某年月日
「あのね」
「ん? 何や」
「今日さあ，さきの子ちゃんを，耳鼻科に連れてったんよ」
「ほお，ああ，何や耳がおかしいって言うてたな」
「それでわかってんけど…」
「…」
「この子の耳の中に，大きな耳垢があってねえ」
「耳垢かいな」
「中どうなってるか，画面で見せてくれるんよ!」
「（画面て…うえの子を連れて行ったときに，1回だけ見せてもらった，あれか）」
「もう固まってて，黒ぉなってて，あれすごいな」
「んん…で，取ってもろたんか?」
「それやねんけど，そのまま取ったら，中で血ぃが出たり，鼓膜も破れるかもしれへんからって」
「物騒やな．取られへんのかいな?」
「ふやかしてもらったんよ．今度行くときに，取ってもらうねん」
「へえ」
某年月日
「あのな」
「ん? どしたん」
「帰ってな，居間にちょっと座って，ひと息ついてたらな」
「お子ちゃんら元気やろ」
「せやな．真っ先に，さきの子が近づいてきてな…」
「…」
「膝の上に乗ってくるんかと思ったら」
「乗らんかったん?」
「俺の耳掃除しはじめたぞ! 綿棒持ってて，耳の中に入れて!」
「あら! かいらしやん」
「びっくりしたぞ」
「耳垢，取ってもろたからねえ」
「ああ，今日，行ってきたんか!」
