わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

人間ピラミッドにおいて個性を喪失させたのは,学校の先生か,ネット上の批判者か

 2件のタイトルは異なっていますが,同一著者,同一内容です.先にライブドアニュースのほうを知り,「むしろ負荷計算を通じて危険性をアピールしていく中で各演技者の個性の喪失がなされていったように思う」というコメントをつけ,はてブしました.
 負荷計算よりも,ピラミッドを組み上げた状態のイラストに,実は不信感を抱いていました.ここでいう不信感は,高段ピラミッドの不安定さや危険性ではなく,イラスト化・単純化を通じて,各演技者の個性を見せなくさせようとする視覚的効果を持たせてしまっていることに対してです.
 もっとも分かりやすいのは,『教育という病』です.google:教育という病 ピラミッドで検索して「画像」を見ると,立体型で10段のイラストを見ることができます.
 この本には,7段で立体型のピラミッドの写真も載っています(上記の画像の並びからも,見つけられました).第1章「巨大化する組体操」の,章題ページの下部です.体格が異なる子どもたち(小学生と思われます)が組み上げ,最上段の子どもは正直なところ,安定して立っているように見えないのですが,成功したときの写真が,同書で巨大ピラミッド批判の挿絵として配置された,と思えばいいでしょう.
 “規格化”され,“硬く無機質で、ものも言わない、感情も持たない――そのような「ブロック」”にさせたかのような他のイラストとして,数学文化 第25号の表紙を挙げることができます.

数学文化 第25号 特集=計算とアルゴリズム

数学文化 第25号 特集=計算とアルゴリズム

 今年だと,以下の記事の画像を,Twitterを通じてよく見かけました.

 ここまでに対して,自分が何を情報発信してきたかというと,「より精密な負荷計算」と「ピラミッドの形の区別(俵型,立体型,それとクイック)」となります.負荷計算については,立体型の7段に関心を持ち,2016年と今年にいくつか,記事を作りました.

 「7段」といってもいろいろです.28人による俵型(イラストの正面図は,これであるように誤解される見せ方ですが)で,全演技者の体重を同じとしたとき,最大荷重は自重の4.81倍になるのに対し,55人で構成する立体型で,体重の重い者を下段に配置する場合の最大荷重は,1.72倍となります.
 とはいえ個人的な認識として,そこまで減るから安全であるというわけではありません.体重が一律の算出では,組体操を企画し指導する先生方が,現実的でない(からそんな試算は使い物にならない)と判断されるのはよくないと思い,一律でも可変でも,ピラミッドでも他の組み方(荷重をかける・荷重がかかる関係)でも試算できるよう,RubyスクリプトExcelファイルを整備し,「体育科教育」の組体操の特集で寄稿する機会をいただいたのでした*1
 ピラミッドの形の区別や事例については,2016年に事例収集していましたが,先日その内容を見直し,今年の情報も付け加えながら,ツイートして取りまとめました.

 7段立体型ピラミッドの作り方や注意事項については,巨大化が批判される前に刊行された,以下の2冊の本が詳しいです.

組体操指導のすべて―てんこ盛り事典

組体操指導のすべて―てんこ盛り事典

子どもも観客も感動する! 「組体操」絶対成功の指導BOOK

子どもも観客も感動する! 「組体操」絶対成功の指導BOOK

 たとえば『「組体操」絶対成功の指導BOOK』のp.15では,以下のようにして,どの列にどんな子を選べばよいかがまとめられています.顔が見える子・見えない子の区別もなされています.

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 「※丸数字はピラミッドの配置」について,『組体操指導のすべて―てんこ盛り事典』と同じになっています.当ブログからだと,7段(55人)ピラミッドの構成法についてで取り上げています.負荷量計算に基づく組体操・7段ピラミッドの安全性について(再掲)のとおり,55人ピラミッドの解説書と,計算とで,負荷が最大となる演技者が異なるところにも,注意したいところです.
 ともあれ7段は立体型であっても,近年では採用されない傾向にあると見なしていいでしょう(だからこそ今年クローズアップされたとも言えますが).『「組体操」絶対成功の指導BOOK』の後継となる以下の本では言及されておらず,ピラミッドは俵型(かつ批判的な文脈)で4段が最大です.

安全と見栄えを両立する! 新「組体操」絶対成功の指導BOOK

安全と見栄えを両立する! 新「組体操」絶対成功の指導BOOK

 これからも小中高で組体操をするとなったときの,方向性は,「高さ」ではないところの巨大化・一体化になるのではないかと考えます.大阪府教育長による通知*2の「両足が地面に接地していない児童生徒の上に乗る技については(略)原則禁止」の対象外となる技として,クイックピラミッドと,2冊の『絶対成功の指導BOOK』にイラスト付きで解説された「万里の長城」があります.