わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

はてブ感謝リンク感謝(201311)

アクセス,リンク,ブックマークありがとうございます.書き続ける励みになります.
いくつか取り上げて,思うところを書きます.こういうことをするのは2月以来です.

かけ算の順序論争について(日本語版)

id:bn2islander 掛け算の順序論争に関しては、結局は順序がある教育と、順序がない教育を実践で試して成績が良かった方を取り入れるしかないのかもね

対照実験ができるかについては,以前に検討しました。

個人的には,順序のあるかけ算(倍)も,順序のないかけ算(積)も(そして算数のかけ算じゃないけど「×」で結ばれた表記も)世の中にはあるので,目にしたもの一つ一つについて,そもそもこれは何で,その構成要素は何なのか,ひっくり返して書いたら意味が変わってくるんじゃないかとか,立ち止まって考えることができる子どもを育てていきたい(自由研究に「かけ算さがし」を),そんな社会を維持していきたいと思っています.

id:yetanother ああ、やっぱりしこたま研究があるのね。

これまで,まとめを作っていまして,原本を見直す必要がないときには参照しています.

それでも“ほんの一部分”です.
“算数・数学教育と数学との関わり”については,数学と教育の協同をもとに,文献が得られそうです.
児童が文章題を解くプロセスの分析にも,関心はありますが,ブラウザのブックマークに入れていたものをなくしてしまい,調査やりなおしです.とりあえず文章題の解決における問題スキーマの役割とその構成に関する研究(学位論文)の第2章が目にとまりました.

id:dslender かけ算文章題の“順序固定派”によるまとまった論考はWebでは希少。

まあWebの喧噪をよそに,各小学校ではかけ算指導が展開されているのですよね….

id:daibutsuda プログラムできない人の脳内(以下略)一番大事だと思うのはこれで×された子の算数に対する今後のモチベーション低下だと思うのだよね。

テストで×をつけたあとどうなるかというと,「回復学習」です.参考文献に載せた『教育評価 (岩波テキストブックス)』で出てくる用語ですので,ご確認いただければ.

id:GHBq96 理学的見地ではなく教育学的見地による論拠。こういうのが読みたかった。

ありがとうございます.
でもあの内容は,日本数学教育学会でもどこでも,学会に出せる水準じゃあないのですよね….

id:pongeponge 単位を書かせればいいと思う

「単位」の話は

がスタートで(駄文にゅうすでリンクされたのも,書き進める励みになりました),

  • 単位なし: 4×45=180
  • 被乗数と積に単位: 4個×45=180個
  • 被乗数はパー書き: 4個/人×45人=180個
  • すべてに単位: 4個×45人=180個

そして,1960年代あたりまでは,「単位なし」と「被乗数と積に単位」が併存していました.1960年代から1970年代においては,そこに「被乗数はパー書き」が加わります.数学教育協議会(水道方式)の展開により,この式が普及する一方で,「被乗数と積に単位」の利用頻度が下がってきます.
現在では,「単位なし」が算数の教科書や各種出題で採用されており,「被乗数はパー書き」は数教協のほか,その影響を受けた団体(学力研など)の指導に限られます.日常生活では,「すべてに単位」が,飲食物や日用品の数量表記でよく用いられています(略)

式に単位(古いもの)

が自分なりのゴールになっています.

id:Outfielder わさっき先生はガチ

眠る時間をください.身から出た錆なのですが…

id:dergeist この問題で何か言う前には賛成でも反対でも必ず読むべきだし素人ならこれさえ読んどけばよい記事。すばらしい。

ありがとうございます.
そうこう言っても,かけ算の式の順序にこだわってバツを付ける教え方は止めるべきであるは偉大なる先駆者です.

id:lastline やっぱ単位書け派だなぁ / かける数とかけられる数って言葉が元凶かなぁと思った。順番が本質な訳じゃなぁないわけで

単位は上に書いたとおり.スラッシュ以降は,

  • 小学校で「かけられる数×かける数」と習うそうだけど,そうじゃない種類のかけ算もあるんだよ

  • 小学校で「かけられる数×かける数」と習うそうだけど,「かける数×かけられる数」と書くことも(学校の外では)あるんだよ

が含まれているように感じました.ちなみに後者はA-6とB-6,前者は12個の理由の中ではB-6が最も関連します.

