詳細を見ていって,最後が以下のツイートです.
うーんなんともの感があります.自身が周回遅れであることに,気づいてらっしゃらないようで.
「和大の」というのは,おそらく,以下のくだりを参照されたと思われます.
外国の算数においても,『俺ルール』と称されている約束を前提とした出題例を,見ることができます.
- http://www.youtube.com/watch?v=vhaOzXSLSyw(台湾)
- http://cafe.daum.net/seaugjang/9MER/23?docid=1IFsc9MER2320090705125934(ベルギー)
算数教育に関する英語文献では,イエスバット法で,a×bとb×aの違いを確認する事例が記されています(略)
コメントから,広がりを見せる - わさっき
台湾の件は「公開日: 2013/11/16」とあり,ずいぶんと新しいものです.なお,http://www.chinatimes.com/realtimenews/20131116002929-260413には動画の他に文字の解説もあり,「2013年11月16日 20:17」と時刻まで入っています.
オープンマインドの姿勢でその報道を受け入れ,通してよく見た上で,ほかはどうなっているか,時間的に空間的に,また他の学問分野と,どのようなつながりがあるかを明らかにしていこうという文化が「かけ算の順序」の批判者らには醸成されておらず,一連のツイートは,傷をなめ合っている状態に見えます.
さて,世界で見たときの「かけ算の順序」はというと,「日本では5×3と表されるものが,他の国だと3×5と表される」と言うことができます.2013/11/16付で,まとめてあります.
しかしかけ算の順序を含め,日本の方式をそのまま海外に浸透させようというのではなく,各国の言語や文化に対する配慮も見られる.例えば馬場卓也[馬場2002]は,タイ語のかけ算の自然な語順は日本語と同じであるが,教科書の式は英語と同じという観察から,学習者の認知的な負担を指摘し,他の事例と合わせて,教育の国際協力におけるカリキュラム開発の注意点を提示している.(略)
かけ算の順序論争について(日本語版) - わさっき
- [馬場2002] 馬場卓也: 数学教育協力における文化的な側面の基礎的研究,平成13年度 国際協力事業団 客員研究員報告書 (2002). http://ci.nii.ac.jp/ncid/BA65639013 http://jica-ri.jica.go.jp/IFIC_and_JBICI-Studies/jica-ri/publication/archives/jica/kyakuin/pdf/200203_08.pdf
「各国の言語や文化」という表現から,掛け算の順序と自然言語の対応についてちょっとだけ - 誰がログを連想する人がいたとしたら,そこで「面白い論文」と取り上げられている文献([柳原2008]と書きます)を,上の[馬場2002]と合わせて読むことをおすすめします.[馬場2002]にも,「サピア=ウォーフの仮説」への言及がありますし,かけ算ではないですが,フィリピノ語ではこうだという事例紹介をしています.社会言語学や言語教育研究の観点で,[柳原2008]は[馬場2002]の記述を後追いしながら書き,かけ算の順序に批判的な人々は,[馬場2002]をチェックすることなく[柳原2008]や,それを取り上げたブログ記事に賛意を示してきたというのが実情です.なお,[馬場2002]の著者については,国際比較に追加の前半でフォローアップしています.
かけ算の順序の国際比較をもとに,「だから3×5でも5×3でもいいのだ」と主張している書籍や解説記事は,なかなか見当たりません.
最も近そうなのは「5円の品3個の代金の立式は「3×5」ではダメなのか」(『算数・数学教育つれづれ草』pp.46-47)ですが,これとて著者は,外国がこうだから正解という立場をとっていません.「外国では,5セントの品3個の代金を式にすると3×5」と主張する人がいたら,「それなら,3セントの品5個の代金を式にすると5×3だよね」と言えばいいのです.
「我々はこれを5×3(かけられる数×かける数)と書く.他の国では3×5(かける数×かけられる数)と書くんだけどね」と確認し,「我々のルール」で式に表したり,式に合う問題を作ったりすることになります.学会の解説だとhttp://ci.nii.ac.jp/naid/110007994852,書籍なら『小学校指導法 算数 (教科指導法シリーズ)』のpp.91-92でも,国際比較を取り入れながら,同様のことを記しています.
自分が書いたことにも,フォローアップを.上の引用で「算数教育に関する英語文献では,イエスバット法で,a×bとb×aの違いを確認する事例が記されています(略)」とした件,一つリンクを忘れていました.
この記事で(記事を書くきっかけとなった)先頭のURLは,現在無効となっています.ですがwikipedia:en:Multiplication_and_repeated_additionのReferencesではリンクが更新されていました.そのURLをもとに,「かけ算の順序」に関する主要な箇所を再度,抜き出しておきます.
For instance, the mathematician's concept of integer or real number multiplication is commutative: M x N = N x M. (That is one of the axioms.) The order of the numbers does not matter. Nor are there any units involved: the M and the N are pure numbers. But the non-abstract, real-world operation of multiplication is very definitely not commutative and units are a major issue. Three bags of four apples is not the same as four bags of three apples. And taking an elastic band of length 7.5 inches and stretching it by a factor of 3.8 is not the same as taking a band of length 3.8 inches and stretching it by a factor of 7.5.
What Exactly is Multiplication?
かけ算ではないのですがたし算を使って興味深いコメントがあったので転載します.
Apeman 2014/02/09 20:11
http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20140206/p1#c1391944265
白ヒグマさん、よろしくお願いします。
たまたま「1+1=3」と間違えて学んじゃったんではなくて、「1+1=3」だと言い張りたい動機が強烈にありそのためにありったけの知的リソースを注ぎ込んでいる……のが歴史修正主義者ですからね。それにしたってそろそろ「オレたち、国際社会では全く勝ち目がないのでは?」と気づいてよさそうなものです。
「1+1=3」を「5個ずつ3人に配ったときの式は3×5」に置き換えれば,「だと言い張りたい動機が強烈にありそのためにありったけの知的リソースを注ぎ込んでいる」と繋がります.
「1+1=3」には「1+1=2だと言うが」が前に隠されている点も,挙げておきましょう.かけ算の順序論争だと,「5個ずつ3人に配ったときの式は5×3だと言うが」に置き換えられます.
Q: ツイートで言及されているの,何で知ったんですか?
A: 本記事冒頭のツイートは,いきなり見つけたり,Twitterのタイムラインに飛び込んだりしたのではなく,相互にフォローしている方の,以下のツイートから知ったのでした.
Q: 「オープンマインドの姿勢」って何ですか?
A: 「心を開く」でいいかと思います.事例は,Googleその他でお探しください.「オープンマインドでない姿勢」として,http://blogs.yahoo.co.jp/tamusi22/38385940.htmlの最初のコメントを例示したいと思います*1.
(最終更新:2014-02-12 朝)
*1:オープンマインドな姿勢だと,「の意味が分かりません」のところを例えば「についてご教示ください」に,「不要になります」は「不要と聞いたことがあります」にして,その後の文は丸ごと変更かなあ.