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ひとつ分×いくつ分,順列,積の法則

まとめを上から読んでいくと,順列を持ち出したツイートはhttps://twitter.com/sekibunnteisuu/status/811704094859489280です.それに対しhttps://twitter.com/cosmic_out/status/811709099901534213https://twitter.com/cosmic_out/status/811715300781494273が明快で,あとは読み飛ばしました.
ただ,「積の法則」という言葉を,持ち出した側が知らなかった(https://togetter.com/li/1062078#c3329342)と言うのには,軽い驚きを覚えました.
「場合の数の積の法則」と「確率の積の法則」が思い浮かびまして,このうち前者から順列のかけ算の式が導けます.高校の数学に入っているかな…と探してみると,学習指導要領に載っていました.
高等学校学習指導要領解説PDFのp.42,高等学校学習指導要領解説数学編PDFのp.46です.「場合の数」の「数え上げの原則」の中に,和の法則と積の法則の名称があり,具体的な式は見当たりません*1.また確率では,「積の法則」に言及していません.
小学校に話を戻しまして,順列の場面は算数で扱うものの,それを式で表すことは,扱わなくてもよいとなっています.小学校学習指導要領解説算数編PDFのp.212には「指導に当たっては,結果として何通りの場合があるかを明らかにすることよりも,整理して考える過程に重点をおき,具体的な事実に即して,図,表などを用いて表すなどの工夫をしながら,落ちや重なりがないように,順序よく調べていこうとする態度を育てるよう配慮する必要がある。」とあり,同ページにある「4人が一列に並ぶ場合」の具体例でも,式は出てきません.
ただし教科書には事例があり,http://ameblo.jp/metameta7/entry-11120967919.htmlの画像の3枚目で確認できます.「力だめし」は発展的な学習内容であることにも,注意したいところです.
「かけ算の順序」関連で,順列を持ち出すのは,2年前に見かけました(https://note.mu/tamami_tata/m/mfb4801db935d).意見を求められたので,「起こり得る場合」とかけ算を書いたのでした.異なる文脈,というのが最も分かりやすいのですが,「いくつ分×ひとつ分」を認める(校外の)指導もあってよいと思っています.
喧噪から離れ,「一つ分の数×いくつ分=ぜんぶの数」しか学んでいない子に,順列を含む,かけ算の「より広い世界」を伝えるには,どうすればいいかというのを,考えてみるのはいいかもしれません.
手持ちの文献などから,方針をざっと示すと:

  • 「かけられる数×かける数」というほかに,「かける数×かけられる数」で表される場面について,事例収集をしてもらう.レシートのほか,付箋や折り紙の数量表記で「何色×何個」の実例を確認する.
  • 算数・数学の式の表現では,「一つ分の数×いくつ分」となることを,教科書や小中の学習指導要領解説を通じて見ておく*2
  • 「因数×因数」の場面を押さえる.1つはアレイ(任意個×任意個の長方形的配列),次にn人から1位と2位を選ぶ場面.数量をさまざまに変え,公式をつくる.中島の文献(http://ci.nii.ac.jp/naid/110003849391)を見ながら1960年の状況に思いを馳せ,「一つ分の数×いくつ分」との共通点・相違点を整理する.
  • 〈乗数と被乗数が区別される文脈〉と〈乗数と被乗数を区別しない文脈〉という分類について,[小原2007],[Greer 1992]などから主要な部分を紹介する(http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20111003/1317572742, http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20131226/1387983600).次にhttp://www.corestandards.org/Math/Content/mathematics-glossary/Table-2/に記載のかけ算の文章題が,いずれの文脈に当てはまるかを検討する.
  • 組立単位や次元解析,それらが算数においてどのように活用されてきたかを学んだのち,「かける数が1あたり」の事例を見ていく(http://d.hatena.ne.jp/takehikoMultiply/20120606/1338929948, http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20150214/1423867877).


https://twitter.com/sekibunnteisuu/status/810432219412041728の教科書画像は,教材研究に良さそうな題材です.
「入れ物の重さ+くだものの重さ=全体の重さ」と,言葉の式になっていれば,それに従うまでです.そしてそのほうが,秤にまず入れ物,そしてくだものを置くという,時系列を意識した増加の場面(そのつど,秤の重さを読み取ればいい)とも合致します.
とはいえ,「くだものの重さ+入れ物の重さ=全体の重さ」が不自然というわけでもありません.中学の一次関数ではy=ax+bという式で表されることを,連想するのです*3

*1:順列・組合せは「(イ)」として,「(ア)数え上げの原則」の直後に配置されています.

*2:[かけ算の順序問題]の「学習指導要領・学習指導要領解説の記述」も.

*3:もちろん,教科書の画像で読み取れる「りんご2こを,竹かごに入れた全体の重さ。」について,りんご1個が700gではなく2個で700gであること,言い換えるとりんごもいちごもみかんも,その個数は,総重量を求めるのに使用しないのですが.