Towards Order-of-Multiplication Dispute (English Version)

英語版も11月15日にリリースし,ちょくちょく手を加えています.
記事を英訳したのは3回目です.すべて「かけ算の順序」関連です.まとめておきます.

タイトル 日本語版 英語版
りんごのかけ算(倍と積) 2011年11月17日 2011年12月24日
アレイ図 2012年1月25日 2012年6月12日
かけ算の順序論争 2013年11月16日 2013年11月17日

11月17日付の記事,現時点ではてブこそないのですが,昨日,英語フォーラムで議論が起こりました.

さっと目を通したところ,海外でも否定的な意見が多数と思ってよさそうです.「いや同じだろ」「単位をつけるべきだ」の主張も,ずいぶんと見かけました.「日本にいたが」「妻が日本人だが」から始まる感想もあり,見たところすべてネガティブでした.
パー書きの分離量表記は,「4 tires/car」として出現していますが,みんなが採用しているわけでもなさそうです.トランプ配りの賛同者も,見当たりませんでした.
ただ,こちらの書いた中身への言及がほとんど見られないのは,少々残念でした.次回,英文の新たな記事が出せるかどうか,分かりませんが,英語力とプレゼンテーション能力を向上させ,読みやすく説得力のある文章が書けるよう,努力するとします.

拡散希望

id:atsushifx 前提として小学校2年相手で問題文から正しい式を立てられているかどうかが問われているいるのだが。まとめ http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20131116/1384560000 は読んでほしいところ

http://b.hatena.ne.jp/atsushifx/20131119#bookmark-169801150

id:sisui_ro
【ぼんやり】
ああ、これは良い。
かけ算の順序論争について(日本語版)
http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20131116/1384560000
掛け算問題に関する批判者の人は
まず最低でもこれを読んでから反論して欲しいものだ。

【ぼんやり】 ああ、これは良い。 ... ... 掛け算問題に関す... - sisui - sisui - はてなハイク

ありがとうございます.グリーンスターをつけさせていただきました.


本日は和英とも本文修正なしの予定です.なんとか時間をとって,明日の朝,またリライトすることにします.

2013-11-21 晩に追加

id:mobanama "かけ算は「かけられる数×かける数=かけ算の答え」の式で表される"なんでこれがアプリオリに前提となるのか。ここが便法にすぎないのではないのか。

明治期から,戦前・戦後,そして現在まで続く,慣習です.ノート:かけ算の順序問題 - Wikipediaに「サンドイッチの法則」を設け,海外事例([Vergnaud 1983])とともに,いくつか事例を挙げました.
当ブログで書いてきたものだと…明治期で念頭に置いているのは『筆算訓蒙』です.実数は名数,法数は不名数で取り上げました.また緑表紙教科書の編纂に携わった高木佐加枝は,被乗数先唱を採用した理由の中で,「3錢×5」(昭和初期の《BA型》)や「5円×8」(筆算の順序)を例示しており,ここにも「かけられる数×かける数」を見ることができます.

id:altar “A-4は/8〜9歳児では認識が困難/4年または5年で,数量関係の理解を通じて学ぶのが適切” これについては今の説明だけでは疑問が残る。別の思考体系を自然とする子供を、左利きのように無意味に矯正することになる。

一休さんの虎の話ではないですが,「別の思考体系を自然とする子供」の存在について,学術的な検証が先にあるべきではないでしょうか.
私は[Mulligan 1992]と[中島1968a]に書かれている実験や調査の結果から,「かけられる数×かける数」にせよ,「因数×因数」(かけられる数とかける数の間で実質的な区別のないかけ算)にせよ,児童らが学校・家庭などで教わる*1ことなく,そういったかけ算のモデルを知覚しているという可能性は,極めて低いという認識を持っています.

