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学習形態とセキュリティ

教育概論〔5訂版〕

教育概論〔5訂版〕

大学の生協で,先月上旬に購入しました.教育の基礎を見直そうと思い,読んでいます.
帰国直後の真夜中,時差ぼけで寝つけないときに開いたところ,次の記述が,目に飛び込んできました.

◎学習形態
教材研究を終え,目標を決定し,指導案を構想するとき,学習形態のあり方が重要となってくる.今日の教育方法論では,学習形態を一斉学習,小規模学習,個別学習に分類する考え方が定着してきた.
一斉学習は,19世紀イギリスの初等教育普及に応えて,ベル(A. Bell, 1757-1838)とランカスター(J. Lancaster, 1778-1838)が考案した助教制度に起源をもつが,わが国においても一般的,基本的な授業形態となっている。同一目標のもとに同じ教材内容を,同じ方法で,同時に学ぶこの授業形態は平等性と効率性に優れており,全児童生徒が共通に学習する基礎的,基本的知識や技能の習得には適しているが,教師主導の教授に偏って子どもの活動場面が制限されやすく,個々の児童生徒に十分な指導が行き届かない弱点をもっている。小規模学習は,グループとか班とかに分かれた学習形態をさし,一斉学習では十分にできなかった子どもどうしのコミュニケーションが容易に成立するところに利点をもっている。この利点から一人一人の子どもが自分の意見を述べる,話し合う,検討し合う,協力して調べる,発表する,作業するなど子どもの主体的活動が展開し,能力目標に掲げられた技能の習得にも資するところが大きい。学級定員の多かったわが国では,個別指導に困難があったため,小規模活動が多用されてきた経緯がある。
個別学習には,一斉学習下で十分に到達しえなかった子どもに補充的指導を加える場合と,一斉学習とは別個に初めから独立した活動として行なう場合との二様がある。後者としては,コンピュータ室で個々の児童生徒が独自のペースで学習を進めている光景を想起するとよい。学習の個別化と類似した概念として学習の個性化がある。前者が一斉学習の対局概念として個別に行なわれる学習形態をさすのに対し,後者は個人の能力や関心,学習ペースやスタイルなどに応じて各人各様に学習を進めることを意味する。授業中に生徒に作業をさせ,教師が机間指導にあたるときは,一斉学習の中に個別学習の場面が取り込まれているのである。これに対して前述のコンピュータ室での学習や,「課題研究」授業で各生徒が自分自身のテーマをもって,独自の内容と方法で学習を進めている場合は,個別学習下で学習の個性化が進められていることとなる。
個別学習は個人の条件を尊重するところに利点があるが,集団的活動から切り離されるところに弱点をもつ。このように1つの学習形態の短所が他の学習形態の長所となることから,今日では年間を通して多様な形態を合わせ用いる計画を立てたり,1つの学習形態のなかに他の形態を取りこむ授業が多く見られるようになってきた。新しい学力観に基づく授業や総合的な学習の推進過程で,多様な学習の個別化,個性化が今後展開されることとなるだろう。
(pp.52-55)

「一斉学習の中に個別学習の場面が取り込まれている」というのは,今期担当の授業(情報セキュリティ)で取り上げた,ハイブリッド暗号に似ています.平文を暗号化するための鍵は乱数をもとにつくり,対称暗号を用います.鍵そのものは,公開鍵暗号で暗号化します.「公開鍵暗号で暗号化」は実のところ必須ではなく,SSLSSHを見ていくと,公開鍵は主に認証のために使用し,セッション鍵の共有は,プロトコルで規定された(公開鍵「暗号」ではない)方法によります.
引用の最後の段落については,まず一般論として,セキュリティ要件に応じて適切な技術を選んだり,組み合わせたりして運用することと関連します.それと別に,ソフトウェアとしてgpgコマンド(GNU Privacy Guard,GnuPG)も思い浮かびます.公開鍵暗号に基づくものでも,keyring*1によらない,入力されたパスフレーズをもとにした対称暗号に基づくものでも,このコマンドで暗号化されたファイル名を指定すれば,プログラムはどのタイプかを判断して,処理していくわけです.
ここの記述に限らず,計算機技術や大学の教育研究を通じて触れたり,論文やそうでない文書に綴ったりしてきた経験のもとで,他分野(ここでは初等中等教育)の蓄積されてきた成果の一端がスムーズに理解できることを,読み進めていて嬉しく思うのです.

*1:gpg --helpで見てみると,「鍵輪」と訳しているのですね….