研究テーマが決まったら,卒業研究の手始めに,論文を読みましょう.
手始めの論文は,自分で探すのではなく,指導教員から教えてもらうことをお勧めします.今年2月に提出された,先輩の卒業論文かもしれませんね.
受け取った論文ですが,先頭から一字一句を拾いながら,読んでいく必要はありません.
飛ばし読みでかまいません.用語や数式など,なじみのないものばかりかもしれません.それらの一つ一つは,この論文の中で意味があるのだと思いながら,読み進めましょう.
ただし読んでいきながら,その論文では,「何を対象として」「何を用いて」「何をしたか」を把握するよう,努めてください.
とはいえ「何を対象として」「何を用いて」「何をしたか」は,題目(タイトル)に書かれていることが多いです.
じゃあタイトルだけ知っておけばいいのかというと,もちろんそうではありません.「した」ことが,うまくいったという内容なら,どんな要因によって,うまくいったのかを,発見してください.
その要因については,論文のどこに書いていると,断言することはできません.ただ,手法のところか,評価実験のあとの考察のところに,書かれている可能性はそれなりにあります.あるいは,なぜうまくいった(と主張する)のかを,自分の言葉で表現してみるのも,いいかもしれません.
さて,読み飛ばしでかまいませんと書きましたが,図表は,時間をかけて見るようにしましょう.図表から得られる情報は多いのです.
本文で,「図1」といった形で図表を参照している箇所にも注意し,配置された図表の意図や見方を理解しましょう.
最後の章も,しっかり読みましょう.何ができたか,そして,何ができていないかが,そこに書かれていることが多いです.
参考文献も,目を通してください.各文献のタイトルに現れるキーワードだけでなく,著者名も,暗記する必要はありませんが心に留めておくといいでしょう.複数の論文で,参考文献に入っている文献は,取り寄せる価値がありそうですし,何度も出現する人物名は,長期にわたってこのテーマに携わっている方なのかもしれません.
ともあれ,一つの論文を読んだだけで,自分がどのように研究を進めていくかが決まるわけではありません*1.先生から指定されたり,自分で見つけたりしながら,いくつも読んで,何が解決済みで,何について解決が望まれているかを認識した上で,自分の研究のゴールを設定しましょう.
後日追記:次のページ(スライド)も,通して読むことをおすすめします.
勝手ながら補足すると,途中から出現する丸と線による図(ツリー)は,引用・被引用の関係を表しています.それぞれの丸が論文で,丸どうしをつなぐ線について,下の丸の論文が,上の丸の論文を引用しています.一つの論文に着目すると,参考文献より,上への線を知ることができます.
スライドにあるような一つのツリーは,いわば概念図ですが,指導教員は「画期的な論文」に対応する丸を含め,全体像を把握しており,学生が読むのに適した論文を紹介できるというわけです.
*1:読んだ論文に書かれている「残された課題」を,自分が手がければよい,というものでは決してありません.「残された課題」と書いた著者が,すでに実施している可能性もあります.