「何のために」かというと,算数・数学,そして世の中で用いられているかけ算(乗法構造,乗除算のモデル)には,かけられる数とかける数がはっきりと区別される「倍」と,それらが区別されない「積」があり,まずはきちんと「倍」のかけ算を理解しましょうということです.
小数のかけ算に関して,「倍(multiple)」を考察の対象とし「積(product)」は取り上げないと明記した上で,子どもたちの学習過程を分析した紀要論文がありますし,今年出た『算数の学習プリント―学力調査・算数的リテラシーに対応! (教育技術MOOK)』では,「倍」と「積」という表現こそないものの,「倍」の場面ではかけ算の式は1通り,「積」の場面では2通り*2となっています.
「積」を「倍」に帰着して式を得る試みは,算数教育および数学でそれぞれ事例があります(『10の視点で授業が変わる! 算数教科書アレンジ事例30』,[田村1978]).「積」に基づくかけ算の指導には,国内外で課題が指摘されています(かけ算には本来,順序がない).あとは,「積」で考えている児童が(学術調査において)見当たらないことを挙げておきましょう.
ところで「大前提」とあるのですが,[twitter:@_nagashimam]さんにとってそれは何なのか,具体的な記述がないと,確認のしようもありません.ともあれ私は「かけ算の順序論争」の構図を,次のようにとらえています.日本の算数教育では,「倍」と「積」の違いは,学術上*3,また実践上も,認識されていて,それぞれに配慮した指導法や出題がなされてきました*4.しかしりんごの問題を含め,「倍」の出題をことさらに取り上げる人々がいます.それが,小学校でなされているかけ算の指導のすべてだ*5といわんばかりに,批判しているのです.

id:koemu 結構長い。参考文献もたっぷりある。

最後までお読みいただき,ありがとうございました.
URLを付けた文献には,ダウンロード無料のもの,有料のものがありますが,まずは無料のものからお試しください.とはいえ有料のものも,「かけ算とは,何なのだ?」を追求するには,読んで損のない文献です.

id:oktnzm 立式時の要素に答えと同じ単位のものがあればそれを先頭に書け。ということでよさそうやね。小学校の説明って抽象概念を避けるからわかりにくいんだよね。

単位に着目するのは,高学年になって

  • 1mの高さから落とすと,0.4mの高さまではね上がるボールがあります。このボールを0.8mの高さから落とすと,何mの高さまではね上がりますか。

  • 0.8mの高さから落とすと,0.4mの高さまではね上がるボールがあります。このボールを1mの高さから落とすと,何mの高さまではね上がりますか。

とで混乱するんじゃないかなあという不安があります.
前者はかけ算の式になりますが,こちらには元ネタがあります(4マス関係表.値を変えています).後者はわり算です.

2013-11-22 未明に追加*6

時間をとって書いていただき,ありがとうございます.
この中の「生きる力」「何のために倍と積を(子どもが)区別しないといけないのですか」について,真っ先に思い浮かんだものがあります.もう一つのブログで,昨年末に書いた記事です.

その意図を改めて書いておきます.日常生活には,倍の役割の「×」,積の役割の「×」*7,計算のできない「×」があります.そういった事例を発見し,分類することで,小学校の算数で学習したのと同じ考え方ができる(かけ算の計算によって,意味のある数量が得られる)ものも,そうできないものもあると知る,良い機会になるのではないかと考え,自由研究を提案したのでした.この提案は,「算数的活動を通して」から始まる文に対し,直接的に算数教育に携わっていない自分ができる,子ども向けの試みとなっています*8
そういった提案をする前に(してからも),事例を集めています.http://d.hatena.ne.jp/takehikoMultiply/には「事例」カテゴリーで今のところ84個の記事を置いています.
分類については,当ブログに戻って,次のところでまとめています.*9

