わさっきhb

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順序自由にしている中国でも

647に,当ブログの名前が書かれていました.

647 :132人目の素数さん:2016/04/13(水) 01:48:58.53 ID:x9+7lC5u
分離量の乗法から、連続量の乗法に拡張する際に、やはり困難さがあるんだよ。
わさっきさんのブログでも、実際に順序自由にしている中国でもこの部分で子供は混乱しているとある。
(略)

中国の状況はhttp://www.nier.go.jp/seika_kaihatsu_2/risu-2-310_s-china.pdf#page=9より読むことができます.混乱ではなく「量の扱いではやはり不具合があって」と書かれています.分離量や連続量は,出てきません.
ブログほかで書いてきた中で,中国のこの件を挙げたものを,取り出してみます.

個人的にはこの件,「分離量の乗法から、連続量の乗法に拡張する際」よりも前の段階で,不具合が発生するのではないかと思っています.かつて,以下のように書いていました.

長さや重さなど,量を含んだかけ算の場面・問題に対し,かけた結果がどんな量で,答えにどんな単位を添えればいいかまで,考える必要があります.被乗数と乗数をともに「因数」として区別しない方針は,その解決を遠ざける方向に向くように思うのです.

かけ算には本来,順序がない

このうち,「かけた結果がどんな量で,答えにどんな単位を添えればいいか」については,同じ記事の以下の記述が,背景となっています.

算数の指導において,数と,量(単位)を伴う具体的な場面とを,区別して考えることの必要性は,英語文献で読んできました.

From Schema 5.1 children can extract a×b=x. In Example 1, for instance, the child recognizes the situation to be multiplicative, and therefore multiplies 4×15 or 15×4 to find the answer. This binary composition is correct if a and b are viewed as numbers. But, if they are viewed as magnitudes, it is not clear why 4 cakes × 15 cents yields cents and not cakes.
(図5.1から,子どもたちはa×b=xを得る.たとえば例1では,子どもはかけ算の場面であることを認識し,その結果4×15か15×4のいずれかの式で表す.この2項演算は,aとbをともに(純粋な)数と見るなら正しい.しかし,(量の)大きさとして見たとき,4個×15セントによって60セントが得られ60個ではないのがなぜかというと,明らかではない.)

かけ算には本来,順序がない

"it is not clear"(明らかではない)は,もちろん著者の本心ではなく,原文ではこの直後に,「60セントが得られ60個ではないのがなぜか」を,次元解析を背景として,a×b=xという式と,2行2列の表を用いて解説しています.以下で詳しく見てきました.

中国に話を戻しまして,因数×因数=積で学習するというのや,上でリンクしたPDFの同一ページの次の文を読んで,連想するキーワードがあります.

高校では集合の対応関係として関数を扱っている。このための準備か定かではないが,小学校の低学年から集合の考えが常に多くの場面に使われている。

キーワードとは,数学教育の現代化運動(現代化,New Math)です.現代化は世界でも,また日本でも,「失敗」とされています.中国の学習内容は,そういった失敗の状況を踏まえたものであるように見えず,『かけ算には順序があるのか (岩波科学ライブラリー)』で取り上げられているのは,今思うと何だかなあな話です.


中国の教科書の風船のかけ算については,以前に他の書籍と照合していました.

この風船と同種の問いは「1つの花びんに紅白2本ずつの花がさしてある.この花びんが5つあるときの花の総数はいくつであろうか.」(『算数子どもの考え方・教師の導き方 2年』, p.116)に見られます*3.
*3: この出題で,「紅白」を落とすと,解として認められるのが1通りになると予想できます.一般化によって,求め方が減るというのは,興味深いのですが(以下略)

対象を,広げる,狭める

「こんなこと書いてある!」を発見し,Twitterやブログなどで紹介しても,それは,最初に書いた人の後追いであることを,忘れないようにして,真理の探究と問題の解決に努めていくとします.