わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

棒の数は,4×9? 9×4?

いきなりですが問題です.下の図で,棒(黒線)の数を求めてください.

いつものように元ネタです.

  • 盛山隆雄: 安心して成長できる学級を目指して―数学的表現の役割分担と発表内容の幅の拡大を通して―, 算数授業研究, Vol.96, pp.24-25 (2014). isbn:9784491030647

さっそくですが解答です.実は,自分で答えを考えるより前に,4×9で求められる図(p.24)が,目に入ってしまいました.ともあれ,自分なりに描いてみます.
*1
このように,正方形9つで図形が構成されていることに気づけば,一つの正方形をつくるのに4本の棒を必要とし,それが9個あるのだから,4×9=36 答え36本となります.
読み進めずに,これが9×4で表せれば面白いなと考えてみました.
縦の棒の左半分は,1+3+5で9本です.そして,縦の棒の右半分は左右対称ですし,横の棒の上半分,下半分も同じ形です.色分けしてみます.
*2
ということで9×4=36 答え36本になったぞ,バンザイ…と思ったら,きっちりとp.25に書かれていました.式は「(1+3+5)×4=36」でしたが.
ある場面を,かけられる数とかける数を交換した式を含め,いくつかの式で表すことができ,それぞれに求め方が異なるのは,算数の授業の楽しさの一つだと思っています*3.なお,「場面」と「求め方」について,今回取り上げた記事では「図的表現」と「記号的表現」という言葉が用いられていました.学年は明示されていませんが,「(1+3+5)×4=36」というカッコ付きの式のほか,http://www.shinko-keirin.co.jp/keirinkan/sansu/WebHelp/04/page4_08.htmlが類例であることから,4年の授業とするのが最適と思われます.
こういった出題が,いわゆるかけ算の順序論争で見かけないのは,一つは批判する人々の関心ではないため,もう一つは私も含めて,Web上での主だった発言者が,小学生向けに授業を計画したり実施したり,同業者(他の先生方)に報告したりするといった,「相手」を持っていないからと,言わざるを得ません.


算数授業研究Vol.96で,他に目についたところは:

  • p.9*4:「詳しくは,WEBで見てね」の話.その場にいたら笑えたかもしれないけど,文字で説明すると字数が多くなって無粋にも.当ブログの何割かの記事(親馬鹿カテゴリを中心に)も該当するので,注意しないと.
  • pp.9-10:「昭和26年度 小学校指導要領・算数科編(試案)」が引用されている.『算数科の一般目標』は…http://www.nier.go.jp/guideline/s26em/chap2.htm
  • p.42*5:「クラスの子ども全員が一列に並んでいます。(1組:省略)2組…しょうた君の前には6人,けんた君の後ろには5人,しょうた君とけんた君の間には2人並んでいます。人数が多いのはどちらのクラスでしょう」は,http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20120807/1344282059http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20111112/1321037926の組み合わせになっていて*6なるほどの感.先生の誘導を入れながら授業で出題するのはいいけれど,テストには出しにくいかも.
  • p.46*7:「4人の子が,それぞれ3本ずつ花を持っています。花は全部で何本でしょうか」と,「3×4=12」の式を提示してすぐに解説.4×3を検討しない*8よう,文章が構成されている.

*1:http://jsfiddle.net/takehikom/cLL6p3z0/4/

*2:http://jsfiddle.net/takehikom/cLL6p3z0/5/

*3:他の例:http://blogs.yahoo.co.jp/tamusi22/36456184.html, http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20120308/1331132462

*4:細水保宏: 教師の人間性が子どもに伝わる算数授業を.

*5:中野良喜: 「答えは本当にそれだけか?」と問い続けられる子に.

*6:しょうた君が前でけんた君が後ろ,とは書かれていない点に注意.

*7:夏坂哲志: かけ算(ツーランクアップを目指す 算数授業人のための 初等教育学〈算数科〉基礎・基本講座 第3回, 2年).

*8:当ブログをよくご覧くださっている方々にはご承知かと思いますが,かけ算が用いられる場合や,かけられる数・かける数の意味については,海外文献にも同様の展開のものがあります.http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20130216/1360948813#greer1992