「倍」の使いどころについて,「4×15と15×4は等しいけれども,4個×15セントによって60セントが得られ60個ではないのはなぜか」を用いて説明します.「4個×15セント」は,15セントのほうがかけられる数(一つ分の大きさ),4個のほうがかける数(幾つ分)に対応し,かけ算の結果,得られるのは15セントの4倍で60セントになる,という次第です.
かけられる数とかける数の区別の仕方ですが,海外では「かける数には単位を書かない」を経験則としておくと,多くのシーンで役に立ちます.上の例だと,「4×15¢」となります.それに対し日本では,日常,どちらにも単位を書くのですが,かけられる数を左に置きます.「15セント×4個」です*10.これは商品の数量表記の話であり,同僚間のメール*11なんかだと「5人×3コマ=15コマ」*12なんてのを見ることができます.
記事には,国内外の商品(「Croissant×3」「3×80g」「1.5kg×4箱」)や,モンパレに見られるかけ算も取り入れています*13.takehikomが「算数」「慣習」だけでなく,「子ども」「日常」,そして「いま」「これから」にも目を向けて,文章をとりまとめたということ,少しでもご理解いただけましたでしょうか.
補足:「B-3, B-4 の解釈」は,英語の仮定法です.「もしあなたがりんごの問題で5×3と書いたら,その式は他の人に,これこれこういう意味になって伝わっちゃう(ことになる/かもしれない)よ」です.英文では「If someone wrote "5 x 4", then the expression would represent "4 five-wheeled vehicles" or "4 houses each of which has 5 cars".」と表現しています.英文の味わいも合わせてどうぞ.
さらに追記:「数学や、物理学などの学習まで念頭に置いています」を読み飛ばしていました.小学校で学習するかけ算と,数学とをリンクするものとして,[田村1978]とラベリングした『量と数の理論』が簡潔で読みやすいです.物理学については,PV=nRT(wikipedia:ボイル=シャルルの法則)が複比例を背景としていることを以前に指摘しました.小学校の算数には数学がないのか - 算数≠数学?にリンクしておきます.

2013-11-23 早朝に追加(1)

60件のリツイートには,びっくりです.多くの人に(リツイートからは同意・不同意は読めませんが)反響のあったところだと,いたく感じております.
さて,「演算決定は,交換法則の適用よりも前に行わなければならない」は,次のQ&Aを凝縮したものとなっています.

Q: 交換法則から,「3×5=15」は「5×3=15」と書けませんか?
A: 書ける・書けないで言うと,その2つの等式,さらに「3×5=5×3」は,小学校でも認められています.しかしそこでいう交換法則は,3×5あるいは5×3という式から出発して,得ることのできる関係式です.なお,アレイ図を使った交換法則については,あとで取り上げます.
《りんごの問題》では,かけ算の式がない状態から,式を立てることが期待されているので,適用できません.

「×」から学んだこと 13.04―出題

上記回答は出典がなく,実のところ自分の表現なのですが,『数学教育学研究ハンドブック』では「演算の意味」と「計算手続き」に分け,乗法の交換法則は「計算手続き」の中で言及していることを,踏まえています.
その一方で,上のツイートでは(そして自分の書いた文章でも),次の主張が抜けてしまっています.すなわち,「かけられる数×かける数」や「一つ分の大きさ×幾つ分」といった,学習済みの言葉の式に,乗法の交換法則を適用すると,「かけられる数×かける数=かける数×かけられる数」や「一つ分の大きさ×幾つ分=幾つ分×一つ分の大きさ」といった等式が得られ,そこから,「かける数×かけられる数」や「幾つ分×一つ分の大きさ」も,その場面を表した式である,と言うことができます.これはA-1とA-5が関連します.
ただしこれについても次のとおり,Q&Aにしています.

Q: 交換法則を言葉の式に適用したら,「いくつ分×一つ分の大きさ」もかけ算の式として,認められるのでは?
A: 学校教育はその考え方を採用していません.
理由としては,かけられる数とかける数の区別が曖昧になり,かけ算の結果得られる数量(単位も)が何になるのかの説明がしにくくなるためと推測できます.
そのほか,「一つ分の大きさ×いくつ分」でも「いくつ分×一つ分の大きさ」でもよいという考え方は,一つの式(例えば「5×3」)で表せる対象を,広くとることを意味します.「一つ分の大きさ×いくつ分」のみだと,一つの式で表せる対象が,より狭くなりますので,被乗数・乗数を交換した式との書き分けが行えます.
それぞれにメリット・デメリットがあるわけで,そのもとで採否あるいは取捨選択が行われ,教室内で運用されていることも,認識をしておきたいところです.

