その1
「パパあのね.前にさ,小学校の教室で…」
「ん?」
「子どもらが劇,見せてくれた日ぃにな,教室でお昼ごはん,食べたやんか」
「ああ,そやったな」
「いっしょに食べてた,うえの子のお友達のお母さんがね…」
「…」
「『すえの子ちゃん,ほんとにすえっこやね.すえっこのオーラが出てた』って(笑)」
「そんなん出てるんかいな(笑)」
そういえばあのとき,うえの子・さきの子・あとの子は,好きなものだけ食べ,おにぎりの2個目などはパパに渡して,友達と出ていったのに対し,すえの子は座って自分のペースで,食べていたのでした.さびしいというわけではなく,こちらがすえの子を見ると,不敵な笑みを浮かべていました.
「ねえママぁ,『すえっこ』ってなに?」
「ここで来たか,すえの子よ.『末っ子』やな.きょうだいで弟も妹もいない子のことで,我が家ではお前や」
「パパもやろ」
「そうきたか…まあパパも,2人兄弟の弟のほうやから,末っ子になるなあ」
その2
「おはよう」
「おはようさん.6時前やが」
「ちょっと(コタツの上の,妻の)パソコンを使おうと思って」
「はいはい…」
ほどなくドアが開き,すえの子が入って来ました.
「おはよう」
「あらすえの子ちゃん,起きてきたのね」
「ちょっとさむい…」
「んん…パパが膝掛けにしてる毛布,使いなよ.ほら」
「パパありがと.じゃあ,ねるね.…」
このやりとりもまた,末っ子ならではのように思います.「さむい」と言えば毛布が,「おなかすいた」と言えば食べ物がもらえるのです.
中間子である,さきの子とあとの子は,「寒い→毛布をかぶる」ではなく「パパが温かそう→毛布をもらう」という論理展開で,声をかけずに毛布を奪っていきます.長女(うえの子)は,寒ければ自分で寝間から毛布を取ってきます.