「ごちそうさん.では着替えて,出勤するか」
「お,すえの子よ,おばあちゃんからハムもろてんな,良かったな」
「ママぁ,あたしもハムほしい〜」
「ん? うえの子か.冷蔵庫から,ハム探しなぁよ」
「あれ,最後の1枚やないかな」
「へえ.それやったら,我慢しよか,うえの子よ.あるいは,他のおいしいもんを頼むとかやなあ」
「ハムほしいねん,ハム,ハム〜〜!!」
「そないに泣かんでも」
「…なあ,すえの子よ,お姉ちゃんに,分けちゃってくれるか?」
「(首を横に振る)」
「そうなるわなあ.お姉ちゃんに,取られやんようにしぃや」
「おっと,着替える前に,催してきた…」
「ん? トイレから出てきたら,泣き声の主が変わっとるぞ.すえの子かよ」
「こっちの部屋やのぉて,あっちの部屋で,ぎゃあぎゃあ言うとるなあ」
「お姉ちゃんは,こっちの部屋でテレビを見てて…」
「状況としては,なになに,おばあちゃんが半分に分けようと言うたけれど,すえの子が抵抗して,おじいちゃんのそばまで逃げ込んだんか.けど取られて,泣いたんやな.ハム最後の1枚をめぐって,そんな争いになってもたとは……」