「×」から学んだこと 13.04―かけ算の意味・式の意味

「かけ算の結果得られる数量(単位も)が何になるのかの説明がしにくくなる」とは,「4個×15セントによって60セントが得られ60個ではないのはなぜか」のことです.これはかけ算の問題の構造で書いた内容が背景にあります.

2013-11-23 早朝に追加(2)

「3.1の図のような解答解式」のところは,本文では書きませんでしたが,2年に一度の学力調査で,今回(平成24年度),出題方法が変更された箇所です.6年は鉄のぼう,2年はみかんで取り上げています.
「式で表す」「式を読む」については,算数・数学教育の中でいろいろ成果があるらしい(例えば「擬変数」に着目した研究が興味深そう)のですが,調査しきれていません.

式を読み取る練習の中で,「まず5本のタイヤを,5台の自動車のそれぞれ左前に取り付け,次に5本のタイヤを,5台の自動車のそれぞれ右前に取り付け,それから5本のタイヤを,5台の自動車のそれぞれ左後ろに取り付け,最後に5本のタイヤを,5台の自動車のそれぞれ右後ろに取り付けると,1つ分が(タイヤの数の)5本(問題文には「5台」とあるけれど「5本」に読み替えた)で,いくつ分は(取り付ける数の)4か所(ヒントには「1台にタイヤは4本」とあるけれど「(取り付ける数の)4か所」に読み替えた)だから,5×4=20.これは,問題文の状況を表した式である.」と書きました.
その記事では,間違いとする理由の説明を2つ,正解とする理由の説明を2つ,置いていて,順にB-3,B-4,A-2(上記),A-3と対応づけることができます.
デカルト積のピクトリアルに載せた「ふしぎな花のさく木」も,関連します.
あと「反例」について,「ナニナニという主張があるけど,コレコレという主張も成り立つんだよ」という意味だと理解しました.言ってみれば後出しじゃんけんです.かけ算の順序論争から離れますが,ホテルから空港へ行く手段で書いた「「絶対バス!」「いや,どうみてもタクシーだろ」などと,一方を採用して他方にケチをつける」と関係します.同記事ではそのあと,「選択する」「場合分けして結論を出す」を支援する方向に進めています.ここでバスやタクシーといった交通手段(などを最初にリストアップしておくこと)は,件の記事の,12個の理由に対応します.

文章では素性を明かしていませんが私も理系に属します.例えば3×5=5×3とはでは,学生時代に勉強し,当時論文を書くのに活用した「項書換え系」を使って,等式の意味や導出のことを説明しています.2011年2月に書いた自己紹介もどうぞ.

ディベートについては,「×」から学んだこと(3年前の11月末,初めて作ったQ&Aです)の最後に書き,その翌年,「かけ算の順序」のダブスタ考にて「私がしたいのは,ディベートではなく,頭の中の整理です」と書きました.
少し考えてみると,りんごの問題の画像をもとに,不正解とすることに賛成か反対かというのは,ディベート(競技ディベート)の論題になるのかなとも思います.例えば学力調査*14の正解率の低さをもとにして,その種の出題は不適切だとも,他の低い問題と同様に適切な理解が必要とされているとも,主張することができそうです.

2013-11-23 早朝に追加(3)

だいぶすれ違いますね.おつかれさまでした.
PV=nRTに関しては,直後にWikipediaエントリを引きましたが,複数の比例・反比例の関係を一つの等式で表しています.これはまさに「複比例」なのです.
[Vergnaud 1983]に関して,当ブログではよく,次の一節を引用しています.

