遠山啓:6×4,4×6論争にひそむ意味, 科学朝日1972年5月号; 『遠山啓著作集数学教育論シリーズ 5 量とはなにか 1 (1978年)』pp.116-117)

  • 調査例

課題3 次の①から⑤のうち,正しいと思う番号に○をつけなさい。
かけられる数×かける数=こたえ
① かけ算のこたえは,かける数がかけられる数より大きいとき,かけられる数よりも大きくなる。
② かけ算のこたえは,かけられる数がかける数より大きいとき,かけられる数よりも大きくなる。
③ かけ算のこたえは,いつでも,かけられる数よりも大きくなる。
④ かけ算のこたえは,かける数が1より大きいとき,かけられる数よりも大きくなる。
⑤ かけ算のこたえは,かけられる数が1より大きいとき,かけられる数よりも大きくなる。
(小原豊: 小学校児童による有理数の乗法における乗数効果の分析, 鳴門教育大学研究紀要, Vol.22 (2007), http://ci.nii.ac.jp/naid/110006184927 p.207)

問4 次の式で,○や△は,どれもいろいろな数を入れるところを表わしています.
    ○×△
次にのべたことのうち,この式のことを正しくいっていると思われるものに,すべて○をつけなさい.
□ア.○に入れる数をきめておいて,△に入れる数を2ばい,3ばい,…,または\frac{1}{2}\frac{1}{3},…になるように変えていくと,この式の表わす大きさも,2ばい,3ばい,…,または,\frac{1}{2}\frac{1}{3},…というように変わる.
□イ.△に入れる数をきめておいて,……(アで,○を変数とした場合)
□ウ.○に入れる数と△に入れる数をとり変えても式の表わす大きさは変わらない.
□エ.○や△に,どんな数を入れても,○×△の表わす大きさは,○や△の表わす数よりも,いつも大きい.
□オ.○×△に,どんな数を入れても,答は一つの数で求められる.
中島健三: 乗法の意味の指導について, 日本数学教育会誌, Vol.50, No.2 (1968), http://ci.nii.ac.jp/naid/110003849500 p.5)

(最終更新日時:Wed Sep 26 06:42:10 2012ごろ)

*1:現行より一つ前の学習指導要領解説.