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平成28年度数学教科書を見る〜「正の数と負の数」を中心に

 教科書展示会に,行ってきました.法定展示期間は,6月19日(昨日)から14日間ですが,昨日は,授業にゼミに,会議に締切対応に,家に帰ったら子の世話に,時間がとられてしまいました.
 大阪府では法定外展示をしている*1のを知りまして,数日前に某図書館に行き,少しばかり,目を通してきました.
 来年度から新たな検定教科書になるのは,中学です.そこで中学1年の数学を,読むことにしました.マイナス×マイナスや,文字式の書き方なども,関心がありました.
 最も時間をかけて読み,ノートに書き留めることができたのは,日本文教出版でした([116|日文|数学735].平成27年2月27日検定済.以下この教科書見本を「日文」と書きます).他に東京書籍と大日本図書の教科書も,短時間ながら読むことができました.
 これらに共通していたのは…

  • 最初の章は,「正の数と負の数」です.
  • 「正の数と負の数」の章の中で,加法・減法・乗法・除法の各用語を定義しています.
  • 正負の数の乗法については,(速さ)×(時間)=(道のり)の式をもとに,まず速さが正の定数のときに,時間を正・0・負へと1ずつ減らしていったときの道のりをそれぞれ求め,次に,速さが負の定数のときに時間を同様に変化させて求めていました.
  • 除法の中で,逆数が定義されており,「ある数でわるには,その数の逆数をかければよい」とありました.
  • 加法と乗法のそれぞれで,交換法則・結合法則の説明と式がありました.「順序」という言葉も使われていますが,計算における性質であるのが重視されています*2

 上記について,日文の書き出しを交えながら,もう少し書いておきます.加法の定義は,次のようになっていました(p.20).

たし算のことを加法といい,その計算の結果を和といいます。

 ここで「加法」のみが太字でした.「和」の用語は,小学校で学習済ということでしょうかね.
 乗法の交換法則・結合法則の説明は,こうでした(p.43).

乗法だけの式は,計算の順序を変えたり,組をつくったりして,計算することができます。
  乗法の交換法則  a×b=b×a
  乗法の結合法則  (a×b)×c=a×(b×c)

 計算における性質ほか,2つをセットで扱っているのも見て取れます*3
 さらにこれは,文字式で「×」を省略する(たとえばa×3×bを3abと表す)際の前提となっています.なお,文字式の章で,「ab=ba」「(ab)c=a(bc)」といった式は,見かけませんでした.
 日文で,興味を引いた記述を2点,記しておきます.第1章に入る前のp.7に,パー書きが出現します.「速さの単位を,次のようにかく場合があります。」と述べたあと,「時速4km → 4km/h」「分速80m → 80m/min」などの例示がなされていました.しかしパー書きは,正の数と負の数には出てきません.方程式のところ,p.110で,妹と兄の道のり*4を表にするときに,表頭に「速さ(m/min)」として出現しました.その下では,妹は「80」,兄は「320」と,単位なしの数が書かれていました.
 それと,正の数と負の数の計算の応用として,5日間の貸出冊数の平均を(仮平均を使って)求めるとき,貸出冊数の棒グラフ(p.50)は,省略の波線入りでした.

*1:http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/5685/00000000/H28tenji.pdfデッドリンク

*2:「かけ算の順序」に関心のある人向けに言い換えると,ある場面を□×△と△×□のどちらで書いてもよいというのは,中1数学の教科書からも,読み取ることができませんでした.

*3:新式算術講義 (ちくま学芸文庫)』で,積は因数の順序に関係しないことを,「組み合はせの法則」(結合法則)と交換の法則の両方に対して言及していることを,思い出します.

*4:問題文は:「妹は家から1500m離れた駅へ向かって歩き出しました。その12分後に,兄は自転車で妹を追いかけました。妹は分速80m,兄は分速320mで進んだとすると,兄が妹に追いつくのは,兄が出発してから何分後ですか。」