The Cartesian product is so nice that it has very often been used (in France anyway) to introduce multiplication in the second and third grades of elementary school. But many children fail to understand multiplication when it is introduced this way. The arithmetical structure of the Cartesian product, as a product of measures, is indeed very difficult and cannot really be mastered until it is analyzed as a double proportion. Simple proportions should come first.

このうち"a double proportion"は,z=kxy(kは比例定数,特にk=1ならz=xy)という関係で表される,複比例の中でも最も簡単なものと理解しています(これと比較すると,PV=nRTは,より複雑な複比例の関係です).複比例の理論的背景は,例えば『量の世界―構造主義的分析 (1975年) (教育文庫〈8〉)』で記されています.「倍比例」という言葉を,算数教育で見かけますが,別物です.
「算数教育の研究者(大学教員)」の件は,電話で問い合わることの事例3で検討しています.ところで現在まで,出題・採点の事例として

が確認されています.学術調査だと,[金田2008]のほか,以下の文献で,「7×2.4の式で求められる問題」を作らせる中で,2.4×7になる文章題は不正解としています.

このような事例があるのですが,やはりこれらは不適切ですかと,その研究者に聞き直すことは可能でしょうか.

*1:自分で本を読んで学ぶことも,「教わる」に含まれます.

*2:2通りどころか,ある○の並びに対して,4通りの式が書かれ,それぞれの式になる理由(区切りの線)を問うものがあります.これは「式を読み取る」や「算数的活動」と密接な関係があります.批判する人々は「算数的活動」「言語活動」をはじめ,学習指導要領改訂に伴う重要なキーワードを無視しているなあ,そして教具や出題の変化についていっていないなあ,という印象を持っています.

*3:数学教育学,古くは教科教育学(数学)においてであって,数学という学問とは別です.

*4:小学校に足を運んで授業を観察しなくても,ドリルやテスト,学習指導案,学級運営や算数教育の定期刊行物を通じて,出題を手広く集め,整理していけば,確かめられます.

*5:『かけ算には順序があるのか』p.47の「しかし,小学校の先生(の一部)が,かけ算の式には「1つ分の数×いくつ分」という,数学的にも算数的にも正しい順序がある,と子どもたちに教え,自らもそのように信じているとしたら,それは,改めるべき間違いです.」が最も特徴的です.

*6:その後,何度か書き換えています.

*7:量どうしの積よりもむしろ,デカルト積に対応するものが見られます.

*8:個人的なことを言うと,いちばん上が年中ですので,九九などまだまだです.ですがさんかけさんは?4分の1の3分の1の2分の1に書いたとおり,算数を使って楽しんでもらう手段はあります.

*9:ブログの外だと,wikipedia:×が興味深いです.そこで書かれておらず,自分のまとめに入っている用法もあります.

*10:もし,子どもが「4個×15セント」を見て,「あれ,これじゃあかけ算したら,60個になっちゃうんじゃない?」と尋ねたら,算数で学んだことを結びつけて考えたことをほめた上で,かける数×かけられる数で表されるかけ算もあると,伝えればいいのです.いたずらに混乱をあおる必要はないのです.

*11:「同僚間のメール」と「商品の数量表記」との間には,読んだ人が書いた人にレスポンスを送りやすいか否かという違いがあります.すべてが必要なコミュニケーションで書いた中の「双方向」です.違和感を持ってもレスポンスのできないお客さんのために,できるだけ誤解されないよう,そしてできるだけ簡潔にした表記が,例えば「1.5kg×4箱」です.

*12:個人的にメールを読み書きしている経験では,「5人×3コマ」という,総量を書かない「幾つ分×一つ分の大きさ」の頻度は少ないです.「5人×3コマ=15コマ」「3コマ×5人」(と同様の表記)のほうが多いです.

*13:Androidでちょっとずつ遊んでいる,ぷよぷよクエストでも,「もの×数」,とくに「もの×1」が,頻発しています.

*14:全国を通じて実施し,問題文と正答率が公表されていて,りんごの問題と同様の出題のあるものに,http://www.sokyoken.or.jp/kanjikeisan/keisan_h18.xhtmlがあります.