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かけ算・わり算の8マス関係表

かけ算(乗法)・わり算(除法;包含除・等分除)の関係を,1枚の図にしてみました.

Q&A

Q: なぜそのような分類があるの?
A: 「かけ算だ」「わり算だ」と,演算の決定ができるようになるためです.
Q: トランプ配りを使えば同じなんでしょ?
A: 連続量×分離量=連続量という関係になると,かけられる数とかける数は交換できませんよ.それと,トランプ配りは分離量を対象とした等分除のための操作として,確立されています(海外文献からも知ることができます).
Q: □×3=15も,3×□=15も,交換法則を使えば□=5なんでしょ?
A: 「一つ分の大きさ(1つ分の数,1あたり量)」と「幾つ分」を区別する段階では,□×3=15と3×□=15は異なる意味です.九九をもとに15÷3を求める際には,三一が3,三二が6,…,三五15として,3の段を使うことになります.
Q: わり算が2種類なのに,かけ算が1種類って,おかしくない?
A: a×b=cという関係があるときに,その中の一つを未知数として,求める式を書けば,a=c÷b,b=c÷a,c=a×bですので,わり算が2種類,かけ算が1種類なのと自然に対応します.なお,面積・直積などの場合には,わり算は1種類(a=c÷bとb=c÷aは実質的に区別されない)となります.
Q: 包含除と等分除,どっちが大切なの?
A: 「かけ算だ」「わり算だ」と,演算の決定ができるようになるためには,どっちも同じくらい大切だと思います.
Q: 包含除と等分除,どっちが簡単なの?
A: 3年で学習する,分離量を対象としたわり算では,どっちが親しみやすいかは人それぞれです.《算数解説》p.110も,両論併記です.しかし小数となったら,等分除の拡張となるほうがより困難で,そのことは「1に当たる大きき(基準にする大きさ)を求めているという見方に一般化するのに難しさがある」(《算数解説》p.167)と書かれています.
A追加: 国内外で,等分除のほうが難しいことが報告されています(包含除先行1950-80年代の研究概観).
Q: 包含除と等分除,どっちが重要なの?
A: 算数教育ではどっちも同じくらい重視します.数学教育協議会の「量」に基づく指導では,1あたり量を求める,等分除を先行させています*1.また数学者らによる量の理論でも,「n倍」の逆写像が「n分の1」*2になることから,等分除を重視しているように見えます.私自身は,算数教育の指導法(どっちも)を支持します.
Q: 包含除と等分除なんて,子どもに教える意味があるの?
A: あると思いますよ.かけ算・わり算が用いられる,いろいろな場面を経験させてあげることが大事だと思います.「包含除」「等分除」「第○用法」といった言葉を教える必要は,ありませんけどね.本日の8マス関係表を通じて,乗法と除法,包含除と等分除の相互関係を知ることにつながれば幸いです.

Q&A追加(2013年5月14日)

Q: 図から「ニコニコわり算」と「ドキドキわり算」を取り除きましたか?
A: はい,取り除きました.これらがあると,数学教育協議会の指導法に荷担していると誤解される,と判断したからです.
Q: 取り除いたのに尋ねるのも何だけど,どうして「ニコニコわり算」「ドキドキわり算」って言うの?
A: 等分除の場面で,順に1個ずつ配っていくと,あまりがなければみな同数になります.その平等感をあらわしたのが「ニコニコ」です.
それに対し,最初の子どもにある数,次の子どもにも同じ数,と配っていくと,どこで配るものがなくなるか分かりません.後ろのほうで待っている子どもは,もらえない可能性もあります.なので,「ドキドキ」と呼ばれるのです.
Q: 「ニコニコわり算」「ドキドキわり算」以外の呼び方があるの?
A: はい,たとえば『10の視点で授業が変わる! 算数教科書アレンジ事例30』p.57では,等分除に「トランプわけ算」,包含除に「まとめとり算」という名称を用いています.
Q: トランプ配りは,どう活用すればいいの?
A: 国内外の解説書によると,トランプ配りは,分離量どうしの等分除を理解するための手段として確立しています.なお,1961年の本ですが,『水道方式入門』では,「トランプ配り型」という名称で,等分除・包含除の両方に利用されています*3

*1:割合の第一用法は包含除の拡張,割合の第三用法は等分除の拡張とされますが,度の第一用法は等分除,度の第三用法は包含除に関連づけられます.

*2:「nで割る」とも「n分の1倍にする」とも読めます.

*3:それに対するものは「キャラメルの箱入れ型」という名称です.